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9.露骨?それでも気が付かない

ピンポーン。


ピンポーン、ピンポーン。


呼び鈴が鳴っている。


「んんっ朝……?」


寝ぼけ眼を擦り目覚まし時計を確認するとそこには06:05との表記。ええと24時間表記だから問題ないか。

ええと、母さんは……。そう言えば今家にいなかったんだな。


「ふあ……、誰だよこんな時間に」


姿もわからぬ玄関の覗き穴を見る。

髭面の髪の薄いオッサン……。


「……父さん?」


いや待て、父さんと母さんは離婚していて連絡とかは取り合ってないんだったよな。それもこれも父さんの女癖の悪さが原因であって……。

断りきれない性格だったし、そこあたりはなんとも言えない。

ともあれ、母さんに隠れて会ってた利したこともあったものだ。


「……誰もいないのか?」


いや、こんな時間に来るあんたが悪いと思うよ!?

というかそもそも、あんた海外行くって言ってなかったっけ。


俺は意を決して扉を開く。


「おっす……」

「おー、照史か。母さんは?」

「いないけど」


もしもいたらあんたが今頃くびり殺されてると思うんですが。


「それで、こんな時間に何用?」

「まずはこれ、お土産」


お土産?


「近くのケーキ屋で買ってきたケーキだ」

「それは広義的にはお土産と言わないと思うんだが」

「はは、細かいことはいいだろ。お前も母親に似てきたなぁ」


大雑把なところは父親に似た思うんですけどね。


「んで、本題だ。泊めて」

「さようなら」


扉を閉めた。

父さんが来ると大抵良くないことしか起こらないので全力で拒否する。


「えぇーっ!? 酷くないかな!?」


酷いも何もどうやってここ入ってきたのさ。それも母さんがここにいないことを把握してるのもどうやったんだよ。


「また来たら母さんにチクるからな……!」

「ヒィッ!」


……情けない父親だ。

悲しいけど息子なのよね。


「あ、照史ー?」


ぐむむ、まだいるのか……。

このままいいろちゃんと会うのもややこしくなりそうだ。

そう思い、メモ帳にメールアドレスを書きなぐり、扉を開く。


「メアド。何か用があれば連絡して」

「あ、はい」


メモ帳を渡し、また扉を閉める。

さあて、着替えるか。

一応覗き穴を見てみるがそこに父の姿はなかった。本当に神出鬼没だな。


とりあえず兄貴のために簡単な料理を作り、冷ましておく。ちなみに俺は学食派なので弁当は作らない。だって学食の方が美味しいもん。


「兄貴、朝ごはんリビングに置いておくからな」

「アイヨー」


ほう、珍しい。起きてるのか。


着替えとかとか済ませて料理にラップかけたら終わりっと。


「……行ってきます、っと」


忘れ物がないかを最終確認して家を出た。


「あっ、アキちゃん!」

「いいろちゃん?」


こんなに朝早くから同化したのだろうか。


「アキちゃんと一緒に学校に行きたいなー、なんて」


ふむ、時間も余裕はあるし平気か。


「いいよ」

「やったぁ!」


いいろちゃんが後ろを向いて小さくガッツポーズを取る。そこまで嬉しいのだろうか。

とはいえ、どうせまた学校とバス停がはんたいなのでまた家の方まで戻ることになるから見送りと言うべきだろう。


「それじゃあ行こうか」

「うんっ!」


嬉しそうに返事をしていてこっちまでなんだか嬉しくなってくる。俺も俺で頑張らないといけないな。


「……それにしてもさ、俺っていいろちゃんと会うまでこんなことになるとは思ってもみなかったよ」

「それはいいろもだよ」

「なんて言うかありがとう」

「いいろからも、ありがとうっ」


俺といいろちゃんは他愛もない会話をする。会話自体にあも白身の欠けらも無いが、心地の悪いものでもない。


「両方からありがとうと思い合う、両思いなんちて」

「り、両想いっ!?」


いいろちゃんがぼふんと水蒸気の上がるような幻聴が聞こえそうなくらいに顔を真っ赤にして顔を背けてしまった。ううむ、こんな可愛いのを拝めるのも今のうちかぁ。

いずれ離れてしまうんだろうなぁ。


「う、うにぁぁあああぁぁぁ……」


なにか呻き声のように可愛く声出している。まあ可愛いのでそのまま歩くか。


「おはようございます」

「朝早くからお疲れ様です」


見守り隊と言ったベストを付けたPTAの人が挨拶をしてきたので労いの言葉をかける。うむ、こういうことは気持ちが良いな。

というかまだ小学生の子達も出てきてないのにこの人、早すぎないか!?


軽く衝撃を受けたが気を取り直して小学校の様子を見る。

プレハブが追加されたり体育館とかプールが改装されたり、パッと見ただけでも俺の頃とはかなり変化していることが分かる。


「……さて、早いけどそろそろだね」


周囲はまだ朝早いので誰もおらず、小学校も静けさに包まれている。


「あ、アキちゃん。しゃがんで!」

「……どうしたの?」


俺がしゃがむといいろちゃんが俺の顔を見つめて頬を真っ赤に染める。

羞恥に耐えきれなくなったのかそっぽを向いてしまい、


「や、やっぱりいいよ!」


と拒絶されてしまった。

何がしたかったのやら。


「それじゃあ、行ってらっしゃい」

「アキちゃんも! 行ってらっしゃいっ♪」


校門前で互いに行ってらっしゃいと言い合って別れる。ちょっと名残惜しそうにするいいろちゃんはCOOLで可愛かった。

なんでも可愛いって思えてきちゃう今日この頃。

やだ、これって恋?


なんてね。


さあて、俺も今日の学業でも踏ん張るとしますか。





「ただいまーっと、誰かいる様子は無し、と」


まあ今日は昼上がりだししゃあない。

まだいいろちゃんも来てないようだし鳴流も来ていない。

久々に夜以外で一人になれた時間な気もする。


俺はテレビをつけてリビングの机に突っ伏す。


……。


思っていたよりも静かだ。


…………。


ねむ……。





……。


…………。


んんっ……?


目の前に顔が見える。

それは限りなく俺に近づこうとしている鳴流であって……!?


「……なにやってる、鳴流?」

「☆◇$♪△○〒▲¥!?!?」


鳴流は言葉にならない声を声として出して俺から猛スピードで距離をとる。

えぇ……、俺ってそんなに嫌われてるん?

傷つくわぁ……。


「……俺の近くで何やってたんだよ」

「……なな、ななななんにもやってなあよ! にゃにゃにゃ、にゃははははははははははっ!」


様子がおかしいのは火を見るよりも明らかだ。何をこいつ隠してるんだ?

そんなに俺に教えたくない何かなのか。のけ者は辛いぞぉ。


「……そうだ、俺が当ててやろう。」


一先ずは当てずっぽうで言ってみる。

あんなに顔を近づけていたんだ。

俺が自意識過剰とかでなければありえる気もする。


「俺の顔に落書きでも使用としていたんだろう!」

「……」


なんだか残念そうな顔になった。悪い事言った? それとも罪悪感からの表示でまぐれ当たりか?


「違ったか?」

「そ、そそそ、そそうだよ! 丁度いいキャンバスがあったから何を書こうか考えてたところだったんだぁ〜。あはは!」


妙に早口チックで怪しさを満点だったが追及してもしかないだろう。許してやるか。


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