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私だけ色々おかしくないですか?  作者: 狐囃子 星
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土の中の光

 ザラザラした砂利のような砂、土の上で光るのはガラスの小粒と黒い塊。

 目を覚ました男の目の前には光の粒をちりばめた漆黒の闇。

 ボウっとして、唐突に我が身に起きたことを思い出した。

 「あのクソガキ……!」

 体を起こすと、怒りのままに地面を叩く。

 「どんな手を使いやがった? 不意打ちとは最低最悪のクズ野郎め!」

 もう一度さらに強く、顔を真っ赤にして地面を叩いた。

 拳は容易く地面を穿ち、衝撃で小麦の粉のように砂が土が黙々と空に舞う。

 虚空の先へ声を響かせながら思う限りの悪態をついた。

 「はあ……ここはどこだ?」

 一通り吐き出してから周囲を見回す。

 森のように木があるわけではない、荒場のように巨石が転がっているわけではない、何か建物やその残骸があるわけでもない。ただポッカリと空いたような空間。

 「こんな場所、あったか?」

 斜面に立ち上がりながら頭を掻く。

 この山に関しては事前にそれなりの調査をしてからきた。

 噂の蛇神は強大な相手だと散々耳にして、戦う場所や方法を考えるためにだ。

 だが――。

 「……やっぱり地図にも載ってないな。」

 じゃあ何処なのだ?

 幸運にも失われていなかった紙切れはだいぶ古いものだが、それは再調査の必要が無いから書き直していなかっただけの話。

 ここまで変化があれば、誰かしら新しい地図の作成に来ているはずなのだが。

 「ま、考えてもしかたねぇか。」

 男は悩むことを止める。

 今は分からない事に構っている暇など無いのだ。

 「俺の聖剣どの辺だろうな。遠くに行ってないと良いんだが。」

 指を鳴らしてグルリと首を回す。

 ――反応なし。

 溜息。

 指を鳴らした音が僅かでも届けば剣は強い光を放つ特別な魔法が籠められている。

 つまり光が無いという事は、この広い場所の何処にも剣は無いという事に他ならなかった。

 「どうしたもんか。帰るのも手だが、おめおめ収穫も無しに戻るのは俺様の名声を傷つける。だが、ネタも分かってないのにクソガキに見つかると厄介だな。」

 腕を組み、男は唸った。

 唸り、ふと視界の端に何かを見て右の方を向いた。

 「なんだ、あれ?」

 ボンヤリと光が見える。

 対して強くない事から聖剣でない事は確実だ。

 先ほど首を回した時には無かったかのように思ったが見落としたのだろうか。

 光はその怪しさと対照的に不思議と嫌悪感が湧かず、つまりそれは獲物をおびき寄せる魔物の類多放っているわけでない事の証明となる。こういう時の直観を外したことは無いから確実だ。

 「ま、どうせ出来る事なんか限られているんだ。偶には冒険者らしく神秘を取りあかすってのも乙なもんじゃないか?」

 それに卑劣な敗北の後に救いの手というのは吟遊詩人の十八番。

 もしかすると、ここは未発見の遺跡の後か何かで凄い宝が眠っているのかもしれない。

 それこそ聖剣移譲の聖剣、世界を両断する神の武具が。

 クククと男は笑みを浮かべ意気揚々と光へ向かった。

 まるで月明かりを目指す羽虫のように。


 ――地面その物が光っていた。

 より正確に言うならば、それは蛍火のような明るさの紋様だった。

 「何だこりゃ? 始めて見る場所だってのに、こんなのまであるのか。」

 男は紋様の縁に立ち屈んで触れてみる。

 特に何も起きなかった。

 軽く地面を掻いてみても手に付くのは土ばかりで何処にも光は無い。

 もしや、そう思って見上げてみたがただの星空だ。

 「空でもないって事は、つまりは土の中って事だな?」

 確信して手を突き立てた。

 鍛え抜かれた男にとって土と砂と細かい石のあるだけの地面など造作もない。

 まるで水を掻き出すが如き動きでドンドンと掘り進み近くには山が出来上がった。

 「うん?」

 スッカリ体が見えなくなるほど深く掘り進み、カツンと指が硬い物にぶつかる。

 「こいつは……何かの入り口か?」

 夜の明かりは心許なく、さらに土のせいで良く分からないが手探りで取っ手のようなものがあるのは分かった。軽く引っ張って見るが流石にビクともしない。

 これがもし扉だとすれば、周囲の分厚く積もった土をどけるのは容易ではないだろう。

 「ふん、それがどうした。」

 俺様は冒険者だ。

 お宝は先に手に入れたもの勝ちなのが常識。後でまた取りに来るなんて考えは横取りしてくださいと言っているようなものなのだ。

 それにヒヨッコどもならともかく、自分ぐらいになればこの程度の一仕事は造作もない。

 「よっし、やってやろうじゃないか。」

 そう思って男はとりあえず飛び上がって穴の縁を掴み、力を込めて体を引っ張り上げる。

 いや、上げようとした。崩れたのである。

 情けない顔で尻を硬い扉へと強かに打ち付けた。

 「いてて、って、なんだなんだなんだ?!」

 尻をさすって立ち上がりかけた瞬間、小嵐の如く押し寄せる光に目がくらむ。

 思わず手で光の発生源である下に壁を作って薄目を開けるが、広がるのは真っ白ばかりで一向に何がどうなっているのか分かったものではない。

 「まさか、爆発しないよな?」

 聞いたことがある。

 遺跡の中で安全だと思った場所での休憩中、突如光に包まれて大爆発を起こしたという話を。

 「へ、へへへ。まさか、こんな場所で……いいや、ないない。」

 声が震える。

 そうこうしているうちにも光はさらに強くなった。

 最早手をかざしても強烈な光線は透けて目に刺さるほど。

 流石にマズい、そう思って思い切りジャンプしようと足を曲げ――。

 「へ?」

 踏み切った足は空を切る。まるで床が抜けたように。

 放心、そして手足をばたつかせて掴めるものを下がす。

 だが時すでに遅し。

 土の壁は指先をかすめて遠ざかり、ついに男の姿は光に飲み込まれ見えなくなった。

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