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青竜の騎士 ~青き聖剣の物語~  作者: 柊 卯月
外伝の1 アルルア剣闘会
68/89

28:救出-スーナ


しかし、遅筆はなんともなりませんね。

小説を書く時間が欲しい。

これ以外のネタもあるんですけどね。

2本同時は難しい。。。


今回はいろいろなことが起こります。

とりあえずは、続きをどうぞ。


 2リルク半(約2メートル)を越える緑の巨体にごつい腕が左右2本ずつ、計4本。口には下顎から上に向かって牙が2本生え、ぎょろりとした青い目が妖しく光っている。

 子供の頃、絵本で見た怪物タルカスそのものだった。悪さをするとタルカスにさらわれると脅かされるのはよくある子供の記憶だ。


 緑の魔物は、上の右腕でメルフォターゼの右手首を掴み、引き寄せる。

「あうっ!」

 手首に痛みを感じ、メルフォターゼが悲鳴を上げる。力が入らずに剣を放してしまうと、ガランと音を立てて剣が石の床に落ちてはねた。

 

 緑色人タルカスは下側の両腕で、メルフォターゼの細い腰を捕らえた。

「おおん」

 タルカスが雄叫びを上げる。

 アーティスもショーンも繰り返される黒鳥の攻撃で、一歩も動けない。


「皇女殿下!」

 アーティスの叫びもむなしく、タルカスはメルフォターゼを捕らえたまま、元来た通路の奥の方へ姿を消した。

「チィッ!」

 緑色のタルカスの姿が見えなくなると、アーティスは本日何度目かの舌打をした。黒鳥は絶え間なく空中から攻撃を続けていて、動けないキュリアンを守りながらではメルフォターゼを助けに行くことも出来なかった。


「ショーン王子! 無事か?!」

「なんとか!」

 アーティスの呼びかけになんとか答えて、ショーンは剣を振り続ける。こちらもスーナを背にかばいながら、黒鳥の攻撃を防御しているが、倒してもすぐに復活するので全く数が減らない。剣を振るう腕の筋肉が悲鳴を上げており、疲労を気力が支えていた。

「でも、もう、持ちません!」


「よく頑張った!」

 いきなり声とともに人影が飛び込んできた。

「剣を下げて、頭も下げろ!」

 次の瞬間、その部屋全体に稲妻が走った。


 無数の稲光が走り、部屋全体がまぶしい光に満ちる。その稲妻の光矢一本一本が黒鳥に突き刺さっていた。

「あう!」

 アーティスは手にしびれを感じ、剣を取り落とした。アーティスの剣にも雷が落ちていた。剣刃が黄色く光っており、何かがその周りでパチパチと跳ねていた。見れば、ショーンも同じように剣を落としている。


 黒鳥は落雷によってすべてが霧散した。しかも死体すら残さず消えてしまっていた。あれほどいた黒鳥の群れを一瞬にして消し去った。恐るべき攻撃だった。

「大丈夫か? 王子殿」

 剣を構えた男が尋ねた。やや薄めの茶色の髪に、鋭い眼光が目に入った。草色の胴衣。手足には同じ色の甲を付けている。そして、その手に握られているのは、やや(みどり)色の光沢を放つ長剣。

