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青竜の騎士 ~青き聖剣の物語~  作者: 柊 卯月
第2章 銀珠海洋編
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011:出発

どうもお待たせしました。

現在三行革命が発動中で、日に三行しか進みません。

で、ようやく投稿できるところまで来ました。

ちょっと説明回のような感じですが、長い話には付きものですのでご容赦を。




「はあ・・・」

 アーティスは呼吸を整えると青い聖剣を背中にしまった。魔鳥はもう1羽も飛んでいない。一瞬にして魔鳥の大群は葬り去られた。

「さすがね」

 ディアナが直剣を腰の鞘に納めながら、アーティスに近づいた。彼女の剣も聖魔具(オーポーラ)であり、魔物に対抗する力を持つ。おそらくヘプターニの海士たちの剣も同じように聖力を封じた聖具(オルラ)だと思われる。魔物は普通の武器では倒せない。魔力が強い魔物だと傷を付けることすら出来ない。そこで、使われるのが聖力を付与し聖具とした武器である。ただ、聖力を込めることは誰にでも出来ることではない。修練を積んだ神官と修行を重ねた魔法士にしか出来ないと言われている。

 込められる聖力の強さはその能力者の力に比例する。しかも力を持続しつつづけるには都度聖力を込める必要がある。

 そう考えるとディアナが持っている剣が依然聖具であることは、驚異といって良い。いったい誰が造った(・・・)のか。相当な術士であることは間違いない。


「あ、ぐ・・・」

 ゲオルグは剣を振り上げた格好のまま、絶句して止まっていた。魔鳥の群れが一瞬にして消え去った。海から水の固まりが飛び出し、魔鳥の群れを襲い、最後は巨大な氷玉になって砕け散った。これが聖剣の力というものか。おそらくこれでも力の一部なのだろう。それにくらべれば、ゲオルグが持つ聖具剣など子供だましのおもちゃにしか見えない。一人でこの魔島に来ようとしていた理由の一つはこの強大な力があるせいだろう。確かにこの力があれば魔物を恐れることはない。

 

 ゲオルグは剣を腰に収めて、アーティスに近づいた。アーティスが気付いて振り返る。

「さすが、と言うべきなのかな」

 ゲオルグは驚きを隠せない表情でぎこちない笑いを浮かべていた。

「聖剣の技は初めて見たが、これほどとは・・」

「これは青の聖剣ビス=グランサーだからな」

 アーティスが肩上に見えている柄を右手でちょんちょんと叩いた。

 聞いたことがある。ゲオルグは聖剣にまつわる噂を思い出した。青の聖剣(ビス=グランサー)は6本の聖剣の中で、白の聖剣(ラング=リスベック)に次ぐ強さがある、と。

 六振りの聖剣はそれぞれの特性があり優劣を付けるものではないが、人は順位を付けるのが好きなようで、白の聖剣が最強と言われている。白の聖剣はかつてフェリアス・カナーンが魔物を封じた剣であり、その剣の持ち主が代々の皇帝の地位にある。その逸話ゆえに白の聖剣は最上位に序されていて、これにはほぼ反論がない。。

 二位については、甲論乙駁という感じで確証がない。そもそもお互いに競ったこともないので当たり前だが、その中でも有力とされるのは青の聖剣ビス=グランサーであった。

 

