柔木メイ 3
メイは遂にホームパーティーに行った。母コウはいつも通り見送ったが、娘が初めて女の子らしい集まりに行くと思うと嬉しくて不安でなんだか不思議な気分になった。
コウ(あの子も成長したな・・・いつもお姉ちゃんしててそんなこと興味ないかと思ってたけど、いつの間にか・・・)
友達の家
友達「皆今日はありがとう!!楽しんでいってね!!」
この友達は少しお金持ちな少しお嬢様。あくまで少しお金持ち。大金持ちではないけれど可愛い娘の可愛い友達にはおもてなし出来るくらいはお金持ちの子だ。
メイはいつものお母さんの料理も大好きだが、可愛く並べられたおしゃれなコップやおしゃれなお皿、お菓子、スプーン、みたことがないフルーツが沢山のったケーキ、それを見たら気持ちが高ぶって顔が真っ赤になった。テンションが上がりすぎて血が荒ぶるのを感じた。
メイ、皆「わー可愛い!!すごーい!!すごーい!!可愛い!すごーい!わー!なにこれー!!」
皆のテンションアップに友達は大満足。友達の母親もご満悦。前日の苦労が吹き飛んだようだった。
メイは、お菓子に飛び付きそうになったが皆が急にソワソワしたのを察知した。
メイ(うお!!あぶない!!皆このホームパーティーをどうやって過ごすか伺っている!!!!ここで最初にお菓子に手を出したらいつまでからかわれるかわからない!!!!!)
メイは長女だ。弟も多い。回りを見渡して全員の行動を感知するのは得意だ。メイはまだ可愛いとか綺麗とかそういうことにはあまり興味はなかったが女の子グループの怖さはわかっているつもりだった。
そして「ホームパーティー」というあまり経験していない異様な空間。全員の目がギラギラしているのも感じた。
メイ(まずい・・・これはサヨリの罠!!!)
友達=サヨリはホームパーティー主催者である!!
サヨリ(かかったわね!!皆!!!ここでは全てが私のテリトリー!!!マナーとか!あと・・・マナーとか!で優位にたつわ!!)
メイ(どうする!!?食べる!?食べ食べケーキ、食べ)
サヨリ(マナーとかマナーとかうーんそれにしてもこんなケーキ見たことないなー食べ、食べたいなー)
メイ(超うまそう超うまそう超うまそううへへうへへ)
サヨリ(ケーキケーキ甘い甘いケーキ甘い)
メイ、サヨリ(・・・)
二人は見つめあうとなんとなく考えてることが伝わったようだった。さらに回りを見渡すと皆ケーキにしか目がいってなかった。またメイとサヨリが見つめあい、なんだか可笑しくなって笑いあった。
全員「ハハハハハハ!!!食べよー!」
サヨリの母親はこれが美味しいんだこれが美味しいんだって無邪気に話すサヨリを見て微笑ましく思った。女の子同士の争いとか見栄の張り合いのしない様子を見て、これからもそんな子で居て欲しいと思った。
サヨリ「ちなみにこれ誰が作ったと思う?」
メイ「えっ?お菓子屋さんとかケーキ屋さんでしょ?」
サヨリ「フフーン!パパが作ったんだから!」
メイ「パ、パパ?サヨリのお父さんが作ったの!!!???」
サヨリはメイが急に大きな声を出すので少しビックリした。
サヨリ「えっ?ま、まあね」
メイ「えっ?そんなわけないでしょう?サヨリママ嘘だよね?」
サヨリママ「本当なのよ。メイちゃん。」
すると奥のキッチンからサヨリパパが恥ずかしそうに出てきた。
サヨリパパ「サヨリぃ恥ずかしいだろぉ」
サヨリ「だって皆喜んでたからいいでしょ?」
サヨリパパ「それは嬉しいけどね」
メイは固まってしまった。キャッキャウフフしているサヨリ一家はその回りが違う空間になっているかのように輝いて見えた。これが幸せな家族なのかと思った。
さらに何故父親という存在が家に居るのかわからなかった。
メイは隣の友達にもこっそり聞いてしまった。
メイ「サヨリちゃんちってパパが家にいるなんておかしいよね?」
友達「えっ?今日はお休みの日だしうちのパパも家に居るよ?」
メイ「えっ!?」
メイは生まれて初めてわかった。「何故うちのお父さんは家に居たことがないのか?」ということが普通ではないということに