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青竜の騎士 ~青き聖剣の物語~  作者: 柊 卯月
第2章 銀珠海洋編
87/89

012:村

おけましておめでとうございます。


遅くなりました。

年末ギリギリで書き上がりました。

チェックしている間に年が明けました。

とりあえず、続きです。


 アーティスとディアナが先頭で、そのあと海士ミハエル、魔法士トマス、パウル、神官長スフィナ、しんがりを海士ルフリヒト、ゲオルグ海士長が勤める。

 砂浜を離れ、森の中に入っていくと、急に蒸し暑さを感じた。浜辺は適度に風があり、それほど感じなかった。冬が近いはずなのに、いくら南の島といえど、異常な気候と思える。それが魔物のせいかどうかは分からないが、行軍する身としてはうれしくない要素だった。

 木々の間を分け入ると、急に開けた場所に出た。そこは広場のようになっており、その奥に十数軒の家屋が並んでいる。この島唯一の村だ。だが、人の気配はしなかった。扉が半開きになっていたり、窓が空いている家もあり、家と家の屋根を結ぶ紐に洗濯物らしきものが干されていて、揺らめいていた。水瓶の蓋が開いていたり、家の前に椅子や机が並んでいるのも見える。今も人がいたような状況だが、人影は全くない。いきなり人々が消えてしまったような光景だった。ついさっきまで人がいた気配がある。だが、実際には人らしき影はない。


「誰かいるか!」

 ゲオルグが大声で誰何した。しばらく耳を澄ましたが、何も返事はない。そのときに気がついたが、人どころか他の動物も気配もしなかった。生き物がいないのだ。明らかに怪しく、明らかに悲しい結論が誰の脳裏にも浮かんだ。

「誰もいないのか?」


 不意にガタンと音がした。全員の目がその方向を向く。手前から二番目の家の扉が開いた。少しゆらゆらと扉が揺れている。だが、それ以外に動きはなく、やはり人影はない。魔物の仕業か。突然人が消えたような雰囲気。背筋に薄ら寒いものを感じる。

 ゲオルグが目をつむり、首を左右に振った。今回の目的の一つに村人の救出があったが、それは難しそうだ。よく見れば、家の入り口の辺りに血痕のような跡が見える。村人の生存は絶望的だった。

 ガタン。

 再び、音がした。違う家の扉が開いた。だが、今度はその扉の影から、小さな影が飛び出した。遠目なので、よく分からないが(ガオスル)程度の大きさで、色は茶色。それ(・・)が彼らに向かって突進してきた。猛烈な勢いで広場を走って抜けてくる。

「ギィャア!」

 それはアーティスの目の目の前で飛び上がり、鋭い白い歯を見せて飛びかかってきた。

「な!」

 アーティスは咄嗟に背中の聖剣を引き抜き、その勢いで飛び込んできた茶色の小動物に青刃を叩きつけた。


「ギャアー」

 それ(・・)は聖剣によって真っ二つになり、赤い血を振りまいて大地に落ちた。二つの半身が大地に落ちると、それはシュウ~と低い音を立てて靄となり消え去った。魔物としては小物だった。魔力もそれほどないだろう。

 気配を感じて村の方を見れば、小さい影が2つ3つと現れていた。鋭い目でこちらを見つめ、突然こちらに向かって走り出した。その後をさらにいくつか影が扉の内から現れる。さらにその奥の家からも小さい影が飛び出す。影のあとを影が追うように続いて飛び出してくる。


「おい! あれ!」

 魔法士のトマスが指差した先には、何十匹にも膨れ上がった魔物が突進してくる様子が目に映った。。

「剣を抜け! 来るぞ!」

 既にその先頭が彼らのすぐ手前まで来ていた。小さいが足は速い。ディアナも腰の剣を抜き、飛びかかってくる魔物を斬り落とす。小型でさほど魔力が無いのか、ディアナの聖具剣(オルラク)でも一撃で倒すことは出来る。だが、問題はその数だ。どこに潜んでいたのか、次から次から現れ重なるようにして突進してくる。