 碧の聖剣士スルフォン・ソマ。その聖剣は雷を操るという碧の聖剣(グラン=サイバー)であった。


「あなたは・・・」

「間に合ったかな?」

 スルフォンは周囲に敵がいないことを確かめて剣を下ろした。

「助かりました」

 アーティスは頭を下げ、落とした剣を拾い上げた。

「しかし、皇女殿下が魔獣タルカスに連れさらわれました」

 言って、アーティスはメルフォターゼが消えた部屋の奥の方を指差した。


「タルカスか・・。まあ、いいか」

 4本腕の怪物にも特に動じた様子はなく、スルフォンはアーティスが指差した方へ向かって歩き出す。

「俺も・・」

「ちょっと待て」

 スルフォンの後を追おうとしたアーティスをキュリアンが呼び止めた。


「こいつを持って行け」

 キュリアンは持っていた剣を振り向いたアーティスに差し出した。

「聖力を流して、聖魔具(オーポーラ)にしてある。あとはお前の聖力を流せば完成だ」

 不安げなアーティスにキュリアンが苦笑いを浮かべた。

「大丈夫。お前なら出来る。練習したろ」


 アーティスは持っていた剣を床に置き、キュリアンから差し出された剣を取り上げた。両手で柄を握りなおし、その白刃を見つめた。確かに柄を握る手から何かの力が流れてくるのを感じる。キュリアンが流した聖力に違いない。その流れを逆にたどって、腕から聖力を流す感覚を想造(そうぞう)する。力が少しずつ剣に流れていく。やがて剣の先まで腕が伸びたような感覚にとらわれる。

「わかった。ありがとう」

 キュリアンに指2本を立てて軽く手を振った。


「わたしも!」

 歩を進め始めたアーティスにショーンが声を上げた。

「・・だめだ」

 アーティスは振り向いて、首を振った。

「あなたは、スーナ王女を守るのが第一のはずだ。王女を早く安全な場所に連れて行って欲しい」

 アーティスは諭すように、ややゆっくりとショーンに語りかける。

「メルフォターゼ皇女は必ず助け出す。聖剣士も一緒だからね」


 ショーンは一瞬躊躇したが、チラリと後ろのスーナを見てから頷いた。ここで口論するのは時間の無駄だ。それにショーンには魔物に対抗する手段がない。ショーンは意外に冷静な自分に少し驚いていた。

「分かりました」

 その言葉を聞いてアーティスも頷き、再び前を向いた。


「アーティス様!」

 ショーンの背中から、スーナが飛び出した。

「どうか、ご無事で」

 スーナは両手を胸の前で組み、駆け去ろうとするアーティスの背に声を放った。

 アーティスは、振り向かずに左手を軽く上げて左右に振った。そのまま、スルフォン・ソマを追って、通路の奥に消えた。


 しばらくその後を見送って、ショーンはスーナを見、キュリアンに向き直った。

 ショーンはキュリアンに手を差し伸べたが、キュリアンは右手を左右に振って拒否した。

「申し訳ないが、俺は歩けそうにありません」

 キュリアンは血で真っ赤に染まった大腿を指差した。

「連れて行ってもらっても足手まといになるでしょう。先にスーナ王女を安全な場所までお連れしてくれませんか」

 もと来た通路も絶対に安全とは言えない。まだ何かが潜んでいるかも知れず、少なくとも地上に出るまでは警戒が必要と思われる。

 それはショーンも分かっていた。だが、けが人を一人置いていくことには気が引ける。


「できれば早く行って、助けを寄こしていただくとありがたい」

 キュリアンは口端を上げて笑みを浮かべた。その顔は血の気が引いて青白い。キュリアンがショーンとスーナのことを思って言ってくれているのは分かっていた。ショーンは自分のふがいなさに情けなくなった。

「分かりました。必ず助けを連れてきます」

 ショーンは真剣な顔で答え、スーナに振り向いた。

「スーナ、歩けるかい?」

「大丈夫です」

 スーナは気丈に答え、背筋を伸ばす。

「必ず戻ってきます」

 ショーンは再度キュリアンに約束し、スーナの肩を抱いて通路へと進んだ。


 ショーンとスーナの姿が消えるまで見送ると、キュリアンは急に表情をゆがめた。

「痛い・・・」

 ショーンたちの手前、我慢していたが斬られた足の痛みは時間とともに大きくなっていた。骨が折れているかも知れない。止血したが、それでも少し意識が遠のきそうになる。

「まずいな・・」


「まずいわねー」

 キュリアンは驚いて声の方へ振り向いた。

 いつからそこにいたのか、黒いドレス姿の女がたたずんでいた。胸から腰に掛けて体型がそのまま現されるような体にぴったりとしたドレスで、明らかに場違いな感じだ。そして、その顔には見覚えがあった。今回と同じようにメルフォターゼ皇女とスーナ王女が襲われた時に会った女だ。


