その涙には成り得ぬ
その涙には成り得ぬ
いくら話を聞こうとも
たとえ、それが
辞典のように
分厚かったとしても
その涙には成り得ぬ
流れ出る意味を
理解したとしても
その感覚は分からないのだ
話を聞き
当たり障りの無い言葉を置き
それ以外に
することは無いのである
何者にも縛られたくないと
願ったなら
周りに何もしないでくれと
言っているに等しいのだ
何かをしたとして
何かをしてくれたと
考えるだろう
思うだろう
どちらにしろ
縛っているのである
そして、縛られているのだ
何もしないことが
縛らないということなのだ
誰も何もしてくれないのなら
自ずと、自分で動くしかなくなる
それが
何者にも縛られないということである
その涙には成り得ぬ
いくら胸の内を晒しても
たとえ、それが
海と空のように
広く深かったとしても
その涙には成り得ぬ
つたい落ちる意味を
理解したとしても
その感覚には成れない
酒を飲み
当たり障りの無い遊びを提供しても
それ以外に
することは無いのである
社会を変えたいと
願ったなら
同じ社会であったことなど無いと
言えてしまうのだ
昨日と今日でも違うのである
ある者は何かを理解し
行動を始めるだろう
ある者は何かをやめて
行動を止めるだろう
話題になると
始める者も居れば
それを見聞し
やめる者も居る
一人一人が作り出す物が
社会であるというのなら
その時点で
同じ社会など無いのである
その涙には成り得ぬ
明日、消えてしまったとしても
たとえ、それが
灯りの無い夜道で
瞬間的に火を持つ状態だとしても
その涙には成り得ぬ
枯れ果てた意味を
理解したとしても
その感覚には乗り移れない
同じでは無い
違う物を
違うだろうと言わず
装うことなど出来ぬ
一つしか無い物だから
それだけは出来ないのである