表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロウキュー娘♡?  作者: 千園参
第1章 The story of Otatsu starting from here 《同好会編》
38/86

第36Q vs Yoshimi Part 5

 スパッ---

「逆転!!! 吉美が逆転したぞぉお!!」

 アウトサイドからボールを回して、馬場に渡ったボールを、馬場が正確にゴール下からシュート決めたことで、ついに点差が逆転してしまった。

「はあ、はあ、はあ」

 48-46という点数が刻まれたと同時に、第2Qが終了した。

 バスケットボールというスポーツは最低でも流れが移り変わるタイミングが4度ある。それは各クォーター毎ということだ。サッカーのように前半後半という別れ方でもなく、野球のように守り切らねば攻めが永遠に終わることがない、守りが永遠に終わることがないなんてことはなく、各10分が経てば強制的に試合が止まるシステム。試合が止められれば、2分間のインターバルを挟まれる、ハーフタイムの場合は10分間のインターバルを挟まれるわけで、どれだけ好調に攻めていても、インターバルを跨いでも流れを保っていられるというのはなかなかに難しいことだと言えるだろう。

 それは逆に言えばどれだけ攻め込まれていようとも、10分間を耐え抜けば一旦は相手の流れを強制的に断ち切れるということでもあった。

 その点を踏まえた第2Q、どうにか逃げ切れるかと思われたが、最後の最後に逆転を許してしまった。




「私はあれほど言ったよな? 油断はするなって。なんださっきのクォーターは!? あんな生温い攻め、ガバガバのディフェンスで勝ち上がれるほど地区大会も甘くはねぇんだぞ!!? お前らわかってんのか!!!!???」

 第2Q終了間際の逆転劇に活気立つ会場を一瞬で、一瞬のうちに凍り付かせる神坂先生の怒号が鳴り響いた。

「ここは地区大会だぞ? ここから2回戦、決勝と勝ち進むしかねぇんだぞ? そしたらようやく県大会だ。1回戦から、初戦も初戦から、奇跡の逆転劇なんて演じられてちゃ、お先真っ暗だってことがまだわかんねぇのか!!! ちっ。もういい、ここからハーフタイムだ。残り2分からは試合展開の話をしたい、それまでゆっくり休め」

 神坂先生は少し冷静になったかのようにそう言ってベンチに座り込んだ。

 ボクは風にあたりに体育館の外に出ることにした。

「翠央と戦うためには、最低でもあと3回も勝たなきゃダメなのか………」

 どう考えても今のボクたちの実力では厳しいとしか言えなかった。

「麟ちゃん、ちゃんとジャージくらい着ないと、いくら初夏とは言えど、風邪を引いてしまいますよ?」

 ボクの後を追いかけてきた湊がジャージを手渡してくれた。

「ありがとう」

「なかなか手強いですね吉美」

「そうだな」

「やはり県大会への道のりも甘くはありませんね」

「うん」

「けれど、私、なんだか勝てる気がしてるんです。不思議ですよね、負けているのに」

 うふふと湊は笑って見せた。

「どうして?」

「さあ、どうしてでしょうね? アナタがいてくれるからでしょうか? 麟ちゃんがいて、相葉さんがいて、大熊さんがいて、漆原さんがいて、神坂先生がいて、皆さんがいれば、どうしてなのか、勝てる気がするんです。いえ、きっと勝てる。この試合はきっと勝てるんです。私たちの力で」

「私の力か」


 湊に言葉を返そうとした時のことだった。

 何やらボクたちとは別の話し声が聞こえてくるのがわかった。

「ん? 湊、今なんか言ったか?」

「いいえ、何も言ってませんよ?」

「あれ? じゃあ、どこから」

 声のする方へと歩いてみると、体育館の裏側で先程まで、さっきまで、向かい合っていた水色のユニフォームの背中に4番と書かれた選手が誰かと話している。

「あれって吉美の……相手は誰だ?」

「誰でしょうね?」

 湊と共にその様子を盗み見る。

 塩山は背の高い男と話していることが判明した。

 よく、よくよく聞き耳を立てる。

「試合見てたよ。逆転すごいじゃん」

「えへへ、ありがとう。コウ君が応援に来てくれたおかげだよ」

「そう言ってくれると嬉しいな。流れも掴めてるみたいだし、このまま勝てそうかな?」

「うん、でも、まだ力が足りないの」

 塩山はさっきまでの、先程までの、『よし!! これで2点差!!! ここをしっかり守って追いつくよ!!』という張り切ったキャプテンの声量とは違いが、打って変わって、女らしい甘えた声を出している。

 一体全体何体、どっちが彼女の本当なのだろうかと、言いたくなるほどの変わりようであった。

「え、そうなのか? 俺にできることならなんでもするけど」

「本当?」

「本当だよ! 君の力になりたいんだ!!」

 コウ君と呼ばれる男はどうやら塩山の彼氏のようだった。彼氏が応援に来たという形のようだ。

 そして力が足りないとは、何を求めているのだ塩山よ。

「じゃ、じゃあ、私にキスして?」

「わ、わかったよ」

 一方、それを除くボクと湊はというと、

「え、キスすんの!? マジで!!?」

「き、き、き、キスですか!!?」



「それじゃあ、いくよ」

「うん」

 塩山とコウ君の唇が重なり合う。絡み合う。混ざり合う。蕩合う。

 そしてボクたちは思った。

 何を見せられているんだろうか………と。

 そしてこうも思った。

「あんな惚気野郎には絶対負けねぇ!!!!」

「ぶっ倒してやりましょう麟ちゃん!!!!」

 白熱の後半戦が始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