「役に立たない奴らね」

 キュリアンのことを無視しているのか、気がついていないのか、キュリアンの方を見向きもせずに倒れている兵士たちを見回した。

「ううっ」

 最初に倒された兵士がうめきながら、転がって仰向けになる。

「・・・めんどくさい。ちゃんと殺しといてくれないと・・」

 まるで誰かが落としたゴミを拾うようにふてくされながら、女は右手をひるがえした。

 次の瞬間、女の指が5本、まるで槍のように伸びて、倒れている兵士たちの脳天を貫いた。


「あうっ!」

 額の中央を槍先と化した指に貫かれ、兵士の体は一度ビクンと跳ねて床に落ちた。

 女はもう片方の手も左側に向けた。

 ビュッと空気を切る音がして、右手同様に3本の指が伸びた。その指槍は4リルク(約3.5メートル)先で倒れている兵士たちの頭を打ち抜く。


 女が両手首をクイッと動かすと、指があっという間に縮み、普通の指に戻った。女が指を振ると赤い血が飛び散った。嫌そうにその血の行方を睨み、首を左右に振った。

「な・・・」

 キュリアンはようやく声を出せた。この女の登場から息をしていなかったように、一度息を吐いた。


「あら」

 今気がついたように女が振り向き、キュリアンに視線を落とした。

 目が合って、キュリアンは恐怖を感じた。女の目は笑っていたように見えたが、その瞳の奥に得体の知れない殺意が見えた。

 思わず身を退いたキュリアンの視界から突然その女の姿が消えた。

 瞬きをするぐらいの時間の後、その女の顔が突然キュリアンの目の前に現れた。


「えっ?!」

 思わず叫んだキュリアンの唇を、その女は立てた人差し指でゆっくりと押さえた。

 女はキュリアンの伸ばしている足の上をまたぐように座り込み、キュリアンの顔をのぞき込んでいた。顔の距離は2トーム(約14センチ)ほど。その美貌に見つめられ、キュリアンは息をするのを忘れていた。


「あなた、前にもあったわね」

 文字通り甘い息がキュリアンの鼻孔に届く。濡れた唇に白磁の頬、切れ長の目。距離が近すぎて、キュリアンは視線のやり場に困った。すっかり状況を忘れて、鼓動が速くなる。

 女が白い指をキュリアンの頬に近づけた。息をのむキュリアンの頬を女はゆっくりと撫でた。


「あなた、お名前は?」

 なめらかな口唇の動きに視線が釘付けになる。

「・・キュリアン」

 キュリアンはどうにか自分の名前を吐き出した。

「キュリアン・・」

 女はキュリアンの名をつぶやき、おもむろにキュリアンの頬に当てた指を立てた。

 

「いっ!」

 キュリアンは頬に痛みを感じ、思わず声を上げた。血が出るほどの痛みを感じる。

 女はキュリアンの血が付いた指先を唇に当て、チロッと赤い舌を出して舐めた。女は目を見開き、口端を上げてにっこりと笑った。

「いいわぁ、あなた」


 妖艶に微笑んで、再び手の平をキュリアンの頬に当てる。

「体を大事にしてね」

 一瞬、キュリアンの体に電撃のようなものが走った気がした。

「・・その体、壊しちゃダメよ」

 女の顔が急に目の前に近づいた。

「すぐに忘れちゃうけど、また会いましょうね」

 女が耳元でささやいた。


 スッと女の顔が退いていき、代わりに白い人差し指が近づいた。その指がトンとキュリアンの額を突いた。


 ふっと目の前が白くなり、視界が戻ったときにはその女はいなかった。

 ()? 

 女って誰だ?

 キュリアンはぼんやりとした頭を軽く振った。周りには兵士が倒れている。アーティスやメルフォターゼ皇女が倒した連中だった。自分は足に傷を負って・・・。

 と、足を見ると傷が無かった。痛みも無い。ズボンは切れていて血の跡もあるが、全く傷はなかった。霊に化かされるとはこういうことか。

 何か大事なことを忘れたような気がするが、全く思い出せなかった。

 キュリアンは無意識に頬に手を当てたが、そこには傷も何も無かった。



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