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青竜の騎士 ~青き聖剣の物語~  作者: 柊 卯月
外伝の1 アルルア剣闘会
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07:剣士アーティス


「皇女殿下、ご無事ですか?」

 アーティスはメルフォターゼに振り返った。

「はい」

 メルフォターゼは色違いの瞳を見開いて、救助者を見て短く答えた。

「そちらのお二人も大丈夫ですか?」

 アーティスは立ち上がろうとする兵士の腕を蹴りながら、ショーンとスーナの方へ向き直った。

「はい!」

 呆気にとられるショーンをよそにスーナが勢いよく返事を返した。


 アーティスはニコリと笑うと、3人の兵士の方へ向き直った。

 それを合図にしたように、兵士たちが一斉にアーティスに襲い掛かる。

 アーティスは左側に足を踏み出し、右からの剣を避けるとともに、左から突き出された剣も2歩で回り込んだ。左側から突き出された剣を持つ兵士に回り込んだ勢いで体をぶつける。右側から体をぶつけられた兵士はよろめき、遅れて近づいてきた3人目の兵士にぶつかって、よろめく。


 立ち位置が入れ替わり、3人の兵士は右側に回り込んだアーティスに向き直った。

 アーティスは右側から突き込んでくる兵士の剣先を避け、その剣を持った兵士の手首を左腕でつかみ、同時に右肘で兵士の顎を突き上げる。アーティスが右ひざで、掴んだ兵士の左腕を蹴りあげると、兵士の手から剣が離れて落ちた。剣を落とし、顎を突かれてのけぞった兵士の胸にアーティスはさらに肘を打ち下ろした。兵士の体が煉瓦の歩道に落ちるとともに、手を離れた剣が金属音を立てて落ちた。


 ほんの一瞬の出来事であった。兵士たちが向き直った直後に、気が付けばすでに一人の兵士は路上に倒れていた。ほかの二人は身動きすらできなかった。倒された兵士はすでに気絶しているのか、ピクリとも動かない。

 アーティスは間髪入れず、倒れた兵士が落とした剣を拾い、立ち上がる。左手で拾った剣を右手に受け渡す。右手で剣の柄を握り直し、手首を回して、剣をぐるりと回す。近衛兵の剣は長さも持ち手もよくできていて、使いやすそうだった。


 おもむろに柄を両手で握り剣を構えると、アーティスは兵士たちに向き直った。最初に倒された兵士がようやく起き上がってきていた。兵士たちの後ろにはメルフォターゼ達がいるのだが、兵士たちの意識はアーティスの方に向いているようだった。アーティスとしても兵士の気が彼女らに向かないうちに倒したい。


 アーティスは剣先をフラフラと振って、兵士を挑発する。兵士の一人が剣を頭上に振り上げ、アーティスに向かって振り下ろす。アーティスは剣を斜めに振り上げて、その剣を受け止める。ガキッと剣がぶつかる音が響いた。

 そこへもう一人の兵士が左から斬りかかってきた。アーティスは切り結んだ剣を押し返し、すぐに飛び退る。下がったことで空を斬る剣をさらに上から剣で叩き下ろす。相手の剣先が煉瓦の道にガンッと当たる。アーティスはそのまま前に左足を踏み出し、体を捻るようにして右足を水平に突き出した。

「うっ!」

 アーティスに腹をしたたかに蹴られ、体をくの字に曲げて吹っ飛んだ。その兵士は2リルク(注:約1.7メートル)も飛ばされて、庭園の柱に背中を打ちつける。そのまま通路に落ち、座った形でがっくりと首を垂れたまま、動かくなった。


 アーティスは剣を残った2人の兵士に向けた。兵士の方も剣を同じように構えた。お互いににらみ合い、間合いを確認する。2つの眼が4つの眼とにらみ合った。だが、アーティスは違和感を感じていた。近衛兵たちの目に光がない。視線は確かにこちらを向いているのだが、何か違うものを見ているように焦点がずれているように見える。身体の動きについても、どこか意識のないような動きであり、夢遊病のように芯が安定しないような剣裁きだった。本気でないという感じで、おかげでアーティスとしても戦いやすくはあるのだが。


 アーティスがじりっと右足のつま先を前に滑らせると、二人の兵士は同時に剣を振り上げ、同じ動きでアーティスに剣を突き出した。

 アーティスの剣は高速だった。剣先が右に閃き、右からの剣を弾いた。次の瞬間には左の剣も左側に弾き飛ばす。一瞬にして、突き出された剣先が両外側に向き、アーティスはその開いた間隙に身体を滑り込ませた。3歩進んで二人の兵士をやり過ごすと、体を捻って振り返る。その回転の勢いで左手を振り、右側にいた兵士の首に手刀を叩き込む。

「あうっ!」

 兵士はうめき声をあげて、その場に倒れ込む。もう一人の兵士は咄嗟に飛び退ってアーティスの追撃を避けた。下がりつつその兵士は剣を構える。

 アーティスは躊躇せずに剣を短く振り、兵士に斬りかかった。兵士は剣を眼前に突き出し、アーティスの剣を受け止める。


 ガキン。

 振り幅は短かったがアーティスが放った剣は強く、受けた兵士の剣が押し返された。さらにアーティスは剣を振り上げ、さらに振り下ろす。

 ガキン、ガキン、ガキン・・・。

 アーティスの容赦ない連続攻撃に兵士は防戦一方であり、頭上を守るのが精一杯であった。

 ガラン。

 ついに兵士の握力が耐え切れず、剣を落としてしまった。それを見てアーティスは剣を振りかぶったままで、剣の動きを止めた。ニヤリと笑うと、両手で握った剣を立てたまま、柄頭を兵士の首筋へ打ち込んだ。

「うっ」

 一瞬首をビクつかせ、兵士は膝を折るようにして崩れ落ち、そのまま煉瓦の通路に倒れ込んだ。

 

 アーティスは周りを見回して、剣を持つものがいないことを確認すると、剣を閃かせ足元の煉瓦と煉瓦の隙間にガッと突き立てた。

 ふうとアーティスは息を吐いたが、あれほど動いていたのにほとんど息を乱していなかった。ショーンはその剣撃もさることながら、平然と呼吸しているアーティスに驚いていた。


「ありがとうございました」

 メルフォターゼはアーティスに近づき、腰を折って頭を下げた。アーティスは恐縮したように軽く首を振った。

「いえ。皇女殿下がご無事で何よりです」

 メルフォターゼがニコリと笑うと、その後ろから白い影が飛び出した。

「助けていただいて、ありがとうございます!!」

 アーティスを見上げる碧い眼がキラキラと輝いているように見えた。

「わたくし、スーナ・エランドと申します!!」

 下から真っ直ぐに見つめる瞳に気おされながらアーティスが上半身を引く。

「・・・エランド・・・。マト国の王女様でしたか。初めてお目にかかります。アルファムのアーティス・トランと申します」

「アーティス様とおっしゃるのですね! もしかして、アルファムの王子様?」

「はい」

 アーティスは短く答えて、伸び上がってくる少女に思わず一歩退いた。

「まあ」

 何故かスーナは顔を赤らめ、両手で自分の赤い頬を包んだ。

「まあ、まあ・・・」

 スーナは目を見開き、同じ言葉を繰り返した。


1週間に一回しかアップできてませんが、立ち消えにするつもりはありませんので、見捨てないでお付き合いください。

あらためて思いますが、毎日のように投稿できる方はすごいと思います。

また、感想やご意見をいただけると、もう少し奮発するかも。。。

ともかく、無理せずに続けていこうと思います。



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