第EXQ Christmas
皆様、日頃より今作を読んでいただきありがとうございます! そして何よりもメリークリスマス! ですよね?
というわけで、今回は本編から少し外れてクリスマス回です。
ただ今回は特別編かと思いきや、今後の物語の伏線が隠れている回だったりします。
また時系列は本編の12月に繋がることになりますので、既に色々あった設定です。
ピイーンポオーン。
インターホンの音だ。呼び出しベルの音だ。
今日も目覚まし時計とのデッドヒートかと思われた12月24日だったが、どうやらこの日は試合が行われることはなく、レースが開催されることはなく、没収試合となってしまったようであった。
「いや! そんなこと言ってる場合じゃないだろ!!」
ボクは慌てて飛び起き、急いで鬘を装着する。
「これでよし!」
ピイーンポオーン
再びインターホンが鳴らされる。
「はいはーい、今出ます」
ドアを開けると、そこには湊が明らかに、あからさまに、わかりやすく、とてもわかりやすく、それはわかりやすく、それはもうわかりやすく、ウキウキとした、キウキウとした、顔で立っていた。
「おはようございます! 麟ちゃん!」
「お、おはよう。どうしたの? こんな朝早くに」
現在時刻は午前7時。いつもの、通常の、平常の、正常の、常常の、起床時間を考えれば、そこまで早いわけでもない。驚くほどには早くない。
ただ今日はもう冬休みであり、まして今日は冬休みの中でも特別な1日、クリスマスイブである。そうともなれば、こうともなれば、寮に住んでいる生徒のほとんども実家に帰省していていない。
中には彼氏と過ごすなんていう女子生徒だっているだろう。
さらに言うと、今日は神坂先生の都合上、練習も休みになっていた。故にボクは練習もなければ何もないので、何もない1日を過ごすのだろう、くらいに思っていたのだが。
「今日はせっかくのクリスマスイブですよ? 大好きな人と過ごしたいじゃないですか!」
「へ、へぇー。そういえば、湊は実家に帰らなかったのか? それこそ湊の実家なんて凄い大きいんだろうし、家族と過ごすとかいう決まりとかないのか?」
「あー、そのことですか? えっと今回は帰りませんよ?」
湊はさっきまでの、先程までの、明るい顔から一変して、影を落としたような、暗い表情を浮かべた。
どうしてなのか、何故なのか、ボクはその顔見たくないと、湊にそんな顔をしてほしくないと、心の底から、心の奥底から、そう思った。
「そうなのか、じゃあ、せっかく湊もいるなら、一緒に過ごそうか?」
「はい!!!」
彼女のお顔はたちまち、明るさを取り戻していった。
「それで? 過ごし方は決まっているの?」
「えーっと、そうですね。麟ちゃんはどのように過ごしたいですか?」
「どのように?」
まさかクリスマスをこんな形で、そんな形で、あんな形で、どんな形で、女の子と過ごすことになるとは思いもしなかった。図らずもクリスマスデートをしようとしているなんてーーー
「ありがとう、サンタさん(神坂先生)」
「? どうかされましたか?」
「あー! いや、なんでもない! それじゃあ、せっかくだし、街に繰り出してみようか!」
「はい!」
「ちょっと待っててね、着替えてくるから」
急いでパジャマを脱ぎ、外行きの服に着替える。12月は寒そうなので、つい先日、神坂先生から支給された新しいコートを試してみることにしよう。
「ごめん、お待たせ」
「はい、それでは参りましょう」
寮から徒歩で20分程度歩くと、街に出ることができる。寮と学校の往復であまり気が付かなかったが、街はツリーやら、なんやらで、装飾されていて、クリスマス一色になっていた。
「まあ! 素敵ですね!」
「だね」
街では幸せそうなカップルが、イチャイチャとラブラブとしていて、街はどこかピンク色に包まれているようにも思える。
こんな日にプレゼントを届けなくてはならないのだから、サンタも大変である。お気持ちお察しいたします。
それからショッピングモールで服を見たり、映画を観たりと、楽しんでいるうちに、外は冬ということもあってか、あってなのか、あっという間に日が沈んでしまっていた。
「今日も、もうすぐ終わってしまいますね……」
湊は今日が終わってしまうことをとても残念そうにそう言った。
「そうだね」
夜へと移り変わった帰り道、煌びやかなイルミネーションが目に入った。
「そうだ、湊、あれを観に行かない?」
「はい!」
本当はボクたちもそこらにいるイチャラブなカップルたちと同じように、男女のカップリングなはずなのだが、ボクは見ての通り、女の子となってしまっているということが残念なところである。
「綺麗です!」
「うん、観に来てよかったね」
「あの………」
「ん? どうした?」
「あの、その、私……」
「?」
「今日がこれで終わりなんて嫌です!」
湊は目を、眼を、瞳を、まなこを潤ませた。
彼女の必死な想いに応えなくてはーーー
「そうだね、ワタシももう少し湊と一緒にいたいな」
「嬉しいです。麟ちゃんも同じ気持ちでいてくれて、嬉しいです」
「ワタシも湊がそう思っててくれたなんて嬉しいよ。なら、寮に帰ってパーティでもしようか」
「はい!」
こうして、そうして、ああして、どうして、ボクたちは某有名チキン店でチキンを購入し、ケーキ屋でケーキを購入し、コンビニでジュースを買い、ボクの部屋に帰ってきた。
「お邪魔しますね」
「うん、それじゃあ、乾杯しようか」
「はい!」
「「メリークリスマース!!」」
まさか女の子とお泊まり会をすることになるなんて、クリスマスとはやはりとんでもない魔力があるのかもしれない。