「その強さがあれば、我らは必要ないかも知れぬが、我らにも使命がる」

 ゲオルグが真剣な眼差しをアーティスに向けた。

「魔物退治に同行させてもらう、よいかな」

「それは構わない。こちらとしても心強い」

 アーティスにとっても仲間が増えるのは悪いことではない。このような状況では共闘した方がよいだろう。魔物を倒すという目的は同じなので、あえて別行動をする必要もない。

「少し待ってくれ」

 ゲオルグはそう言って、後にいる男に振り向いた。

「ルーカス! ここにキャンプを張る」

 ルーカスと呼ばれた男は内容を理解できないようで、ぽかんとしたような顔をした。その顔を見て、ゲオルグは先走ったことに気付いた。

「皆に話がある。ちょっと集まってくれ」

 全員がゲオルグの前に集まり、不安な顔でゲオルグを見つめていた。

「全員で行きたいところだが、怪我人もいる。隊を分けるのは不本意だがやむを得ん」

 そう言うとゲオルグは何人かの顔に視線をめぐらせた。

「私とミハエル、ルフリヒト、それにトマス殿とパウル殿、この5人がアーティス殿と侵攻する。ルーカス、ここに野営する用意を。後を任せる」

「は!」

 やや年配の兵士が直立不動で返事をし、すぐに踵を返した。そのまま、数人の兵士の名を呼び、野営のための指示を与える。

 ゲオルグは、その様子に頷いてから、先ほど名を呼んだ男たちに向き直る。が、その前に白い装束が現れた。

「私も行きましょう」

 白い神官の衣装を着た若い女が声を上げた。

「スフィナ様、それは・・」

「大丈夫です。そのために来たのですから。ここを守るためと怪我人の治療に他の者は残しますが、私は同行します」

 スフィナと呼ばれた女性は小柄で、ゲオルグとでは頭一つぐらい背は低いが、澄んだ灰色の瞳には徳が高い品格が備わっており、意志の強さが垣間見える。ヘプターニ国の中でも主流に属するサーランド神殿で若くして神官長に選ばれた希有な人物である。サーランド神殿はへプターニの王妃カタリーナに関係がある神殿で、その神官長となれば特別な地位にある。ゲオルグとしても無下にはできない

 

 実のところ、ゲオルグは今回の航海に神官が同行することは反対だった。神官を連れて行くことは王都からの指示だった。一度再考を問うたが、変更無しとの通知が届いたのみで、説明はなかった。しかも、神殿から来た五人のうち、女性が三名で魔物討伐には相応とは思えない。

 そもそもゲオルグは神官が使う聖力と呼ばれる力の使い方に懐疑的だった。魔法と同じような技は何度も見たし、先ほどもそれで助けられたが、基本的に神官が使う技は攻撃的ではない。防御を疎かにするつもりはないが、ゲオルグの性格としては防御より攻撃が優先する。今回の目的は魔物の討伐であり、攻撃力を重視するゲオルグとしては自分の思惑とは違和感があった。


「分かりました」

 スフィナの瞳に強い意志を感じたゲオルグは折れるしかなかった。このことで時間を費やすの無駄だ。やらねばならないことも多く、現実問題として現状は少数で孤立している。感情で考えるのは避けなければならない。

 ゲオルグは残る兵士たちに細かい指示を与え、神官たちに全員の武器と防具に聖力の付与を請うた。もともと出航する前にすべての武器を聖具にしてもらっていたが、先の大海獣(オーセグ)や鳥の魔物を目の当たりにすると、聖力がいくらあっても足りないぐらいに思える。使命を果たすことは大事だが、生き残ることも重要である。ゲオルグは海士長として部下の生命を守る責任がある。既に多数の命が奪われたが、まだ生きている仲間がいる。その命に対して、ゲオルグは責任を感じている。

 

「少し休憩したら、出発しよう」

 野営の準備を始めた海士たちを見て、アーティスが提案した。ゲオルグとしても野営の状況を確かめてから出発する方が安心だろう。アーティスにしても先ほどの技のおかげで少々体力を消耗した。この先のことを考えると少しでも回復してから出発した方が良いと思う。せっかく目的の島に着いたのだから、早く前に進みたい気持ちもあるが、焦らないことが肝要だ。


 アーティスは近くで砂地から突き出ている岩の上に腰を下ろした。聖剣は背に背負ったままだ。いつ何が起こるか分からない状況なので、気を抜くわけにはいかない。

 ディアナもその隣に座りこんだ。尻を少しずらせて、アーティスの左側に擦り着く。右腰の剣が邪魔だが、アーティスの右腕を開けておくには致し方ない。ディアナは左利きなので、この体勢がひっつくには最も都合が良い。


