25:捜索-キュリアン
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翌朝早く、アーティスとキュリアン、ショーンの3人は、皇城の近衛兵団の兵舎に寄り、探索の状況を確認していた。
夜を徹しての捜索に関わらず、二人の行方は不明のままだった。昨日のアーティスの証言通り、彼らと別れた後、皇城の北側にある花園の方へ行ったところまでは分かっている。だが、その花園で何があったのか、そこからどこに行ったのかは、誰も知らなかった。
いくつかの謎があった。花園に入っていったのを見かけた者はいたが、出て行ったところを見た者がいない。どこかの国の兵士らしい一団を見た者がいた。行方不明になった思われる時刻に魔力の波動を感じた者がいた。
それらを総合すると、魔法を使う者が二人を誘拐し、何らかの魔法により姿を消したものと思われた。そのため、魔法師も動員され、捜索に加わっていたが、皇女の聖力や王女の気配は感知されていなかった。
夜明け前から捜索範囲を城下に広げているが、芳しい情報は無いようだった。できるだけ秘密裏に、ということで捜索には制限がかけられているが、それにしても手がかりが少なかった。
陽が登ってくる時間になって、捜索に加わった近衛兵には疲労感が漂っていた。
「どう思う?」
兵舎を出たアーティスは、キュリアンに振り向いて問うた。アーティスとキュリアン、それにショーンを加えた3人は、独自に皇女と王女を探すつもりだった。
「これだけ探しても見つからないのは、ちょっとおかしい」
真顔で話すキュリアンにアーティスが頷く。
「城内は隅々まで探されているが、公館や公邸の中までは行ってない」
できるだけ内密に、という皇帝の意向により、捜索範囲は限定されている。公館や公邸を調べるには事情を話さねばならず、すべてを口止めも出来ないため、そこまでは調べられていない。
「どこかの国が誘拐したということですか!」
ショーンが思わず声を上げた。皇女を誘拐などすれば、皇国に弓を引くことと同じ。現状でファルアニア13国の中に反逆を起こす国があるとは思えないが。
「すでに城外、いやアルルアから連れ出されたとは考えられませんか」
「いかに夜中といえど、女性二人を街外へ運ぶのは難しいのではないかな」
街の中は剣闘会のお祭り騒ぎで、夜中でも人通りがある。街は城壁で囲まれており、城門には1日中兵士がいる。それらに見とがめられずに街の外に出るのは不可能と思われる。
「何らかの魔法で隠蔽することは可能かも知れないが、その場合は魔法の残滓に魔法師が気づくだろう」
魔法士見習いのキュリオンは魔法院でそういったものが無かったと聞いていた。皇城の敷地内で強力な魔法が短時間に使われた形跡はあった。だが、城下で隠蔽などの強力な魔法の痕跡はなかったと報告されている。
「そこでだ」
キュリアンが顔の前で人差し指を立て、アーティスとショーンに交互に視線を送った。
「俺が考えるに、それほど遠くには行ってないと思う」
「皇城の中は隅々まで捜索されたはずだぞ」
アーティスの反論に、キュリアンは立てた指を左右に振って見せた。
「一カ所だけ調べられていない場所がある」
「えっ?!」
ショーンとアーティスは同時に声を上げた。
「おそらく、調査から外されているはず・・・」
そう言いながら、キュリアンは魔法院近くの小屋に近づいた。
井戸か何かの小屋のようで、窓が無く鉄の扉が一つあるだけだった。その扉には鎖がかかっており、さらに小屋の周りも鎖で囲まれており厳重に封鎖されている。人が入った様子はない。
「ここが例の地震で壊れたっていう地下への入り口だ」
「ここに?」
アーティスは再び小屋を見た。周囲の鎖も扉の鎖も切れた様子はない。
「・・だが、鎖が・・・」
言いかけたアーティスに向かって、キュリアンが人差し指を向けた。
「そう。だから、ここは捜査されなかった」
そう言って、キュリアンはその小屋の傍を通り過ぎ、その先のやや盛り上がった草むらをを越えた。
