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ロウキュー娘♡?  作者: 千園参
第1章 The story of Otatsu starting from here 《同好会編》
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第2Q Girl from today

「んじゃ、早速着替えろ」

 そういうわけで、こういうわけで、どういうわけで、ああいうわけで、女子制服と鬘を受け取るわけだが、誰も使用していない新品の制服だというのに、なんと言うべきか、なんと形容すべきか、背徳感を感じずにはいられなかった。

 そして服の中からある物がーーー

「これって………」

 スポーツブラジャーと女性用のボクサーショーツだった。

「先生、これは不味いのでは?」

「何が不味いんだ? 変装するんだぞ? そんなのでいちいち動揺してどうする?」

「ええ……」

 可愛らしい、いかにも女の子の下着というデザインが施された下着にボクの中の悪いことをしているという気持ちがより一層強まるのは言うまでもなかった。




 既存の男ものの服を全て脱ぎ、女性ものの下着を身に付け、ワイシャツを一番上のボタンだけ止めず、スカートに足を通した。脚を通した。

 この時、その時、あの時、どの時、ボクの中の男が音を立てて死んでいくのがわかった。

「どうしてこんなことに………」

 リボンを付け、鬘を被り、ブレザーを羽織れば、なんてことでしょう、オカマの完成です。

 着替えを済ませたボクは先生の前に女の子となった姿をお披露目することになったわけだが、神坂先生は無言でグッド! と親指を立てた。

「グッド! じゃねぇよ」

「いや、もう本当、可愛いよ」と、先生はスマートフォンでボクの写真を撮った。

「完全に麟ちゃんだよ。お前は」

「嬉しくねえ………」

「まぁそのうち慣れるさ」

「慣れるか、こんなもん!」

「さて、着替えが済んだなら、これからお前が住む家を紹介するぞっと、その前に」

 先生はライターを取り出すと、ボクの服に火をつけた。

「何やってんだよぉおおお!!!!」

「男ものの服なんて、もう必要ねえだろ。こんなもん燃やした方がいいんだよ」

 ボクの服は灰となった。

 これは何という拷問なのだろう。

 既にボクの精神は崩壊寸前であった。




 服を燃やされた後、先生に連れられること学校から歩いて20分程度の距離に、それはあった。

「ボクが住む家?」

「そうだ、ここは女子寮だ」

「!?」

「うちの学校は家から通うこともできるが、なんせスポーツの名門校だからな、スポーツ推薦で他県からくる生徒も多く在籍していて、そんな生徒たちはここに住むわけだ」

「なるほど……」

 寮と言われれば、なんとなくだけれど、古臭いイメージがある。しかし、だがしかし、この、いま目の前にある、この寮はとても綺麗で新築のアパートのような印象を受けた。女の子が住むための建物であるが故なのかもしれない。

「それでこれが今日からお前の部屋だ」

 寮の一室を紹介された。

 部屋の内部は全体的にピンク色になっていて、家具から何から何まで、何から始まり何に至るまで、全てがピンクだった。

「じょ、女子寮は全部こんな部屋なんですか??」

「はあ? そんなわけないだろ」

「では、何故この部屋だけこんな……」

「私がお前のためにそうしておいてやったのさ」

 何故この人は上から目線なのだろうか。

「いや、頼んでないんですけど……」

「お前なぁ、男だってことがバレたら、お前は牢屋行きなんだぞ? 籠にゴールする前に、檻にゴールしちまうぞ? それは不味いだろ? お前の人生が」

「ボクの人生を壊滅に追い込んだのは貴女なのでは?」

「落ち着け」

「落ち着いてますよ」

「落ち着け」

「だから、落ち着いてますよ」

「とにかく何時、何処で、何の拍子に男だとバレるかわからない以上、念には念をだ。姿と部屋はこれで騙せそうだしな、あとはお前の生活態度次第だ。わかるな?」

「わかるけど、わかりたくないですよ……」

 次々にボクの男がかき消されていく。



「この部屋にはお前が女として3年間生きていくのに必要な道具が揃えてある。あとはこれだな」

 先生はボクにこれまた可愛らしいカバーを付けたスマートフォンを手渡した。

「スマートフォンですか?」

「そうだ、スマートフォンには私の電話番号のみが登録されてある。何かあったらこれで私に連絡しろ。まぁ私は出ないがな」

「いや、出ろよ」

「んじゃ、あとは頑張ってくれたまえ」

 そう言い残し、嵐のように神坂先生は去っていった。ボクの部屋には嵐が去った後の静けさだけが残されていた。いや、これは嵐の前の静けさなのかもしれないのだが。




 とりあえず、自分の部屋の物を全て確認することにした。それこそこれから何が起きるかわからない以上、部屋に他人が入ることもあるだろう。そんな時、こんな時、あんな時、どんな時、自分の部屋の物を把握できていないというのは、怪しいことこの上ないだろう。

 だから、なので、ボクはひとまず、自分の部屋の把握を行うことにした。

 ピンクの学習机に、ピンクのベッド、ピンクの収納棚、ピンクの箪笥、ピンクピンクピンクピンク。変えの下着から私服まで、本当になんでも揃っていた。

「マジでボクは女として暮らすしかないのか……」

 そんな中、机の上に一枚のA4紙が置いてあることに気が付いた。

 紙には寮で暮らすにあたっての必要事項が書き記されていた。

「はあ……」

 受け入れ難い、到底受け入れ難い現実にボクは追い込まれている。

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