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柔木メイ 4

メイはいつも通り自宅のある施設の玄関を通る。家族用のカードキーで入り口を開ける。入り口の目の前のエレベーターにカードキーをタッチすると自動的に自分達の部屋に着く。エレベーターの扉から部屋の玄関の間に空除室のような空間がありエレベーターが動く音は部屋には届かない。非常時用の脱出ポットのようなものが設置されているが施設の管理人が管理出来るようになっているため勝手に使用はできない。メイはこの玄関と自室以外は何もわからない。完全に管理された施設だ。


メイは部屋に帰ると今日の出来事を思い返していた。楽しくて楽しくて仕方なかったはずなのに帰りには自分のお父さんに会いたくて仕方がなくなっていた。


メイは父親とは年に数えるほどしか会わない。母曰く「ヒーローは忙しいから」。しかしメイはお父さんがテレビや動画サイトで撮影されたものをいつも見られるからそれで満足していた。ヒーローであるカッコいい、強い姿がメイの中のお父さん像だった。そして他の家に初めて遊びに行ったことで初めてそれが普通ではないことがわかった。

でも皆の家のお父さんはヒーローではない。それもわかっていた。ヒーローが大変な仕事であることもわかっていた。

それでもメイは、サヨリとその両親のあのキラキラした家族愛の形が羨ましくて羨ましくて仕方がなかった。自分にはあんな思い出は、なかった。


コウ「あらメイ!お帰り!今日はどうだったの!?楽しかった!?」


メイ「お母さん・・・なんでうちにはお父さん帰らないの?」


コウは一瞬固まってしまったがすぐにいつもの勢いでいつもの言い訳を言ってしまった。


コウ「だってヒーローは忙しいから仕方ないでしょ?」


メイ「だけど私達のことは大事じゃないの!?」


コウはメイが友達の家に行って普通の家庭を見てきた事を悟った。この家は普通じゃない。それをまだ8才の子供に説明するのが難しかった。コウは言葉を詰まらせた。


コウ「・・・」


メイ「私はお父さんとお母さんと弟達と一緒に休日を過ごしたことない!!サヨリちゃんちはハイキングとか海とか遊園地とかいっぱいいっぱい3人で取った写真があった!!!うちにはない!!お父さんの1人で写った写真とお父さんとお母さんの結婚式の写真しかない!!なんで!?なんで!?」


コウ「それは・・・」


メイ「なんでよっ!?私もお父さんに会いたい!!もっと会いたい!!」


「ウワアアアアン!ウワアアアアン!」

一番小さい弟、ライがメイの大きな声で泣き出してしまった。コウは仕方なくライの面倒を見に行った。

メイはその様子を見てまた切なくなり自分の部屋に籠った。


コウ(いつかこんな日が来ると思っていたけど、こんなに早く来るなんて・・・いつも通り言い訳してればメイは納得してくれるなんて・・・そんなわけないでしょう?)


コウはメイの成長の早さを侮っていたことを後悔した。


コウ(ジュウちゃん・・・どうしよっか?)

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