第六章 好奇心に負ける
さあ!面白くなってきましたよー!
今までのはほぼ前置きで、書きたかったのはこれからですよ。
暇やなあと思ってる人も、まだもう少しお待ちください。
体育館についたら、2クラスほどが来ていた。
しかし、とても暑い。汗がダラダラと流れてきている。
「どういう状況なんだよ!」
「何が起こってんの?」
みんなから洪水のような質問ぜめにあったが、
「あーっと、落ち着いて、体育館に整列して座って全員揃うまで静かに待ってて」
と言い鍵を開けると、不満を言いながらも案外律儀に整列し始めた。
人には到底考えられない状況に陥ったとき、人は考える事を人に託すようだ。
早速準備を開始することにした。
ステージに飛び乗り、マイクを探す。
ステージの裏方を探すと、よく使うためかすぐに見つかった。
長さ1mほどに縮められた、よくある普通の黒いマイクだ。
マイクと一緒に、スピーカーも置いてあったので、それも一緒にステージの真ん中へと運こぶ。
マイクを自分の口の位置まで伸ばし、マイクのコードの先をスピーカーの穴に一つ一つ差し込んでいく。
「よし、ささった」
マイクの電源を入れ、
「あーあーテステス」
と駅の放送をしている人を意識してダミ声でマイクテストをすると、クスクスという笑いが聞こえてきた。
前をみると、22列、全11組が男女別で並んでいた。集中していると気づかないタチだ。そういえば3年と2年がいない。そういえば、3年は修学旅行、2年は工場見学かなんかだった。
深呼吸をし、緊張をおさえてマイクに口を近づける。
「えーまず事態が起こってから行方不明の方がいたら、学級委員でてきてください」
しーん。次だ。
「えー大人の方おりましたら前に出て来てください」
ざわざわとするが、大人はでてこない。次だ。
「えっと、今の状況を整理しましょう。まず学校がイキナリ海辺にきた。そして大人は誰もいない。
もしくは、集団催眠にかかっているかです。で、集団催眠にかかってるなら集団催眠と気づいた時点で覚めてそうなものなので現実で起きていると仮定して事を進めようと思い—ええっと、どうした?」
あまりにもざわついてるものなので思わず口が先にでた。
「いっちーには聞こえないの?」
と誰かがいったので、なにか音がしないか耳を澄ます。
ズウゥゥン……ズウゥゥン……と、とてつもなく大きなものを下ろした様な音が鳴り響いている。
なぜ今までこんな大きな音に気づかなかったのだろうか。
「動かずに! みなさん待機してくださーい!」
ダメだった。人の好奇心に勝るものなどない。アインシュタインは「大切なのは、疑問を持ち続けることだ。神聖な好奇心を失ってはならない」といったそうだが、この状況下では神聖な好奇心を失って欲しかった。
大勢が走り出し、校庭の逆側にある出入り口のカーテンを開け、数人が仰け反るようにして腰を抜かした。
続いた他の人も、ポカンと口を開けている。
俺も見に行くと、腰を抜かした意味がわかった。
体育館から30mほど先に、かすれたような茶色で、体育館の天井に届きそうなほど高く、尾から頭までは30mあろうかというほど長い体—。
恐竜だ。
これ以上何が起ころうと驚かない自信があったが、体育館と平行に闊歩する恐竜をみてはそんな自信もあっけなく砕かれた。
「わお」
という外国風の感嘆詞しか出てこない。
まるで映画のオープニングだが勿論音楽などは流れず、静かな空間にズウゥゥンという音が鳴り響くだけだ。
我にかえり、窓にへばりつく人たちを元の位置に戻るよう促す。
もしかしたらこの恐竜の大きさは、これからの生活の壮大さを物語っていたのかもしれない。
次話 首相になる(仮)