 海士のミハエル、ルフリヒトが白い神官服のスフィナを守るように前面に立ち、聖力が込められた剣を振って魔物を斬り落としていく。

 魔法士の2人は剣を使わず、両手を握りしめ魔物にその拳をぶつけていく。その拳はうっすらと赤い色の炎のようなものに包まれていて、その炎に魔物が当たると煙のように霧散していく。魔法の一つだろう。両手で器用に次々と襲いかかる魔物を倒していく。剣一本よりは,両手の方が効率はいい。

 

 だが、魔物の数はどんどん増えてゆき、既に彼らの前に広がる広場は一面茶色の獣であふれていた。一つ一つは前腕ほどの大きさほどだが、何千かというほどの数が地面を埋め尽くしていて、一斉に彼ら目掛けて走ってくる。

「これはキリがないぞ!」

 次々と飛びかかる魔物を殴り倒しながら、魔法士のトマスが叫んだ。魔物は足元にも迫り、囲まれ始めている。

「私が!」

 スフィナが右足を踏み出した。思わず、その前を守っていた2人の海士が左右に避ける。スフィナは持っていた短い権杖で何かの形を描くように振り、最後に前に向かって突き出した。すると、青白く薄い雲のようなものが前方に現れ、それが彼らの前に広がっていく。その雲に魔物が当たるとバシッという音と共に霧のように消えていく。次々にやってくる魔物たちだったが、その聖力の雲に当たっては消え、当たっては消えを繰り返す。その雲は彼らの前に広がり、魔物たちの前に壁のように立ち塞がった。


「ほっ」

 トマスが安堵の息を吐いた。彼らはスフィナが繰り出した雲のような壁のおかげで守られたようだ。ゲオルグも剣先を下ろし、突進しては消えてしまう魔物の大群を眺めていた。守りの雲は薄く、魔物が飛びかかってくる様子も見える。魔物は数を増やしながら突進してくる。彼らが消えて無くなるときの「バシッ」という音が連続から、重複して聞こえるようになってきた。

「うむ」

 ゲオルグは次々に霧散していく茶色の魔物を見ていたが、魔物たちは一向に自殺行為のような突進をやめない。それどころか、むしろその数は増しているように見える。

 

「・・」

 小さい息継ぎの声がゲオルグの耳に届き、彼はその声の方向に首を向けた。権丈をまっすぐに突き出したまま、スフィナの小柄な体はやや震えていた。見れば、その額から小さい汗が流れ落ちている。

 防御の雲を維持するのにスフィナは全力を使っていた。小さいとはいえ相手は魔物で、その数がとてつもない。一つ一つは小さくても数が多ければそれだけの魔力となる。今やその魔物の数は無数と呼ぶに等しいのだ。スフィナは若くして神官長になるほどの実力の持ち主だと聞いていた。したがって、その聖力はかなりのものとは思うが、永遠に続けられるわけではない。

「スフィナ様・・」

 同じようにスフィナを見ていた海士ミハエルの口から彼女の名が漏れた。


「このままでは・・・。まずい」

 ゲオルグの脳裏に浮かんだ言葉が思わず口をついて出た。

 全員の顔を安堵から不安の色に変わる。今はスフィナ一人に守られているが、それが無数の魔物相手にどこまで持ちこたえられるか。スフィナを助けたいが、神官は彼女一人で、誰にも力を貸す術が分からなかった。

「あう!」

 スフィナが一瞬体をひねり、顔をしかめた。雲の一部が薄らぎ、そこを飛び越えた魔物がゲオルグに向かってきた。

「ふん!」

 ゲオルグは右手の剣を腕だけで振るい、小さな魔物を一撃で叩き落とした。落ちた魔物は地面で霧散していく。

「やばい」

 トマスがつぶやいた。スフィナの力も限界が来ているようだ。もし彼女の力が切れたら、無数の魔物が彼らを襲うだろう。そうなれば数に圧倒されてしまう。


「わかった。12バーロ(約5秒)くれ」

 唐突にそう言って、アーティスが2歩下がった。それから両手で持った聖剣を構える。

「分かりました」

 スフィナは返事をすると力を込めるように、権丈をさらに前に突き出した。防御の雲が力を取り戻したように厚みを増す。だが、スフィナが両手で持つ権杖の先が震えている。

 アーティスは青い聖剣を水平に構えた。その姿勢のままアーティスは目を閉じて、静止する。誰かが唾を飲み込む音が聞こえた。1バーロ、2バーロ、,,アーティスの周りだけが凍ったように静止していた。

