第35Q vs Yoshimi Part 4
「5点差か」
真剣と険しいを混ぜ合わせたような、組み合わせたような表情で、得点ボードからボクたちに目を戻した神坂先生はそう呟いた。
「あってないような点差だな。能力値的には同等、もしくは向こうが経験年数の面で少し上回っているくらいの差だ。今のところは十分に渡り合えている。ただ油断はできない。最後までな。
実力が拮抗している以上、ここからの試合展開はおそらく点取り合戦になるはずだ。そうなれば、一回のミスが命取りになる。一つの攻め、一つの守り、一つ一つを確実にこなしていけ」
神坂先生が話を進めるうちに、インターバル終了を告げるブザーが鳴った。
両チームの選手たちがコートに戻る。
第2Qは吉美の攻撃から開始される。
山谷が審判からボールをもらい、センターラインの端からボールを中に入れて試合を再開させた。
塩山がボールをもらった際に、チームに向けて声をかける。
「ここは点差を詰められるチャンス、確実に取って、点差を縮めるよ!!」
「「「「おう!」」」」
ボールは山谷から塩山へ、塩山から松田へ、松田から山谷へと渡り歩く。
山谷がボクとマッチアップしている塩山と目を合わせる。そしてもう1人と、その瞬間に塩山が山谷に向かって走り出した。スタートダッシュを切った。ボクも振り切られまいと、全力で追いかけるが、
「スクリーン!!」
誰が叫んだかはわからなかったが、定かではないが、そんな声が叫ばれた時には、ボクの肩に、胸の前で両腕を交差して待ち構えていた榎本によって、ディフェンスの追走を阻まれてしまった。
その隙に抜け出した塩山がボールをもらうと、そのまま3Pシュートを放った。
そのシュートをしっかりとゴールに沈めると、ガッツポーズを決める。
「よし!! これで2点差!!! ここをしっかり守って追いつくよ!!」
「「「「おう!」」」」
塩山のシュートが決まったことで、一気に吉美に勢いが付いた。火がついた。
勢い付いた吉美に合わせて、会場もさらなる盛り上がりを見せている。
「うおぉおおお!! 2点差だぁあああ!!」
「もうどっちが勝つかわかんねぇえええ!!!」
そんな盛り上がりを他所に、会場の一部では試合とは別のざわつきを見せていた。
今になって思えば、会場が別のざわつきを見せていたことなど、試合をしているボクたちからしてみれば、知る由もない話なのであった。
「おい、あの金髪の姉ちゃん誰だよ?」
「さあ? すんげぇ美人だな」
「服も際どいしな」
一部の観客たちがヒソヒソと話し込んでいる。
観客たちの視線の先には、
「木谷、お前その格好はどうにかならないのか?」
「イエス! これが本場のアメリカンスタイルデース!」
チューブトップに革ジャン、そしてショートパンツという、いかにもな格好に観客のおじさんたちは試合そっちのけで、目を釘付けにされていた。
このような状況に上木は呆れたように、わかりやすく頭を抱えた。
「お前なぁ……」
誰もが木谷に魅了されている状態ではあるものの、このような意見もちらほらとあった。
「よく見ると隣にいる姉ちゃんも可愛くねぇか?」
「ん? 私のことか?」
これにはすかさず上木も反応を見せる。
「確かに、、ってでも、どこかで見たことある姉ちゃんな気がするなぁ」
「そうなのか?」
「えっと誰だっけ」
観客が必死に思い出そうと頭を抱え始めた。
「そうだ、頑張れ! 思い出すんだ!」
上木も思い出そうとする観客を必死に応援し始める。
「もうここまで出てる!」
喉を触りながら、すぐそこまで出掛かっていることを表す。
「そうだ! そこまで出てるならあと一息だ!!」
「うーん!!!」
「そこまで悩むことかぁあ!!?」
すると、閃いたように、何かが降りてきたように、舞い降りたように、叫ぶ。
「思い出したぞ!」
「それは本当か!? でかしたぞ!」
「翠央!! 翠央だ!!! 翠央のゴリラだ!!!!!」
「そこじゃなぁああああい!!!!!!!」
そのくだりを見ていた木谷はクスクスと笑いながら、
「やっぱり部長はゴリラデース!」
「木谷ぃい!!」
上木は木谷の首根っこを掴み、こめかみを両の拳でぐりぐりと押し潰した。
「ノォオオオオ!!!」
木谷の悲鳴だけは、試合中でも聞こえていたような気がした。
それからしばらくして、上木はこのふざけた空気を一蹴するかのような咳払いをわざとらしくかましてから、ボクたちの試合に目を向けた。
「なかなかの接戦デス」
「そのようだな。接戦だが、流れはどうやら吉美の方に傾いているようだ」
上木の言う通りであった。
同点ゴールを決められたことで、完全に流れは吉美に倒れ込んでいた。
「さて、この苦しい局面をどう乗り切る。桜辰」
「アウトオブバウンズ、白ボール」
アウトオブバウンズはボールがコートの外に出た時に審判が叫ぶコーラのことである。
どうにか吉美の猛攻を凌ぎ、攻守を交代させることができたが、できたわけだが、苦しい局面であることに変わりはなかった。
湊がボールを入れ、それを相葉が受け取った。
「木谷、お前はこの試合どう見る?」
「私デスカ? 私はそうデスネー、どっちでもいいデース」
「お前に訊いた私が馬鹿だったよ」




