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朧気な月  作者: 浦ぱんだ
2/2

二回目 受信フォルダ



To:海月

『今何してる』


To:海月

『すぐにメール返して』


To:海月

『好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き』



━━━━━━━━━━━━━━━


海月は空良からの暴力が止んでから、携帯に空良からのメールが頻繁に届くようになった。


件名は無し。


添付ファイルも無し。


ただ、短い本文がつらつらと書いてある。


それが10分置きに来る。


しかし、人はすぐに慣れてしまうもので、海月もすぐに慣れてしまった。


夜はメールが来ない。


当然の事だが。


受信フォルダはすぐに埋まって、古いものは消えていった。


海月には友人と呼べるものは居なかったから、空良からのメールは寧ろ嬉しかった。


ただ、空良は海月の今の状況を聞いても、自分の状況は絶対に海月に教えなかった。


 それは二人の間に交わされた暗黙のルール。


破ってしまえば、その先に待っているものはBADENDだ。


こうして、もとから闇に居た二人は、尚更深い闇に堕ちていった。


━━━━━━━━━━━━━━━


くぁ、と空良が欠伸をする。


その横には茶髪の女が居た。


「なぁに、眠いのー?」

「…………」

「お姉さんの膝貸してあげようかー?」

「…………」

「シカトは悲しいよー?」


空良はその女からの言葉をスルーして、携帯を取り出した。


「なぁに、彼女居んのー?」

「…………」

「居なかったらお姉さんがなったげるけど、どう?」

「……あんたみたいな奴、趣味じゃないから」

「うわっ、ツンデレだ」


空良は隣で騒ぎ始めた女に向かって心の中で舌打ちした。


そして、海月に向かってメールを打ち始める。


「名前読めないんだけどさー、なんて読むの、これ

うみづき?」

「あんたには関係無いだろ」


しばらくの間を置いて、女が空良に声をかけた。


「お姉さんの好みのタイプだよ、君」

「俺はあんたみたいな奴、一番嫌いだから」

「お姉さんといいことしない?」

「うざいから早く消えろ」

空良がすっぱりと切り捨てると、女は携帯を取り出しだ。


ぱしゃ


「……何してんだ」

「写メ

君可愛いからさー

友達にもこんな子がいたぞーって自慢するために撮りましたー」

「撮ったら満足だろ

早く失せろ」


空良が半ば怒り気味に言ってもその女は空良から離れなかった。


「きゃはははははっ!!

友達も可愛いって言ってるよー?

ホントにお姉さんといいことしなくていいのー?」


甲高い笑い声を右耳にモロに受けながら、空良は小さく呟いた。


「うるせぇ

あと香水臭い」


此処まで来ると、死亡フラグが立ってしまう。


もうすでに立ってしまったのかも知れないが。


海月へのメールを送った空良は、未だ笑い続けている女の腕を引っ張った。


「そんなことよりいいことしてやるよ」

「え、何、いきなりやる気!?

君やるねー。


きゃはははははっ!!」


この女の命はこの日を境にぷっつりと途絶えた。


━━━━━━━━━━━━━━━

To:海月

『服に赤黒いシミがあっても気にすんなよ』


海月は、空良からのこのメールの意味が分からず首を傾げていたが、空良が気にするなと言っているのだから、何も言わないようにしよう、と小さく呟いた。


「(赤黒いシミがつくような場所ってなんだろう……?)」


海月は首をもう一度傾げ、空良に返信した。


To:空良

『あんまり遅くならないでね』


海月は、何も知らない。


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