領主 対 護衛兵
聞き取り調査ではないですが。新たに枠つくる必要もないかと思いまして、放り込みました。
却下。
何度もいうようだけどね、君たちの身体能力は常識外れなんだから。
干物食べて育って、鍛えられても、甥は君たち兄弟に勝てないだろう?
怪魚漁を訓練に組み込もうなんてとんでもない。
聖騎士も近衛騎士も、そこそこの家のお坊ちゃんたちなんだからね。何かあったらうるさい。訓練で腕一本食いちぎられました、なんて笑って済ませられないからね。
男だろうとなんだろうと関係ないから。
複数でやるにも船の問題がある。
地引網? うーん、相当強度のある綱が必要になるよ。長さもね。重くなるよ、かなり。
まあ、どうしてもやりたいならやってごらん。
言っておくけど、実験は君たちの一族でね。
当たり前だろう。
君の言ってることは正論なんだけどね。そこそこに鍛えておけばいいんだよ。あまり力つけさせ過ぎたら警戒されるよ、他国から。
うちの領地だって、王家から相当、警戒されていたんだよ。
だって、君たち、どんなすご腕の密偵相手でも、すぐに見つけてしまうんだから。勘が良すぎるのも困りものなんだよ。知らないふりするようにって何度言っても、大人はともかく子どもたちがねぇ・・・目ざとく気づいちゃ、なにしてんの?ってついて回るし。
そうだよ、君たち兄弟が「なんかこのおっさん変なんだけど~」って言いつけに来てたの、密偵だったり、密輸業者だったり、お尋ね者だったりしたから。
父上は早々と申し開きの書状送って、王家へ恭順の意志を示すために隠居しますとかなんとかいって、さっさと代替わりして逃げ出すし。
そうだよ、先代、死んだんじゃないから。たまに君の家にも遊びに来てただろう、白い髭の生えたおっさんと丸っこいおばさん。あれ、両親。わたしが留学中なのをいいことに、勝手に代替わりなんかしちゃってくれたんだよ。
わたしだって、早くあの子に領主を継がせるつもりだったんだけどなぁ。
継がせばいい? 本気で言ってる?
だよね。君たちの影響を受けすぎて、不安しかない。変なところで図太くなってるし。
聞けば、聖乙女の彼女もどちらかといえば武闘派だっていうし。どちらも頭はいいはずなんだけどねぇ……仲も一向に進展しないみたいだし。
養子でももらおうかな。
嫁? 今更探すの面倒なんだよ。
いや、それはさすがに。どれだけ年齢離れていると思ってるんだい。
精神年齢はあまり変わらない? 君ねぇ。他人事だと思って。君の友だちだろう。
そういう君はどうなんだい?
顔と頭、ね……。
犯罪は駄目だよ。発想が若い娘のものじゃないからね、それ。酔わせてどうこうしようなんて。
妹の許可は出てる?
君たちね……。
とりあえずは正攻法で頑張りなさい。
そうだね、まずは告白でも……違うから。まったく。そこは包み隠しなさい。
普通に好きだとでも言うことだね。
面倒くさいといわれても、その気になってもらうには有効だろう。
ともかく、腕力にものをいわせるのはやめなさい。
えー、じゃないから。君ねぇ、自分の友だちが力づくでどうこうされたらどう思う?
潰す、ね……。
そう思うんだろう? 女だろうが男だろうが同じだから。酔い潰してとか、力づくでとか、下衆のすることだからね。
うん、それでいいんじゃないかい。どうせ彼は技巧派の相手は十分してきただろうから。
いいよ、物理的に押さえつけなければ、押して押しまくって。
ほだされるかもしれないし、諦めてくれるかもしれないし。
そうだね、うまくいったら、君をうちの養女にでもして身分的にも問題なく取り繕えるから。
なんで養女って…え? ……妻の座はいらない? 子どもだけでいいって……。
すべて却下!!
もしそんなことになったら、なにがなんでも手回すよ! 面倒くさいじゃない!
……君のお母さんの耳に入れるよ。
えー、じゃない。君が身ごもったとなれば、わたしが黙ってても耳に入るよ。
わかったなら、諦めて常識的に行動しなさい。
まったく。




