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ボクノモノ。

作者: 闇奏 馨

※苦手だと思ったら即座にブラウザを閉じることをお勧めします。

 先日、知り合いが亡くなった。顔見知り程度の関係だったが、親族関係者の様子を見ていると、とても辛いものがあり、僕は久しぶりに号泣してしまった。もし、僕の大切なもの――愛する人が突然この世を去ってしまったとしたら、到底立ち直れないだろうと思う。出来るなら、今という時間を永遠に閉じ込めておきたい。動き続ける時間の中でそれは不可能だということは分かっているのだが、どうしても、時をとめたい。そして、僕は考えた。永遠に、2人で、一緒にいられる方法を。考えついてしまったら行動に起こさずには居られなかった。今すぐ、今、すぐ――。

 それから僕は、彼女を呼び出した。急にお金が手に入ったから晩酌をしようと言って、僕の部屋に招く。彼女がお酒に弱いことはもちろん承知していたので、酔いが回るまで、僕は酒を飲んでいるふりをした。

 そして、その時は訪れる。先程まで喋っていた彼女は、すっかり眠ってしまっていた。僕は、彼女を丁寧に毛布で包み、お姫様抱っこをして車へと載せる。

 あたりはすっかり真っ暗で、気をつけていないと横転しそうな山道を走ると、僕は適当なところで車を止め、一緒にのせていたシャベルで数十分、穴を掘り続けた。夜中の山の寒さは肌に応えたが、今はそれさえも気にならなかった。

 彼女に、「もうすぐひとつになれるからね」と言いながら優しく頭を撫でると、嬉しそうに溶けたような顔をした――ように僕の目には映った。

 それから数時間後、ようやく穴が出来上がった。大人2人がならんで寝っ転がっても大丈夫な程の余裕がある穴。僕はまず、そこに断熱シートを張り巡らせる。次に、ブルーシートを広げ、毛布を敷くと、その上に彼女を寝かせた。ここまで、全く起きる様子は見られない。「ごめんね」と声をかけながら、僕は彼女を包んでいた毛布を開き、少しずつ服を脱がせていく。寒さで彼女が起きてしまうかもしれないと思いながらも、何とか全て脱がせ、また毛布で包んだ。

 さぁ、仕上げだ。僕は念のために買っておいた園芸用の土を数袋開け、取り出すと、ある仕掛けを施し、仕掛けを発動させる丈夫な紐を1本、穴の中へと入れた。ここで僕も全ての服を脱ぎ捨て穴の中に入る。上から別の毛布とビニールシートを被せ、少しずつ土を穴の中へと入れていく。腰――いや、胸の辺りまでは大丈夫かと試行錯誤しながら何とか綺麗に土を被せると、毛布とビニールシートを頭から被り、先程仕掛けた紐を引っ張って完全に土で上を塞いだ。土を被りきったのか分からないのが難点だったが、この際どうでもいい。僕の手には折りたたみ式のナイフと携帯電話が握られている。

 暗闇の中、僕の携帯電話のあかりだけが優しく灯る。土を被せたせいで少し動きずらかったが、少しずつ彼女を包んでいた毛布を外していき、僕は彼女を抱きしめる。

「ごめん、ね、愛、して、るよ。永遠、に、一緒、だから、ね」

土の中なので、酸素が薄く、思ったより早く酸欠になりそうだった。もう、少しなんだ…。途切れそうになる意識を奮い立たせ、僕は必死に僕のソレを慰める。薄暗い中、彼女の表情も少し苦しそうに見えるが、任務遂行までもう少し耐えてと心の中で祈りながら僕はなんとかソレの準備を整えた。彼女の準備を考える余裕もなく、僕は性急に、けれど優しく交わっていく。

 そこで彼女が目を覚ます。さすがに起きるということは僕も承知していたが、彼女は錯乱する様子もなく僕と僕のソレを受け入れる。消え入るような声で、彼女は「愛してくれてありがとう」と言ってくれた。出来ればナイフは使いたくないと思っていた僕は、彼女が暴れなかったことに少しほっとする。ほっとしたら、涙が出てきた。彼女の人生をめちゃくちゃにしてしまったことに今更後悔したが、彼女はそんな僕の心情を知ってか知らずか、私は永遠に貴方のものだから、と、死んでもそばにいる、と言ってくれた。そして僕は泣きながら彼女を抱いた。愛してるとありがとうを交互に呟きながら――。

 数時間後、その穴の中には交わったままの2つの遺体がのこされていた。

 そしてさらに数時間後、この遺体は親族捜索の元発見されたが、2人の幸せそうな表情と死後硬直の関係でそのままその穴の上に墓を立てることになった。


 もし死後の世界があるのならば、彼らは今も2人一緒に過ごしているのだろうか。

どうも。闇に奏でる馨と書いて、くらかな けい というものです。

先日Twitterに投稿したものをそのままコピペしました。即興の思いつき短編です。最初はもうちょっと狂ったものにしようと思ってましたが、主人公が思った以上にいいひとだったので最終的にこんな形になりました。彼女サイドの話も少し書こうかなぁと検討中なのでその時はまた投稿します。

それでは、また。

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