「ほんとに聖剣なのね」

 ディアナがアーティスの背中の剣をしげしげと眺めた。

「信じてなかったのか?」

 アーティスが訝しげに表情を歪めた。その表情をを見て、ディアナは両手を合わせて、腰をくねらせる。

 「ごめん。流石に聖剣って言うのはね。見たことないし。見た目は普通の長剣だし・・・」

 「はあ」

 アーティスはため息をつき首をがっくり落とした。聖剣ビス=グランサーは刀身が通常の剣より長く1リルク8トーム(約140センチメートル)ほどあり、刀身が青い色をしている以外に聖剣らしい特徴は見当たらない。柄や鍔に宝玉などがなく、過度な装飾はない。聖力を発していない時は、普通の両刃直剣にしか見えない。確かに聖剣と言われてもそれらしい感じはしないかも知れない。

「ま、そうだろうな」

 アーティスはもう一度ため息をつき、顔を上げた。

「それはいいが、この先は命の保証はないぞ」

「分かっているわ。覚悟はしてるって言ったでしょ」

 ふふっと笑い、ディアナが右腕をアーティスの左腕に絡めてくる。アーティスは身体を右に寄せ左腕を後にひねって、ディアナの腕を振りほどこうとする。

 

「あの~」

 アーティスがディアナの悪ふざけに戸惑っていると、2人の前に若い兵士が1人現れて、丸い球のようなものを差し出していた。

 見れば、球のようなものは、何かの樹木の実のようで、上部が切り取られていた。

「飲めるものを見つけました。これは飲んでも大丈夫です」

 アーティスは大きな果実を受け取った。中でチャプチャプと水の音がする。切り口から中を覗くといくつかに仕切られたそれぞれに水がはいっていた。砂浜の先に生えている樹木からとてきたようだ。野営の為にも飲み物と食料は大事で、そう言ったものを探したらしい。

 

「ありがとう」

 アーティスが礼を言うと若い兵士は頭を下げてから野営の準備をしている仲間のところへ走り去った。既に枝などを使って簡単な日よけが出来ていた。アーティスは彼がディアナとの関係を誤解したのではないかと訝しんだが、確かめるのも変な話だ。

「飲めるらしい」

 アーティスはそう言って、果実をディアナに渡した。

「じゃあ、お先に」

 ディアナは遠慮せずに果実の端に口を付けるとそっと中の液体を口に含んでみた。

 少し甘味のある水が口の中に広がる。ディアナはそのままごくごくと果汁の喉に運んだ。飲んでから喉は渇いていたことを思い出す。魔鳥の群れに襲われて喉の乾きを忘れていたことに気がついた。

「はぁ~」

 ひとしきり飲んでから、ディアナはアーティスに果実を返した。喉が潤うと少し疲れが取れたような気がする。

 アーティスも果実を傾けて喉を潤した。あふれ出た果汁が口の端から少し漏れ出たが、気にしない。それほど喉が渇いていたらしい。

 ひとしきり飲み終わると、アーティスは天を仰いで、口の端を袖で拭った。生き返るという表現ぴったりくる。

 もう一度ディナアが果実を取り、果汁を楽しんだ。少し甘いが、それが疲れた身体には良いようだ。

 ディアナが飲み終える頃に、ゲオルグが近づいてきた。

「こちらの準備はできた」

 ゲオルグの後に3人の兵と2人の魔術師、白い衣装の神官が続いている。

「出発しようか」

 アーティスは頷いて、腰を上げた。ディアナも続いて立ち上がり、島の中央にある小高い山を見つめた。



いよいよ出発です。

ここから。怒濤の戦闘シーンと行きたいところですが、どうなりますやら。

飽きないでくださいね。。。

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