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ロウキュー娘♡?  作者: 千園参
第1章 The story of Otatsu starting from here 《同好会編》
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第16Q It makes a noise and collapses

「おお、5人揃ったわけか。お前さては女垂らしなのか?」

 ボクは例のごとく、例に倣って、体育館裏に呼び出されていた。

「その言い方やめてください」

「なんでだよ? 女を垂らせるのも一つの才能だぞ? もっと喜んだ方がいい」

「女垂らしと呼ばれて喜ぶ人がこの世のどこにいるんですか」

「あのなあ、いいか? この世の中はお前が思っているよりも理不尽なんだぞ?」

「いや、ボクの想像通りの理不尽さですよ」

 なんならボクのこの女装姿こそが理不尽による産物だと、理不尽が理不尽を呼び、理不尽が理不尽して、理不尽が理不尽を経て、理不尽は理不尽となって、理不尽を理不尽とした理不尽の塊、理不尽な化身だと言えるだろう。この上ない理不尽を受けているボクに想像を超える理不尽などあろうはずがなかった。

「落ち着け」

「落ち着いてますよ」

「落ち着け」

「落ち着いてますよ」

「お前なあ、この世界にはなあ、女を垂らしたくても垂らすことができず、垂らすことができないまま一生を終える男はごまんといるんだ。既に4人を垂らしているお前は喜ぶべき才能を持っているのさ。やなり私の目に狂いはなかったな!」

 いかにもなことを言っているように思えるが、要するに、ボクが女垂らしであることを長々と説明されただけのことである。そしてボクは女垂らしという不名誉を気に入っているわけも、誇りに思っているわけも、ましてや喜んでいるわけもなかった。


「さて、5人が揃ったというわけで、どうにか私の給料は減給を免れたわけだ。しかし、まだ油断できない!」

「?」

「教頭は隙あらば私の給料を減給しようとするのだ! 次はどんな手で私の給料を減らしに来るかわからない! だから、油断はできないぞ!!」

「なんでいつもそんなに追い込まれているんですか」

 ボクはその言葉と共に将来、将来的に、こんな大人にはならないと強く胸に誓ったのだった。





 放課後ーーー

「よし、5人揃ったはずなのに、なんで初の顔合わせが5人なんだ?」と、神坂先生は首を傾げる。

 体育館にはボク、湊、相葉、大隈は揃っていたが、そこに漆原の姿はなかった。

「んだよ、麻倉先生よお! 5人目はどうしたんだよ、麻倉先生よお!!」

 今朝はあんなにも喜んでいた神坂先生が急に、急激に、急速に、ボクに対する態度を変え、まるでチンピラのような口調を使い始めた。こんなにもわかりやすい手のひら返しがあるのかと。

「いや、これはワタシにも何がなんだか……」

「先生、麻倉さんを責めては可哀想ですよ…」

 相葉が消え入りそうな声で、いや、チンピラの声がデカすぎて今回は本当に消えている。消えそうとかではなく、消えている。

「ちっ! まぁいい。来月の対戦相手を今、発表するぞ。来月の練習試合で戦うのは翠央すいおう高校の女子バスケ部だ」

「翠央? どこ? 知ってる?」

 ボクは小声で湊に尋ねてみる。

「翠央を知らないのですか?」

「あー、うん、高校バスケはあんまり詳しくなくて……」

 そもそも、もそもそ、男だから女子バスケ事情を全く知りませんとは言えない。

「この辺りの地区ではとても力のある学校です。それこそ地区予選の突破は常々、県大会でも常に結果を残していますね。そして何より凄いところは全国の中学校から強い選手を集めてきているわけではなくて、皆さん地元の方々が練習で力をつけているという話だそうです」

「マジか。え、創部したてだよね? ワタシたちいきなりそんな強豪と戦うの?」

「そのようですね」

「マジかよ。正気かよ」

「んじゃあ、そういうわけだから、今日から試合に向けて猛特訓だ!」




 神坂先生の言葉通り、練習はいつにも増してハードなものとなった。

「死ぬ………いや、死んだか……死んだのか………私、死んだ………??」

 そんな大隈の声が聞こえる。

 気が付いた時にはボクは体育館の天井を眺めていた。見つめていた。見据えていた。

「湊、生きてるか?」

「安心してください、死んでいますよ」

「安心できるかっ」

「うふふ、冗談ですよ」

 湊は倒れたボクを見下ろすようにして、悪戯に笑って見せた。可愛い。

「麟ちゃんは生きていますか?」

「ワタシは死んでるな」

 彼女たちとの日々で死んでいるのはワタシではなくて、ボクだ。彼女たちと一緒に過ごす度に、一緒に練習する度に、パスし合う度に、シュートを決める度に、下着姿を見る度に、ドキドキする度に、ワクワクする度に、音を立ててボクが死んでいくのがわかる。わかった。わかってきた。

 きっとここからはボクじゃなくて、ワタシなんだな。



 そう思った時、ボクは立ち上がった。

「げっ、もうこんな時間か、そろそろ片付けしよう」

「そうですね。あの麟ちゃん」

「ん? どうした?」

「もしよろしければこの後、、、」

 湊はモジモジと、ジモジモと、言葉を詰まらせている。

「ああ、そうだな。アイスでも買って行こうか」

「はい!」

 練習後にコンビニで買い食いをする。ボクと湊の習慣になりつつある。

 ソーダ味のアイスバーを2つ購入する。

「冷たくて美味しいですね!」

「だね。練習の疲れが癒えるな」

「はい! 私、試合が楽しみです」

「ワタシもだよ。でも、試合までにいっぱい練習して、試合では恥ずかしくないようにしないとな」

「うふふ、麟ちゃんなら大丈夫ですよ」

「そうかな?」

「もっと自分に自信を持ってください」

 アイスバーを片手に夜は更けていった。

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