 不意にアーティスの二の腕の筋肉が震える。

「ハァッ!」

 アーティスは姿勢を崩さず、そのまま聖剣を突き出した。その瞬間は何も起こらなかった。

何が起こるかのかとゲオルグがその聖剣の先に目をやると突然にその光景は始まった。


 スフィナの防御雲の手前で、魔獣が1匹爆発した。それも体の内部から何かが外に向かって出ようとしているように体が大きく膨らみ、赤くキラキラした光と共に自爆する。

 するとその隣の魔獣も同様に爆発。さらにその隣の魔獣もきらめいて爆発する。その爆発は連鎖的に続いていき、左右の魔獣が爆発する。さらにそれは手前から奥へと続き、走り来る茶色の魔獣は自ら死地に飛び込むように次々と爆発する。

 見ている間に広場いっぱいにいた魔獣の群れはキラキラ光る破片を飛ばして爆発し、その奥の村に現れた魔獣も連続して爆裂して散っていた。

「はぁ]

 スフィナの後ろでアーティスが大きく息を吐き、構えていた剣を下ろして片膝を落とした。


 あっという間に無数と思われた魔獣の群れはすべて霧散した。聖剣の力は浜辺でも見たが、この破壊力にはゲオルグも唸るしかなかった。そこら中を埋め尽くしていた魔獣が跡形もなく消滅している。

「すごい・・」

 魔法士のトマスが棒立ちのまま、言葉を吐いた。

「すごいね。これが聖剣の力ってやつか」

 首を何度も縦に振り、トマスがアーティスを振り返った。

「大丈夫かい?」

 声を掛けられたアーティスは顔を上げ、やや疲れた表情で軽く笑った。

「さすがにこの数は疲れる・・・」


「おかげで助かったわ」

 ディアナが笑いながら近寄ってきた。

「ああっ」

 そのとき、最前列で護っていたスフィナの体が後によろけた。だが、倒れなかった。咄嗟にアーティスが前に歩を進め、左腕でスフィナ細腰を支えていた。自身も疲れているようだったが、咄嗟に体が動いたようだ。

「大丈夫ですか」

「あ、ありがとうございます」

 スフィナがやや頬を赤らめて、体を立て直した。長身のアーティスに比べて、スフィナは首一つ小さい。灰眼でアーティスを見上げて固い笑いを向けた。

「も、もう大丈夫です」

「チッ」

 アーティスの後でディアナが誰にも聞こえないように小さく舌打ちをした。すぐに笑顔を作り、アーティスにすり寄る。

「貴方の方も大丈夫じゃないでしょう」

 そう言って、ディアナはアーティスに肩を貸し、そのまま近くの石の上に座らせた。スフィナの方はトマスが傍に立って、別の石の上に腰を下ろした。

「お二人ともお疲れのようなので、一旦休憩にしよう」

 ゲオルグが皆の顔を見回した。

「ミハエル、ルフリヒト、周囲の警戒を頼む」

「はっ!」

 海士の二人は返事をすると、剣を抜いたまま周囲に目線を走らせた。

「我々が村の探索をしてこよう」

 トマス魔法士が提案して、ゲオルグは許可を与えた。

 魔法士の二人は、警戒しながら広場を横切り、村の方へ向かった。


ご愛読ありがとうございます。

思えば、2020年8月から足かけ3年目になりました。

実のところ、当初はもっと話は進んでいるはずでした。

実際のところは、思いの半分にも届いていません。

昨年初めはチョットしたスランプ状態で書けずで、まあ、遅筆はいつものことですが。。。

ともかくも今年も頑張りますので、本年もよろしくお願いいたします<(_ _)>


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