第37Q vs Yoshimi Part 6
ベンチに戻るボクと湊は何故なのか、どうしてなのか、会話がなかった。
ハーフタイム、10分の、たった10分間のインターバルの間にとんでもないものを見せられてしまった。
「み、湊……」
「見なかったことにしましょう……」
「そう……したいのは山々なんだけど……」
「できませんよね……」
「うん……」
「やはり、この気持ちを払拭するには」
「だな」
「「奴らをぶっ倒すしかねぇ!!!」」
インターバル終了まで残り2分---
「よし、集まったな? 幸いというべきか、吉美は第2Qの流れは掴んでいたものの、逆転できたのは最後の最後だけだった。そして運良く第2Qが終わってその流れを一時的にでも断ち切れたのは、私たちにとっては幸運としか言えないだろう。
相手が翠央並みの強豪校ならばクォーター1つ終わった程度で止められる流れじゃないかもしれないが、相手は所詮、吉美なんだ。
この2点差は闘いようによってはすぐに返せる。まずは相手の攻撃の芽を摘み取る。4番、6番、11番による得点が多い。麻倉、4番はスリーをガンガン狙ってくる相手だが、おそろくスリー警戒のみで大丈夫そうだ。4番のドライブ性能はそこまで高くない。お前のディフェンスなら止められるはずだ。スリーを多めに警戒して、ドライブを誘発させれば、お前に部がある」
「わかりました」
「そんで大隈」
「はい」
「11番と比べると大隈、お前はタッパも、横も、全体的にお前の方がデケェ。色々とお前の方がデケェ。なのに、なのにだ! 前半は押し負けてる場面が何度も見受けられた。位置取りは間違ってねぇ。あとはスクリーンアウト勝負だ。オフェンスもディフェンスもリバウンドは全部お前が取るぐらいの気持ちで挑んでいけ」
「はい」
「相葉、お前はとりあえず、落ち着け。深呼吸だ。ポイントガードに必要な広い視野は持ててる。そこは自信を持っていい。ただ、咄嗟の判断の遅さとテンパるところを狙われてる。落ち着けばお前は大丈夫だ」
「はい…」
「剣崎、お前の技量は相手よりも上の位置にあるのは間違いない。積極的にボールを貰って攻めの姿勢を崩すな。相手はディフェンスよりもオフェンスに重きを置いているチームだから、お前の攻撃には対処し切れない。パスカットというミスはあったが、剣崎、麻倉、漆原、この3人が1対1でまだ止められていないのも事実だ。何も恐れることはねぇ、攻めて攻めて相手を打ち倒せ」
「はい!」
「漆原………お前は……まぁキャラ被ってるからなぁ。私からは何も……ありません!!」
「なんでだよ!!! ふざけんじゃねぇよ!!!」
「はい、そういうことろですー!! そういうところがもう被ってますー!! 文字だけ見たらどっちがどっちだかわりませんー!!」
「文字だけ見たらとか何意味わかんねぇこと言ってんだよ!!」
漆原と神坂先生の小競り合いを仕方なく仲裁したかのように、インターバル終了のブザーが鳴らされた。
「漆原」
ちっ! と、舌打ちをしながらコートに向かう漆原の背中に神坂先生が声をかける。
「んだよ、まだなんかあんのかよ?」
「青葉との練習はキツかったか?」
「はあ? 急になんだよ」
「青葉はまだ本気を出してはないが、青葉と練習したお前の力を私は信じる」
「ちっ、いちいち腹立つ女だよアンタは。安心しな、見せてやるよ勝利ってやつをよ」
「キャラ被りの分際でカッコつけんなし」
漆原と神坂先生はあれだろう。
喧嘩するほど仲がいいという言葉のお手本なのだろう。
第3Qはボクたち桜辰の攻撃から再開される。
相葉がボールを入れ、それをボクが受け取って相葉に返した。
ボクは湊をマークしている松田にスクリーンをかけ、湊をフリーにしてみせる。
すかさず湊は相葉からボールをもらい、ヘルプに駆け付ける塩山との1対1かと思わせ、スクリーンから切り返したボクにパスを回した。
ボクがボールを貰った位置は、
「スリーを打たれる!!! ディフェンス!!!」
塩山が叫んだ時には、ボクの手からボールはリリースされていた。
そしてそのボールはゴールリングをくぐって、地面へとバウンドした。
「うおおおお!! 開幕スリー!!!」
ハーフタイムを挟んで一旦は静まっていたはずの会場も再び熱気に包まれた。
「凄い盛り上がりデス」
「だな。何がきっかけとなったのかはわからんが、桜辰、いい顔付きになったな。ここから期待できるかもしれないな」
上木は嬉しそうに口元を緩めた。
吉美のオフェンス、塩山にあえてボールを回させる。誘導させる。
そしてボクとの1対1のシチュエーションを整える。
スリーの警戒として塩山との間隔を詰めていく。
「ち、近い! もしかしてドライブに自信がないのがバレた!?」と、塩山は内心、焦りの色が見える。
「やっぱり私の見立て通りだな。麻倉ぁ! 今が狙い目だぞ!!」
そんは神坂先生の叫び声と共に、塩山が手に持っていたボールをスティールした。
スティールとは、ディフェンスがボールをカットすることの別の言い方のことである。
「麟ちゃん、ナイスカットです!」
「攻めるぞ!」
「はい!! 絶対勝ちましょう!!」
ボクはドライブで榎本を抜き去り、再びスリーを決めた。




