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第九話 デート1

 今日は土曜日、俺は自宅の最寄りから二つ先の駅で四宮さんと待ち合わせをしていた。何の待ち合わせかというと映画鑑賞。本来は四宮さんと野江さんの二人で行くはずだったのだが、野江さんが体調不良でキャンセルしたため俺が代わりで呼ばれた。

 現在の時刻は午前九時四十五分。集合時間は十時なのでまだ来るには早いが、待たせるのは申し訳ないのでこのくらいがちょうどいい。

 駅に来て五分後、四宮さんの姿が見えた。ピンクのTシャツの上にデニムジャケットを羽織り、膝丈まである白スカートを履いている。大人っぽい服装で学校で見る彼女とはまた違う印象を受ける。


「丹波君、待たせてごめんな」

「大丈夫。俺も来たばっかりだから。野江さんの体調はどうなんだ?」

「順調に回復してる。ホンマは完全に治るまで看病したかったんやけど『丹波さんと一緒に楽しんできて』って…」


 どこまで優しいんだ君は。俺も看病…ん゛ん゛ん゛…やはり健康が一番だ。

 いきなり理性がぶっ壊れそうになった。女子と二人で外に出かけることなんて初めてだから正直緊張している。しかも相手が学校でも人気の高い美少女だから尚更だ。


「じゃあ、行くか」

「うん。よろしくお願いな」


 傍から見ればこれデートだよな。でも映画観に行くだけ(と言いつつ財布に万札入れてる)だし…これをデートを言わずに何というんだ。…お出かけ? 違うな。やっぱデートだろ。だよな。ああ! うっせぇ!!


「丹波君、どないしたん?」

「いや、なんでも」


 さっきから俺おかしいぞ。脳内で何人もの俺が激突している。あれだ。緊張しすぎて前頭葉の働きが鈍くなってるんだ。今日はまともに四宮さんの顔を見れそうにない。

 理性を保ちながら歩きはじめてから十分後、目的の映画館に着いた。しっかし映画館に来るなんて何年ぶりだろうな。小学生の時はしょっちゅう行ってたけど、中学生に上がってからはめっきり行かなくなった。だから最低でも四年は経ってる。

 これから上映されるのはミステリー映画。タイトルに『漆黒』とか『闇』とか『虚無』といった中二病を彷彿させるワードがたくさんあったが、内容は至極真面目な映画だった。もう少しマシなタイトルを付けられなかったのだろうか…。


「いやー、おもろかったなぁ」

「そうだな。最後に犯人を追い詰めるシーンは迫力あった」


 映画はこうやって話題ができるから会話に困らない。コミュ力がない俺には助かる。


「丹波君、これからどうする?」


 うーん。このまま帰っても暇だしな…時間は正午を回ったところ。よし、決めた。


「どっか食べに行くか。昼過ぎてるし」

「そやね」


 現在の所持金は一万円。しがない高校生にとっては大金である。これだけあればレストラン…は高校生にはハードルが高すぎる。金銭的には余裕あるけど…。

 歩いている途中でファストフード店が見えたが、男女二人で食事するには地味だ。それに、四宮さんは渡辺さんとファストフード店に行ったとき、油っこいものが苦手だと言っていた。ならばどうする。相手は女子だ。女子が好きそうなものと言えば…。





「わぁ! このケーキ美味しそう!」


 女子が好きなのはやはりスイーツ。カロリーは高いがファストフードとたいして差はないだろう。


「丹波君、このお店知ってたん?」

「つい最近(昨日)知った。来るのは初めてだけどな」

「へぇ~」


 ホントのこと言えるわけがない。この店を選んだのはネットで「スイーツ店 おすすめ」で検索してトップに出てきたからだ。一応評判はチェックしたけどな。

 俺はショートケーキ、四宮さんはモンブランを購入し、イートインスペースにある椅子にそれぞれ腰掛け、円形のテーブルにケーキを置いた。自分から提案しておいてなんだが昼飯にケーキはどうなんだろう…。

 四宮さんはそんなことを一切気にしていないようで、美味しそうにモンブランを食べている。甘党なのだろうか。そして彼女は五分も経たずにモンブランをすべて平らげてしまった。


「早いな。もう食べ終わったのか」

「私、甘いものが好きでついつい…」


 四宮さんは頬を赤くして俯いたが俺は可愛らしいと思った。いつの間にか朝の緊張感はどこかに消えていた。

 スイーツ店を出たのは午後二時。ここで解散するのは早すぎるな。…ん? スマホのバイブが鳴ってる。姉貴の番号だ。俺は嘆息(たんそく)して電話に出る。


「用件は十文字以上、三十文字未満で頼む」

『何、そのノルマ』

「な・に・そ・の・の・る・ま、七文字か、あと二十二文字」

『あんた、今どこにいんの?』


 姉貴には四宮さんと映画館に行くことは伝えていない。さて、何と言おうか。


「書店」

『どこの?』

「駅近」

『帰ってきて』

「なんで」

『買い物行ってきてほしい』

「文字数オーバーだ。切るぞ」


 買い物なんて自分で行けよ。俺をパシリに使うんじゃねぇ。


「さっきの電話。奈々さん?」


 相変わらず勘が鋭いな。だがもう気にしない。


「ああ、それより四宮さん、これからどうする?」

「どうするって…」

「またどっか寄る? 俺はまだ時間があるけど」


 というか休みだからな。時間はあり余る。四宮さんは数秒経って言った。


「私も今日はやることないしもう少し一緒に…」


 それから先は聞こえなかったがデートの延長が決まった。さてと、次はどこへ行こうか。


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