柔木メイ
柔木メイ
メイは優秀ではなかった。得意なこともなかった。いたって普通の子供だった。バカでもなかったし、気を使う子供だった。弟3人を可愛がった
メイの父はヒーローだった。
ヒーローである父はメイの中では「スーパー」ヒーローだった。誰よりも、アンパンチマンよりもスパイダーメンよりも憧れた。メイの父は強かった。雑ノンなんかは可愛がるように駆除した。
メイ「お父さんは誰よりも強いんだよ!!お父さんをバカにする奴は絶対に許さないんだから!!」
メイは小学校でよくケンカをした。お父さんの悪口をいう子もいたから。それは大抵お父さんが大活躍した時だった。ニュースに取り上げられ、それを自慢気に話すメイに嫉妬してしまうからだった。
小学校でお父さんを悪いとか弱いとか、本当に思ってる人なんかそうはいなかった。それほどに愛されたヒーローだった。
しかしメイの父は家には居ない。メイは学校以外は弟達と、ある施設にいた。母親はいつもそこに居て忙しそうにご飯を作ってくれた。
母親の料理は凄かった。何品も何品も何品もテーブルに並ぶ、しかし凄いのはそのスピードだ。メイはいつだって母親を手伝いたかったがスピードが早すぎて追い付かない。テーブルに座っていたら気付くと色んな料理の匂いが混ざって部屋に広がる。それをメイは「瞬間レストラン」と勝手に思っていた。普通の部屋が一瞬でレストランに変わるから。
メイも弟達も母親が大好きだった。父が家に居ない分、母親に愛をもらっていたから。
母は柔木コウ 父は柔木ジュウ。父はジュウ道と名乗るヒーローだった。
父が家に居ないのはヒーローは忙しいから仕方がないと言われていた。この施設はアパートみたいなものだと言われてきた。
メイはずーっと「そんなもんか」と思って生きていた。