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青竜の騎士 ~青き聖剣の物語~  作者: 柊 卯月
第1章 朱珠北国編
24/89

023:交戦


 つばぜり合いから、一旦お互いに後ろに下がって間合いを取る。相手はなかなかの剣士だった。ダフは剣を構え直して、相手を睨んだ。年のころは30代か、ダフよりも10は若く見えた。

 その兵士が剣を振りかぶり、ダフに向かって切りかかる。ダフは剣を構えて頭頂で受けると、体を右に寄せつつ、その剣を受け流す。剣を引きぬくように受け流すと、剣先をひるがえし、切りかかる。郡兵は身をひるがえし、かろうじてその剣を受け止めた。その郡兵は身を引くと同時に、持った剣を相手の腕に打ち込む。ダフは咄嗟に飛び退るが、剣先がダフの前腕をかすめて手甲の皮と皮膚の一部を切り裂いた。深手ではないが、血が滲んでくる。


「やるじゃねえか」

 ダフは、言うと同時に剣を振り、郡兵に切りかかる。右に、左に剣を打ち込み2合、3合と剣を打ち合う。郡兵の方は守勢一方になり、ダフの苛烈な剣勢に後退する。ダフはその勢いで歩を進めたがー。

「あっ!」

 足元の小さな石の突起に躓いてしまう。前に勢いが付いていたせいで、前のめりに倒れそうになる。郡兵はそこへすかさず、剣を振り下ろす。体勢が崩れたダフの頭上に剣が落ちてくる。終わった、とダフは目を閉じた。

 

 が、ダフの身体は倒れる寸前で何かに受け止められた。見れば、相手の郡兵は1リルク(注:約85センチメートル)ほど先で倒れていた。上を見ると、アーティスの顔があった。ダフはアーティスの腕を支えに半身を起こし、立ち上がった。

「助かったよ」

 ダフは笑い、アーティスに親指を立てた。ダフが切られる寸前にアーティスが駆け込み、郡兵の顔を右肘で殴り飛ばすと同時に左腕でダフの身体を支えたのだった。


「郡令官はいたか?」

 アーティスが問うとダフは首を横に振った。

「ここらにいないな」

 ダフは辺りを見回して言った。そこへ一人の郡兵が切りかかってくる。アーティスは表情も変えずに、その剣を青剣で跳ね返し、返した剣の軌道のまま腕を伸ばした。その剣先が剣を跳ね飛ばされた男の首筋を襲い、赤い血を上空に噴き出させた。


「郡令官がいるのなら、あそこだな」

 別の郡兵の剣を受けたダフが、その先にある主塔の方に顎をしゃくった。ダフは剣を交えた男を力で押し返し、その勢いで郡兵の腹に剣を叩き込む。横腹に衝撃を受けて、郡兵はよろめいて倒れていく。


 倒れる郡兵に一瞥もくれず、アーティスは主塔の方へ駆け出した。主塔の前に郡兵が二人控えている。アーティスが近づいてくる姿に気が付いて、その二人は剣を構えた。

 アーティスから見て少し手前にいる右側の兵が剣を横に薙いでくる。それを長剣で受け止めて、前に出した右足を踏ん張る。そこへ左側からもう一人の郡兵が剣を突き出してきた。アーティスは合わせた剣を腕の力で押し返し、その反動で後ろに下がった。突き出された剣はアーティスの胸の前で空を切り、アーティスはその剣にめがけて、柄頭を叩きつけた。

 

「あうっ!」

 思わぬ方向からの衝撃で、郡兵は剣を取り落とした。体が前のめりになり、勢いのまま数歩進んでしまう。目の前に躍り出た郡兵の後ろ首に、アーティスは再度剣の柄頭を叩き付けた。

「がふっ!」

 上からの攻撃に郡兵はそのまま大地に伏せるように倒れた。どさりという音ととともに砂が舞い上がる。

 

 倒れた郡兵の身体を跨ぐようにして越えると先の兵士が振り上げた剣をアーティスに向かって振り下ろしてきた。咄嗟にアーティスはその剣を左によける。空を切った剣は急激に軌道を変えて、右に逃げたアーティスを追う。アーティスは長剣を下から切り上げて、その剣を弾いた。一旦後退って間合いを取り体勢を整えると、間髪入れずに再び間合い詰め、上段から長剣を振り下ろす。郡兵はその速度に慌てて剣を振り上げ、その青剣を受け止めた。

 が、その後もアーティスが力任せのように上段から剣撃を繰り返す。郡兵は頭の上で剣を構えひたすら受け身を取る。と、一瞬攻撃が止んだ。次の瞬間、剣を上で構えていたためにがら空きになった腹に青いひらめきが一閃した。


「ぐふぅっ!」

 無防備な腹に剣を受けて、郡兵は身体をくの字に曲げながら弾き飛ばされた。白い制服が大地に転がり、そのまま動かなくなる。


 邪魔者が居なくなったところで、アーティスは主塔に入り、内側の階段を駆け上がった。狭い階段を2段飛ばしの勢いで駆け上がっていく。3階まではさほど時間がかからなかった。

 階段が尽きたところに扉があり、アーティスは躊躇せずにその扉を開いた。中に入ると正面に机があり、その前に椅子とテーブルがあった。装飾の少ない質素な感じの部屋だ。だが、そこには人影はない。


 ガタンと奥の部屋から音が聞こえ、アーティスはスタスタとその部屋に入っていく。簡単な寝台があり、それだけの部屋だった。よく見るとその寝台の奥に人影が見える。

「ひぃっ!」

 アーティスが寝台を回り込むと、そこに頭を両手で抱えた女がいた。服装から侍女のようだ。ほかに人はいなさそうだった。


 アーティスは屈み込み、その侍女の顔を覗き込んだ。

「すいません、すいません、お願い、殺さないで」

 侍女は枯らしたような声で懇願した。おそらく緊張で口の中がカラカラなのだろう。


「殺しはせんよ」

 アーティスはゆっくりと優しく声を掛けた。

「郡令官はどこにいる?」

 アーティスの質問に侍女はブンブンと音が聞こえそうなくらい首を横に振った。

「知りません。慌てて出ていかれて・・・」


 チッとアーティスが舌打ちすると、再び侍女が「ひっ!」と小さく悲鳴を上げた。

「黒い服の男も一緒か」

「・・はい、キュリアン様も、ムーマ様も一緒でした」

 侍女の返事で確信を得た。キュリアンはまだ近くにいる。


 そこへなぜかイノが駈け込んで来た。城門を守れと言っておいたはずだが、とアーティスは頭の中で呆れた。

「アーティス! 下に抜け道があるって! どうやらシャリオはそこへ逃げたらしいよ」

 イノが階段を上がった入り口から叫びながら入ってくる。

 その声にアーティスは立ち上がった。イノが寝室の入り口で手招きする。その方へ歩きかけたアーティスはふと歩を止め、侍女の方へ振り返った。

「ここを動くな。しばらく隠れていろ」

 そういい残すと、アーティスは元来た階段をイノと共に下って行った。



戦闘ばっかですが、飽きないでね。


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