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青竜の騎士 ~青き聖剣の物語~  作者: 柊 卯月
第1章 朱珠北国編
39/89

038:朱珠


 爆風が止んで音も収まり、イノが不安げに顔を上げると、半分崩れた城壁が見えた。魔獣の姿は見えない。城壁の残った部分には大量の瓦礫が散乱していた。

 その瓦礫の中に、青い鎧の男が倒れていた。先ほどまでの青い光はなく、意識がないようで、動かない。


「アーティス!」

 イノが叫んで、走り出した。ショーンやバックも追って走り出す。積みあがった瓦礫を避けながら、倒れて動かない青い騎士に駆け寄った。

 イノはアーティスの傍に両膝をついて、その頭を抱える。息はしているようだ。

「アーティス・・」

 イノの声にアーティスが眼を開いた。瞳の色は黒に戻っている。だが、焦点が合っていないように目が宙を見ていた。

 アーティスが瞬きを2-3度すると、目に光が戻った。


 アーティスは視線をくるりと回した。ほとんど空しか見えなかったが、一人の顔が映った。

「イノ・・」

 アーティスが乾いた唇を動かした。全身に痛みがあり、動かせなかった。手を上げることすらできない。だが、右手には剣の重さを感じ、聖剣を握っていることは分かった。足の方は感覚がなかった。心臓の音は聞こえるが、耳から入ってくる音はすごく遠くから聞こえているような感じだ。深呼吸すると肺が熱く感じる。肺の中が焼けているようだ。


「げほっ、げほっ」

 アーティスはむせ返り、その反動で上半身を起こした。背中と腰が痛む。左手で胸を押さえ、ゆっくりと呼吸を整える。口の中がカラカラに乾いていた。大きく息を吐くと、少し楽になった。

 

 ふと胸を押さえていた左手が何かを握っているのを感じた。手を開くと、赤い光が眼に飛び込んできた。キュリアンが魔獣バルシェットの口に放り込んだ宝玉であった。戦神シルフォルンを象徴する(あか)い珠。皇都アルルアから盗まれたとされていた6つの宝珠の一つであった。

 

- 爆炎の中で赤い光が見えた。自身も吹き飛ばされる中、手を伸ばした。赤い光を掴んだのかどうかは覚えていない。だが、意識が遠のく中で何故かそれは取らないといけない気がした。



「アーティス?」

 イノがアーティスの顔を覗き込む。

「ああ、済まない・・・」

 アーティスはかすれた声で答えた。

 が、答えた途端にアーティスは首をがくんと折って、気を失ってしまった。

「救護兵!」

 ショーンが崩れた城壁から下に向かって叫んだ。



- 巨大な魔獣が拳を振るう。

- 魔獣の拳に吹き飛ばされ、城壁の壁に打ち付けられる。全身が痛い。

- 魔獣の目から赤い光が放たれる。

- 石床が吹き飛ぶ。

- 拳が左右から飛んでくる。

- 風圧の後、全身に衝撃が走る。

- 痛みというより苦しい。

- 意識が一瞬飛ぶ。

- 目を開くと、魔獣の姿が見えた。

--- ここから視界がおかしい。まるで仮面をかぶって、その仮面越しに外の景色を見ているようだ。体の感覚はあるのに、何か違う肉体の中から見ているような視界だ。

- 腕が青く光っていた。その腕に鱗のような模様が浮かび上がっていた。

- 魔獣の指を切り落とした。

- 魔獣が叫んだ。

- 魔獣の手首を切り落とした。聖力が上がっていた。この力なら魔獣を斬れる!

- が、魔獣は手首をつないで治した。強力な治癒能力。

- 魔獣の腕が細切れに切り落とされていく。

- 斬ることは可能だ。だが、魔獣の腕が再生してく。

- 魔獣を倒す方法は?

- 斬ることはできる。

- 細胞の大きさになるぐらいに破壊できれば。

- 血が、魔獣の血は水?

- 水を一気に沸騰させれば。

- 魔獣に聖剣を突き刺せば、聖力を送り込める。

- 一番弱いのは?

- 眼。

- 何故か、可笑しくなった。

- 勝てる。

- 魔獣の目が迫ってきた。

- 聖剣をその眼に突き立てた。

- 聖剣の力を魔獣に注ぎ込んだ。

- 爆発。



「・・・なるほど、シャリオ・フェードソンはその魔獣の穴の中に落ちて死んだと?」

「多分、その後、魔獣が出てきたから、食われたかな。食われてなくても、あの後だと生きてるとは思えないね」

「そして、怪しげな男は飛んで行った。目的は魔獣を封印から解くことだと?」

「そんな感じだ。詳しい話は、アーティスに聞かないとわからないが・・」

 アーティスはうつろな意識の中に、誰かの会話が流れていた。その意味などは分からない。ただ、音として、脳内を通り過ぎていく。

 記憶と現実の区別がつかない。夢を見ているような感じ。


「アーティス殿の意識が戻るのを待つしかないか」

 自分の名前が聞こえた時、うつらうつらとしていた意識が急に現実に引き戻された。

 目を開くと、丸く白い天井が見えた。建物の中らしい。声が聞こえた方に首を傾けると、何人かが椅子に座っているのが見えた。動かしたせいで首が痛む。聞こえていた声のほかに、慌ただしい足音や声が聞こえてきた。多くの人がいるらしい。


「アーティス! 気が付いた?!」

 イノの声が頭に響いた。

 椅子から立ち上がり、イノが近づいてくるのが見える。

 それを見て、アーティスはほっとした。どうやら、自分もイノも生きているらしい。

 イノの後に、バック・リージェンやダフの顔も見えた。


あと1話で第1章は完結です。

この後、そのまま第2章に行くか、エピソードをはさむか、悩んでいます。


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