その先は下り坂になっており、木々が生え、腰までのあるほどの草が大地を覆っていた。さらにその先は上り坂で、谷のようになっている。
その草原へキュリアンは足を踏み入れた。ただ、むやみに入っていったのではなく、誰かがすでに踏んだのか、草が倒れて道が出来ている。だが、ここを知らなければこの道には気がつかないかも知れない。
やや急な斜面を慎重に下ると、途中にえぐられたように地面がへこんでいるところがあった。坂の上からでは、気がつかないだろう。確かに見逃された可能性がある。
「よく、こんな所が分かったな?」
アーティスの問いにキュリアンは何故か空を見上げて「まあな」とだけ答えた。その後やや振り向いて先ほど下ってきた頂上を見た。その視線の先には最近何かが滑り落ちたような跡があった。
アーティスがのぞき込むと、へこみは思っていたより大きく、大人が2-3人は入れそうな大きさがあった。さらにその奥には、鉄の扉が収まっている。
2枚の開き戸になっている鉄扉の周りに土が無く、最近開かれた形跡が見える。
「例の地震の時に竜が出たと言われたところなんだが、あまり捜索されずに終わったんだ」
魔法院から捜索に制限がかかったとのことだが、理由は公開されていない。だが、そのために見逃された可能性があるとキュリアンは言った。
錆びた取っ手に手を掛けると、意外なほど軽く扉が開いた。軽い軋み音とともに扉の内側に光が差し込んだ。
中は意外と広く、二人が並んで歩ける程度の階段が地下へ繋がっている。石で出来た階段は積もっていたはずの埃が乱れていて、最近人が通った痕跡があった。
「当たりだな」
キュリアンが振り返って、したり顔を向けた。
「どこに繋がってるんだ?」
アーティスが当然の質問をし、キュリアンは首を横に振った。
「俺も入ったことが無いんで分からないんだが、魔法院の地下は迷宮になっていると聞いたことがある」
「そんなところに何故誘拐犯が?」
アーティスが首をひねった。
「そいつらがここを知っていたということか? なんだかあやしいな」
「でも、ここにスーナが連れて行かれた可能性があるんですよね」
ショーンが中をのぞき込んだ。今にも中に駆け込みそうな顔つきだった。とにかくスーナの身が心配だった。もちろんメルフォターゼも心配ではあるが、ショーンにとっては唯一の妹に換えられるものはない。
「そうだな。今は二人を見つけるのが先だ。とにかく行ってみよう」
アーティスはそう言って、階段に足を下ろした。
数十段の階段を下りると、そこから左に通路が延びていた。先は暗くてよく見えない。するとキュリオンが前へ出て右手の指を複雑に動かして、ブツブツと何かを唱えた。
すると、キュリアンの右手の上にボウッと炎が現れた。手の平大の赤い炎が通路の壁を照らした。奥の方までは見えないが12リルク《約10メートル)ほど先までは見えた。
通路はやや下り坂になっており、左の方へ緩やかに曲がっていた。
キュリアンの手の平の炎を頼りに岩をくり抜いたような廊下を進んでいくと、奥の方にぼうっと小さい光が見えた。近づいていくと、かすかに声が聞こえる。
アーティスが右手を挙げ、3人は歩みを止めた。音を出さないように、指先まで静止すると、男の話し声が耳に届いた。
「・・・このまま・・・大丈夫か・・・・」
「・・・今は・・・だろ・・・」
「・・・あの女・・・・」
複数の声が聞こえる。アーティスたちは声を潜めて、その先を窺った。キュリアンが無言で右手を握ると、その手の平の上にあった炎が一瞬にして消えた。
通路の先をアーティスが慎重に覗き込むと、かなり広い部屋になっていた。たくさんの太い円柱が高い天井を支えていて、王宮の広間ほどの広さがあった。円柱の幾つかには松明が取り付けられていたが部屋が広いためか薄暗い。その中に数人の影が見えた。
軽装の兵士のようで見える範囲だけで、5人を確認できた。その兵士たちの奥の方に、金色の髪が見えた。




