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青竜の騎士 ~青き聖剣の物語~  作者: 柊 卯月
外伝の1 アルルア剣闘会
58/89

18:魔物《ガズナー》

投稿に間が空いてしまいました。

できるだけ早く書こうとは思っているのですが。。。

毎日更新している人はどうやっているんだろう。。

尻切れにならないように続けますので、どうか長い目で見てやってください。

 剣闘会(リクザード)は無事に2日間の日程を終え、明日から2回戦となる。2回戦から登場するアルルアのファラーン・ランスフォードを除いて、13の国の代表が剣を交えた。すでに7試合が終わり、7人の勝者と7人の敗者が存在する。もちろん勝者には栄誉があり、敗者にも敬意が払われていた。どの戦いも白熱した熱戦で、その試合を戦った勝者も敗者も讃えられ、尊敬されていた。また、やはりそれぞれの出身により身びいきもある。(ちまた)ではそれぞれ自分が推す出場者について語り合う姿がそちらこちらで見られた。


 その中でも特に人気が出たのが、アーティス・トランであった。王子が出場するということでも注目を集めていたが、一回戦を勝ち抜けたことでその実力も示した。王子であり、剣術も一流、背も高く、まあ顔もそこそことなれば、女性たちが放って置くはずもない。それは皇城内も同じだった。



「いいのか、出場者がこんな所に出歩いていて」

 銀杯に入った酒を一口飲んで、キュリアンは向かい側に座る男に話しかけた。

「城の中にいてもうるさくてな」

 深めに帽子をかぶり、顔を隠すように左手を頬に当てたまま、アーティスが答えた。城下の繁華街から少し外れたところにある居酒屋である。城内にいても、面会を求める貴族の娘たちが後を絶たず、落ち着かない。何しろ断っても次々に来訪があるのだ。


「モテていいじゃないか」

「程度によりけりだろ」

 薄笑いを浮かべるキュリアンを睨んで、アーティスはため息をついた。まさかこんなことになるとは予想もしていなかった。呼び鈴がひっきりなしに鳴り、食事も落ち着いて食べられないのだ。

「参ったよ。試合より疲れる」

 杯に残った酒を飲み干して、テーブルにどんと空の杯を置く。ちょうど通りかかったエプロン姿の店員を呼び、空の杯を振って追加の酒を注文する。

「いいのか、明日、試合だろ」

 アーティスよりも1杯多く飲んでいるキュリアンが心配げに言う。

「大丈夫、これで終わりにするよ」

 すぐに短いスカートをはいた女店員が満杯の銀杯を持ってきて、空の杯と交換していった。


「皇女さまの方はどうなんだ?」

「あの後は何もなさそうだよ。あれから護衛も付いているようだしな」

「いや、そういうことじゃないんだが・・・」

 キュリアンは頭を掻き、アーティスはきょとんとした顔で首をひねった。

 キュリアンが何か言おうと口を開きかけた時だった。

「・・・!」


 キュリアンとアーティスが同時に顔を店の入り口付近に向けた。背筋がびくりと震える。何かの気配を感じた。

 アーティスが立ち上がり、その入り口に走った。キュリアンも慌てて立ち上がり、ポケットから硬貨をつかみ出し、乱暴にテーブルの上に置いた。

「ねーちゃん、お代だ!」

 キュリアンは驚く女店員に声を上げ、アーティスの後を追って店を飛び出た。


 角を数回曲がり、人気(ひとけ)のない場所に入っていく。さらに数回角を曲がると、袋小路に当たった。

 先に行けなくなって、逃亡者が足を止めた。アーティスもその袋小路の入り口で止まった。姉月(ミア)妹月(ティア)が東と西にあり、その逃亡者の姿を照らしていた。背格好はアーティスと同じぐらいだろう。薄い革鎧を身につけた兵士に見えた。だが、振り向いたその顔は人のものではなかった。


「なっ!」

 明らかに違うのは、上唇から顎に伸びた2本の牙。頭には短い金髪があったが、額より少し上に一本の角が突き出ていた。目も大きく、獣のような顔がアーティスの方を睨んでいる。

 さすがにその顔を見て、アーティスはひるんだ。明らかに相手は人外であり、仲良く出来そうには見えなかった。


 その怪物は武器の類いは持っていないようで、アーティスに向かって両手を向けた。だが、その指には指の長さと同じぐらいの爪が付いていて、そのとがった先端が月明かりにきらめいた。剣など持っていなくても、その身が武器になるようだ。

