第22Q vs SuiO Part 4
「お前らな、これはバスケの試合だぞ? わかってるか? わかってねえだろ? もう一度言うぞ? これはバスケの試合なんだよ。漆原、わかるか? 自分が良ければいいわけねえんだよ。ちゃんとしろ、馬鹿野郎共が」と、神坂先生。
「はーい」
「はい」
「はい…」
「はあ」
「ちっ」
その場の4人が各自、各々、返事を返す中、明らかに返事ではない、返事と呼べない、返事と読んではいけない、舌打ちが飛び出してしまった。
一方、翠央のベンチではーーー
「うーん、まだ開始して1分も経ってないからねえ、手の内が読めないねえ。上木君、どう思う?」
「いえ、奴らに手の内などないかと」
「ほお、どうしてそう思うのかな?」
「見たところ、連携も何もできていない。特に私とマッチアップしているあの女。協調性がなさすぎる。彼女らに手の内も手のひらも何もないと思います」
上木は冷静にボクたちを分析してみせた。全くもってその通りである。大正解である。さすが何十人といる翠央女子バスケ部を束ねる部長というだけのことはある。
ちなみにマッチアップとは、バスケのディフェンス時にマークしている相手のことである。
「うーん、なるほどねぇ。でも、油断は禁物だよ? なんたって相手は神坂君の弟子だからねぇ」
「はい」
ビイー。
タイムアウトの終了を告げるブザーが鳴り、コートに選手たちが戻る。
タイムアウトから試合を再開する場合、基本的にはゴールしてタイムアウトを取ることができないという性質上、サイドラインからボールを入れて試合を再開することが多いであろう。
しかし、だがしかし、今回はゴールが決まってタイムアウトが成立してしまったため、エンドラインからボールを入れて試合再開となった。
湊が相葉にボールを出す。
「相葉さん、落ち着けば大丈夫ですよ」
「うん、頑張るね…」
相葉が再びドリブルでハーフラインまで上がったの見計らい、ボクはディフェンスをかわして、パスを貰う。
「こっち」
「うん…」
そういえば、バスケにおいてパスをもらった際、ボールを持った際の構えとして、トリプルスレットという構えを取るものであり、トリプルスレットとは、パス、シュート、ドリブル、この3つの動き全てにいつでも取り掛かれる姿勢のことを指す。
「さて、なら!」
ボクはドライブでディフェンスを抜き去る。
「え、嘘! 速い!?」
ディフェンスについていた樋口は驚きを隠せない様子であった。
樋口が抜き去ると、一気にバスケットコート、台形と呼ばれるゴール付近に侵入する。
「行かせるか!」
ボクがそのままシュートモーションに入ると、抜かれた穴を埋めるべく、ヘルプと言って別のディフェンスが駆け付けてくる。
上木がボクの前に立ち塞がる。
しかし、だがしかし、ヘルプにはリスクがある。それはボールマンからゴールを守るために、自分のマークからディフェンスを切り換えるということ。つまりその間、この間、あの間は、マークが外れたフリーの選手ができるということ。
ボクはこの目でフリーとなった漆原を捉えた。
「よこせ!」
「わかってるよ!」
上木の脇下を抜くようにして、ワンバウンドさせて、上木にパスを出す。パスをしっかりと受け取った漆原は1、2とステップを踏み、跳び上がる。
「さっきのお返しだ!」
漆原はダンクシュートを決めた。
漆原のダンクシュートが炸裂したことで、体育館内は静まり返った。静寂に包まれた。
それもそのはずで、これもこのはずで、あれもあのはずで、どれもどのはずで、翠央女子バスケ部には良いプレーが出る度に、シュートが決まる度に、ベンチが盛り上げてくれる。
しかし、だがしかし、ボクたちベンチを見て欲しい。見てもらいたい。誰も座っていない。唯一座っているのは顧問の男勝りな神坂先生のみである。
そんなベンチから聞こえてくるのはーーー
「漆原ぁああ!! 調子乗んな!! キャラ被ってんだよ!!!」
「こんな時まで何言ってんだ、アンタは!!!」
静まり返った体育館に神坂先生と漆原の声が通る通るというもの。
この人たちは一体全体何体をしているのだろう? という翠央の選手たちの顔がとても印象に残った。大丈夫、ボクも同じ気持ちです。
「何をしてる! ボーッとしている暇などないはずだ! 早く走れ!!」
静寂を破り、エンドラインからボールを入れたのは、キャプテンである上木だった。
「う、うん!」
「はい!」
「まさか向こうにはダンクを決められる奴がいたとはな。少し油断したが、もう油断はなしだ」
翠央が鋭いパスワークで攻め上がってくる。ボクたちもゴールを守るために自陣へ戻る。
バスケの辛いところはシュートが決まっても、サッカーのように止まってはくれないということ。喜んでいる油断も隙もないということだ。
シュートが決まっても、油断すればすぐに攻め込まれる。ほんの数秒で展開は変わり果ててしまう。それが、これが、あれが、どれが、バスケというスポーツの面白さであり、怖さとも言えるだろう。
相葉のディフェンスを外した佐伯から、ボールは上木へと渡る。
漆原と上木の一騎打ち。
緊張感が走り抜ける中、体育館の扉が再び開いた。
「?」
「お待たせデス!!」
いつも今作を読んでいただきありがとうございます!
千園参です。
次回は私がおそらく作中で、最も好きなキャラクターが登場しますので、お楽しみに!!
あと、感想等もお待ちしております(笑)




