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ロウキュー娘♡?  作者: 千園参
第1章 The story of Otatsu starting from here 《同好会編》
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第28Q Trouble and friends

 衝撃的な練習試合の大敗から、さらに2週間の時が流れ、インターハイ予選が間も無く開幕しようとしていた。

「そんなわけでだ、既にうち桜辰もインターハイ予選の出場登録を済ませてある」

 体育館、練習開始前に集められたボクたち、と言っても、ボク以外には相も変わらず、相変わらず、湊と相葉しかいないわけなのだが。

 神坂先生はそう言って、予選の対戦表が書かれた用紙をボクたちに手渡した。

「インターハイ決勝トーナメントに出場するには、いくつかの関門を突破する必要がある。まずは地区予選だ。この地区予選で勝ち上がることで、県大会の出場権を得る。あとはわかるな? 県大会で勝てば自ずと決勝トーナメント出場って流れだ。とにかく勝てばいい。わかりやすいだろ?」

 とてもわかりやすい説明ではあるものの、現実離れし過ぎているようにも思える。

 勝てばいい?

 勝てないからこの体たらくなのである。

「そんで初戦の相手は吉美よしみ高校だ。吉美高校の女子バスケはうちとよく似た境遇のようでな、まだ創部して3年なんだそうだ」

「3年………」

「実力的に言えば、向こうの方が経験的に少し上ってところだろうな。再発進としては丁度いい相手だと言えるだろう。まずはここで勝つ! いいな!」

「「「はい」」」

 気合いが入ったところで、練習開始かと思われたその時、この時、神坂先生は言葉を続けた。

「しかしだ。ここで大きな問題がある」

「「「?」」」

「それはだな」

 神坂先生の言葉に誰もが固唾を飲んだかはわからないが、少なくともボクは飲みながら、耳を立てた。

「うちには試合に出場するためのユニフォームがない、ということだ」

「「「……………」」」

「だが、安心しろ。これも既に私がデザインして発注をかけておいた。試合には間に合うそうだ」

「…………」

 さっきから、先程から、既に話を進め過ぎではないだろうか?

 既に地区予選のエントリーがされていて、既にユニフォームのデザインまで決めて発注をかけている。

 この人の頭には、頭の中の辞書には、相談するという文字はないのだろうか。

「よし! 練習を始めろ!」




 ユニフォーム問題や地区予選問題など、我が桜辰女子高等学校バスケットボール同好会は深刻な問題を山積みにしているわけだが、本当の問題は公式戦がどうのよりも、ユニフォームがこうのよりも、どうのこうのよりも、翠央の練習試合以来、姿を見せていない大隈と漆原という問題を解決しないことには、ユニフォームを作ったところで、予選の登録を済ませたところで、試合に出場できないのである。

「さて、どうしたものか………」

 どうやら、これには神坂先生も手を焼き、頭を抱えているようだ。


 ある日の放課後---

『1年2組の大隈さん、大隈陽美さん、職員室まで来てください』

 校内放送で聞き覚えのある、というよりも、明らかに、あからさまに、神坂先生の声で、敬語を使うことに慣れていないのか、どこか不器用な、不慣れな、カタコトな、言葉使いで、言葉運びで、大隈を呼び出した。

「失礼します」

 放送で呼び出されてしまっては、行かざるを得ない大隈は渋々、神坂先生の待ち構える職員室にやってきた。

「よう、調子どうだ?」

「調子? 最悪です」

「だろうな、最悪なツラしてるよ」

「わかってるなら、訊かないでください」

「まぁいいや」

 この時、その時、あの時、大隈は“何がまぁいいんだよ”と心の中で思った。

「なんで練習に来ない」

「先生には関係ないでしょう」

「いや、あるだろう普通に。私はこう見えても、退部届を出していない以上は、お前の顧問だ。なら、それだけでも関係あるんだよ。それで? なんで来ない?」

「先生も見たでしょう? 私はあんな人と一緒にバスケをするのは嫌なんです。それだけです」

「あんな奴………えっと、麻倉か……」

「いや、違う! 漆原ですよ漆原! う・る・し・ば・ら!!」

「ああ、そっちね」

 神坂先生は、どこかとぼけたような口調で話す。

 それが大隈をますます、苛立たせた。

「ていうか、そっちしかいないんですよ!」

「まぁお前ら殴り合ってたしな」

「見てたならいちいち訊かないでください! あんな思い出したくもないこと」

 ふうー、と一息ついてから、神坂先生はさっきまでの、先程までの、とぼけたような表情から一変して、これまでにないほど真剣な眼差しで---

「なあ、お前は漆原のことをどれだけ知ってる?」

「はい? そんなの知るわけないじゃないですか」

「だよな、そりゃ当然だ。なら、その逆もしかりなんだよ。漆原もお前のことを知らなかった。だから、衝突する。麻倉だってそうだ。あの試合は確かに無理が過ぎた厳しいものだったことに違いはない。そこで口には出さずとも、諦めた顔をしたのかもしれないし、そうじゃなくて、ただ単にそんな顔だったのかもしれない。お互いがお互いを知らなさ過ぎたな今回は」

「…………」

「でも、まだ出会って1ヶ月2ヶ月だからな、知らなくて当然だ。だから、お前たちは知り合わなきゃならない。それはチームを強くするための義務だ。これから共に闘う仲間を知ることこそが、チームを強くする秘訣の一つだ。だから、練習に来い。練習に来て、仲間を知ってほしい」

「でも、漆原は練習に来ないじゃないですか」

 大隈が反論する。

「そうだったな。なら、今からちょっと付き合えよ」




 神坂先生は大隈を連れて、鹿鰤大学の体育館へとやってきた。

 そこでは細谷と1on1で一方的に負かされている漆原の姿が、大隈の目に飛び込んできた。

「確かに漆原は練習には来ない。けど、アイツもアイツなり、強くなろうとしてるんだよ」

「………」

「まぁ私とキャラ被ってるから、そのうちはアイツも潰そうと思っているけどな」

 最後にとんでもない発言を言ったような気がする。

「んじゃ、明日の練習は来いよ。待ってるからな」

 神坂先生は大隈を残して、先に体育館を後にしたのだった。

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