 アーティスはゆっくりと腰の剣を抜いた。二本の月明かりが剣刃を閃かせた。

 ギリッ。

 魔物が歯軋りとともに、右の爪をアーティスに突き出した。高速で突き出される鋭爪をアーティスはかろうじて剣で受け流す。


「キーッ!」

 奇声を発し、魔獣は右の爪を繰り出す。その爪も弾いて、アーティスは剣をひるがえし、魔物の胴めがけて剣刃を叩き込む。

 剣先が革鎧を裂き、ザクッと肉に剣が食い込む音がした。アーティスはそのまま剣を振り抜き、体をひるがえした。


 魔物がその一撃で腹を押さえ倒れる光景が見えるはずだった。だが、振り向いたアーティスの目に映ったのは、何事もない様子の魔物だった。左脇の鎧は切れていたが、その下に見える傷口が見る見る塞がっていくのが見えた。

 アーティスの驚く顔を見て、魔物がかすかに笑ったように見えた。


 再び魔物が爪を突き出した。アーティスはそれを避け、魔物の右腕に斬りつける。剣刃が魔物の二の腕を切り裂いた。魔物の右腕が肩からぼとりと地面に落ちる。一瞬血が吹き出るが、すぐに収まった。魔物は痛がる様子もなく、不思議そうに落ちた腕を眺め、ゆっくりと左手で自分の右腕を取り上げた。そして、その右腕の傷口を無造作に切り落とされた肩に押しつける。

 すると、その傷はすぐさま塞がっていき、やがて元通りに繋がった。魔物は繋がった右腕を確認するようにグルグルと回した。


 その様子にひるんだアーティスに魔物はナイフのような爪を繰り出して来た。アーティスは剣を振ってその爪を弾き返すが、三撃目の爪先が左頬をかすった。アーティスの頬にうっすらと血の線が走る。その傷を気にした様子もなく、アーティスは魔物を睨んだ。

 倒せるとしたら、首を切り落とすか、頭を叩き割るか。そのぐらいでないと、少々の傷は治ってしまうため、致命傷にはならないようだ。何しろ切り落とした腕が繋がってしまうやつだ。なかなかにやっかいな相手であった。


 アーティスは両手で柄を握り直し、剣を水平に構えた。狙いは首から上だが、簡単には()らせてくれそうにない。

 アーティスは剣を魔物の顔めがけて剣を突き出す。魔物は爪を広げてその剣を受け止め、左手の爪をアーティスに向かって突き出した。アーティスは体をひねってその爪を避けるが、剣はがっちりと掴まれており、間合いを取ることは出来なかった。


 アーティスは剣を引き抜こうとしたが、魔物は剣を掴んだまま放さない。

「アーティス!」

 背後で名を呼ぶ声が聞こえた。その声に魔物が一瞬ひるみ、剣を掴む力が緩んだ。アーティスはその隙を逃さずに剣を指爪から引き抜き、後退って間合いを取った。


「大丈夫か?!」

 キュリアンが駆け寄ってきたが、魔物を見て足を止めた。

「・・・こいつは・・・」

 明らかに異形の魔物。本の中でしか見たことのないものが目の前にあった。赤銅色の体に牙と角がある顔。四肢は人と同じであったが、体から見えない魔力がその体を包んでいるのが分かる。


 不意にヒューイと口笛が夜の街に響いた。魔物はその音で振り返り、再度アーティスたちを見てから後退り始めた。数歩下がって距離を取ると、急に踵を返して走り出した。あっという間に角を曲がり、魔物はアーティスたちの前から姿を消した。


「大丈夫か」

 魔物が駆け去るのを見て、キュリアンが同じ質問をした。

「大丈夫だ」

 アーティスは答えて、剣を納めた。

「・・・この剣では倒せなかった。斬っても治ってしまう」

 アーティスがつぶやくように言った。


「相手が魔物だからな」

 キュリアンは腕を組んでしたり顔で頷いた。

「あのぐらいの魔物だと、体中に魔力をまとっている。普通の剣では倒せんよ」

「どうやって倒すんだ?」

「魔具か聖具が必要だな」

 魔具とは何かの物に魔力を込めた物、聖具は聖力を込めた物である。使われた魔力や聖力の内容によって、性質が変わる。剣に魔力を流すと、魔物に対抗できる武器になる。


「あんなやつがいるとはな」

 キュリアンが考える風に視線を宙に飛ばした。そもそもアルルアの街には結界が張られていて、魔物は簡単に侵入できないようになっているはずだった。侵入できない場所に魔物がいるということは・・・。

「どこから来た?」

 アーティスとキュリアンは顔を見合わせてどちらからともなくため息をついた。


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