兄 対 兄
「その八 末弟」とほぼ同じ頃の令嬢のオニイサマと護衛兵の兄(多分、次兄くらい?)
舞台は王都。領主様はおそらく甥っ子(聖騎士)訪問中。
あー、誠に申し訳ないのですが、お約束のない方をお通しすることはできません。
へ? ああ、あいつの雇い主殿ですか。
え、なにしれっと通ろうとしてるんですか。駄目ですって。
はい、知ってますよ、あのお嬢さんのアニキっと、オニイサマなんですよね。
いや、駄目ですって。いくらあいつの雇い主殿でも、お嬢さんのオニイサマでも、誰も通すなっていわれてるんで!
金でも食い物でもつれませんから! あいつに殺されますから!
どうしてもっていうんなら、あいつ連れてくればいいでしょうが! あいつならなんなく俺たちを叩きのめせますから軽く強行突破できますよ!
ないです! あいつ相手に見栄も意地もありませんって! やべぇもんはやべぇんですって。
あ? お嬢さんですか? いい方ですよね。うちの息子も弟どももお世話になってます。うまいもん食わしてくれるって大喜びです。
いやあ、領主様もいい嫁さんもらったもんだ。
え? 嫁じゃない? でも、若い男女が一つ屋根の下に暮らしてるんだから、そういうこと……あ、領主様、若くはない、か? 俺とあまり年変わらねぇし……。
あ、ちょっ、なんすか、その鞭は? いや、乗竜用ってそういうんじゃなくて。
やめてくださいよ! 領主様になんかあったら、俺達が殺されるんですから! 雇い主殿になんかあっても殺されるんですから!
止めないわけにはいかんでしょーが!
いや、妹がいるならわかるだろうって、あれとお嬢さんじゃ違う生き物ですから! そういう可能性なんて考えたこともないですから!
領主様もそういう人じゃないですから! 気づかれないうちにじわじわ外堀埋めまくるタイプですから!
なおさらたちが悪いって、いや確かにたち悪いですけど!
ちょっ、もうやめてくださいって!
おい、こら、お前ら、誰かひとっ走り行ってあいつ呼んで来い! 領主様んとこにも連絡な!
息抜きです。どうしようもなく息抜きです。




