プロローグ
彼女と出会ったのは高校二年生になってすぐの時だった。いや、一年の時も何度か会ってるから初めて会話をしたのはと言った方がいいかもしれない。
その初めての会話は自らの失態によるもので、思い出すたびに心が痛む。まあ俺の自業自得だがな。
和解した後、俺はあることをきっかけに彼女と会話する頻度がだんだんと増えていった。そのおかげか俺のコミュ障も多少改善した…と思う。
それまではアニメオタクの友達としか話していなかったので、結果的にあの出会いはよかったのかもしれない。勘違いのないように言っておくと俺はアニメは観るがオタクというほどではない。どこにでもいる一介の男子高校生だと自負している。
自宅の部屋でそんな思い出に浸っているとスマホのバイブが鳴った。噂をすれば…。
「もしもし」
『翔太? 私や私』
「ワタシワタシ詐欺か。古い手法だな」
『しばくで』
「ごめんなさい。…で、用はなんだ」
『明日一緒にどっか行かへん? どうせ暇やろ?』
どうせとはなんだ。暇なのは事実だが…。
「でも、天気予報じゃ明日雨らしいぞ」
『雨か…』
彼女のトーンの低い声が返ってくる。あ、この会話で分かった人も多いと思うが彼女は関西人だ。どこの出身かは想像にお任せする。ヒントはU○J。
『ほな、来週はどう?』
「来週ねぇ…」
俺は壁に貼ってあるカレンダーを確認する。帰宅部の俺に予定などあるわけがなく書き込みは一切していない。
「分かった。じゃあ来週駅で待ち合わせな」
『OK、約束やで』
そこで電話が切れ俺はベッドに寝ころんだ。…勉強でもするか。
「翔太ー!」
俺がベッドから起き上がって椅子に座ったその時、ドアが思いきり開かれた。姉貴だった。ノックをしろノックを。
「ちょっとお願いがあるんだけど」
「買い物か?」
「おっ、分かってんじゃん」
いつも俺がパシリに使われてるからな。まさに奴隷だ。
俺は重い腰を上げてエコバッグを手に持ち外に出た。来週のプランどうすっかなぁ…。
プロローグなので短めです。