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ロウキュー娘♡?  作者: 千園参
第1章 The story of Otatsu starting from here 《同好会編》
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第1Q Transform

 全国中学校バスケットボール大会、略して、縮めて全中。

 その男子決勝トーナメント1回戦第3試合。

 ゲームは終盤まで接戦。取られたら取り返すクロスゲーム。もうすぐ日本一強い中学校が決定するトーナメント。当然と言えば当然と言えるだろう。

 私、神坂一絵こうさかかずえはとある高校でバスケ部の顧問をやっているわけなのだが、私がこうして、そうして、ああして、どうして、中学バスケの大会を観戦しにやって来ているかということに関しては、もちろん、もちのろん、スカウトだ。

 というか、むしろスカウトしかないだろう。



 私が今、たった今、観戦している試合はどちらも中学バスケでは名門中の名門校、永帝えいてい中学と浜馬はまば中学の試合。

 永帝中のリードでゲームは進むが、浜馬中も負けじと食らいついている。そんな中、こんな中、あんな中、どんな中、永帝中の監督はベンチから1人の選手を呼び出すと、何やら指示をしているように見える。

 体格は小振りでガタイもお世辞でも良いとは言えない。そんな選手を今なぜ、勝つか負けるかの瀬戸際で、投入しようとしているのか、私には理解できなかった。

 そして背番号12番のユニフォームを身につけた、華奢で髪はボサボサだが、目鼻立ちはそれなりに整っている、中学3年生とは思えない選手が試合に投入されることになった。

 しかし、だがしかし、その選手が入ったことで試合の流れは大きく変わることになった。

 12番はドライブ《ドリブルと同義》やフェイク、フェイントといった駆け引きなどなく、3(スリー)Pポイントラインでボールを貰うと、なんとそのまま両手打ち(ボースハンド)でシュートを放ったのだ。

 放たれたシュートは綺麗な軌道を描き、リングを掠めることもなく、ゴールへと吸い込まれていった。


 永帝の得点に3点が加算される。

 彼のシュートに勢い付いた永帝選手はゲームの主導権を握ることになったが、12番はというと、3Pシュートを放つことは監督の指示ではなかったようで、出場して2分足らずでベンチに下げられてしまった。

 しかし、だがしかし、私は思った。

「いい選手を見つけた」と。






 それから何ヶ月かの月日が経過し、季節は夏から翌年の春へと移り変わっていた。

 ボクの名前は麻倉麟あさくらりん。この春から桜辰おうたつ高等学校にスポーツ推薦で入学することになったわけなのだが、ボク自身、バスケの試合に出場した回数なんて1回、2回、あるかないかだというのに、ボクのどこを見て、スカウトされたのか、謎であった。謎でしかなかった。

「おっ、お前が麻倉か?」

「はい、麻倉麟です。よろしくお願いします」

「私はバスケ部の顧問をやっている神坂だ。よろしくな」

 神坂先生はとても綺麗で、可憐で、クールなクールビューティーな見た目をした先生であったが、どことなく男勝りな言葉を使っていた。

「さてさて、挨拶はこのくらいにして、ほれ」

 ボクに制服と茶色毛のかつらが差し出された。何故に鬘?

「あの、、これは?」

「これはって、お前、ここは女子校だぞ? 変装しないとやっていけないだろ?」

「はい?」

「いや、だから、ここは女子校だ」

「ええ!!?」

「うるせぇな。騒ぐな騒ぐな」

「いや、だって、そうでしょ!? というか、何がどうなってボクをスカウトする運びになったんですか!? 学校も気付きますよね!!? スカウトする時点で気付きますよね、普通!!!」

「ギャーギャーギャーギャー、うるせぇぞ。まずは落ち着け」

 神坂先生はとても落ち着いているようだが、ボクはとても落ち着いていられるようなそんな状況ではなかった。何故か? 入る高校を間違えたからである。

「いいか? お前は入る高校を間違えたわけではない」

「いや、間違えてますよね?」

「落ち着け」

「落ち着いてます」

「落ち着け」

「落ち着いてます」

「いいか? よく聞け。お前が入る高校を間違えたわけでもなければ、学校が手違いや間違いで男に声をかけたわけでもない」

「それじゃあ、学校はボクが男だと知っていてスカウトしたということですか?」

「いいや」

 いいや!!?

 話が全くと言っていいほど見えてこない。

「では、どういう?」

「お前は麻倉麟という女子生徒としてスカウトされているわけだ」

「?」

「学校はお前のことを女だと思っているというわけだ」

「どうしてそんなことに………」

「それは無論、勿論、私が学校にそう報告したからだし、私が内密にスカウトしたからに他ならない」

 この人は一体全体何体を言っているのだろうか。



「どうしてボクなんですか?」

「ん? それは私の目に止まったからだ。誰でもよかったんだが、お前に決めた。それだけだ」

 まるで犯罪者のような言い分である。

「それでボクはどうすればいいんですか?」

「そうだな、お前はこれからこの女子制服と鬘で変装し、バスケ部を再建するのに貢献してもらう」

「は、はあ……」

「なんだ? 嬉しくねえのか? 花園に飛び込めるんだぞ?」

「いや、バレたらと思った時のリスクを考えたら喜べないんですよ………」

「はあ? 何言ってんだ? バレなきゃいいんだよバレなきゃ」

 完全なる犯罪者の台詞であった。これから悪いことをしようとしている人間の台詞であった。

「さあ、今日から君は麻倉麟くんではなく、麻倉麟ちゃんだ! おめでとう!!」

 神坂先生はクラッカーを発射した。

 パンッ! なんてやっている場合ではないのではないだろうか?

 先の、先々の、不安でボクは既に胃が痛くなっている。

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