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8.鈍感?勘違い?

30分くらいパソコンをやっていると突如ノックがかかり呼び出された。

出なくてもよかった、というのも彼女たちに失礼ではあるが兄貴に追い出された。うん、蹴飛ばすのは余計だと思うなあ!


「結構乱暴なんですね、アキちゃんのお兄さん」

「そうだねえ、恭一さんも昔は優しいほうだったけどなんでだろう」


女子二人は俺が蹴飛ばされて追い出されたことに不服な様子。……まあ原因はこの二人なんだけど余計な言及は藪蛇だろう。


「それで、俺を呼びに来たってなら何か決まったんだろ」


はぁー、と溜息をつきながら会議(?)のことを聞き出してみる。


「はい、アキちゃんにやってもらいたいことがあります」

「やってもらいたいこと?」


なんだそれ。

もうこの時点で不穏な空気が漂ってるんだが?


「照史、私達とデートをして!」


……あ、はい。

んな面倒な。


「あー、よろしいでしょうか」


質問が許可されるかわからないがひとまず手を挙げてみる。


「デートの形式はどう言ったもので?」

「それを女性に聞くものか? 照史クン」


うっわ、なんかむかつく。

気取った態度は気に入らないがプランを立てるのくらいは別になんということはないか。まあこうなった責任も俺にあると思うし。


「えっと、いいろは行き当たりばったりでもアキちゃんとなら楽しいですっ!」


きゅんっ。

なんだこの天使。

まあいいろちゃんとのデートはしっかり出来なかったし今度こそちゃんとしたやつをしなくちゃな。


「わっ、私がアキちゃんを靡かせるんですからっ」

「ふふふ、出来るものなやるがいいさ!」


……なんだこいつら。

いいろちゃんは靡かせるとかそんな言葉をどこで覚えてるんだろうか。それに鳴流は何故に高圧的な態度をとるんだよ。


「……なあ、出来れば人の部屋の前で痴話喧嘩するのやめもらえんか?」


あの隙間から兄が目を覗かせて言ったもんで場は凍りついた。そこの少女二人は熱くなりすぎだよな、落ち着け。


「……すまん、兄貴」

「俺にも俺の営みがあるから」


あー、うん。なるほど?


「さて、リビングに行こうな」

「あ、うん」「あ、はい」


素直でよろしい。

ただでさえ気苦労掛けてるのにこれ以上かけたら兄貴のタンクが空になるんじゃなかろうか。

これがストレスになってるのかも分からんが、今度何か奢ってやるか……?


「んで、日程はどうすんの」

「今週の土曜日と日曜日に、私といいろちゃんそれぞれやるからヨロシク!」


いやいや、よろしく言われてもな。

まあ幸い数日あるから計画は適当に立てれそうか。


「こいびっ、恋人ってっ。デートを何回もして絆を深めるんですよっ!!」


いいろちゃんが顔を真っ赤にして力説する。2回目のデートだというのにこんなに顔を真っ赤にしちゃって。天使かよ。まあいい練習にもなるだろうしこっちも張り切らないとな。


まあ、鳴流に関してはいいろちゃんとの変な関係を見て介入してきたみたいな感じだろう。

なんか昔から俺と恋人ごっこをせがんできてたりしてたなぁ懐かしい。毎度断ってたけど根に持っていたのだろうか。


今思うと本気だったのかもしれないと思うけど、今更って感じか。まあ俺が好きなんて物好き早々いないだろうし。

俺の周りの人間が優良物件すぎて紹介したいくらいだ。ただし、兄貴は除く。


「……それじゃあいいろちゃんは直接、鳴流にはLINEで伝えるから」

「私も直接お願い」

「いや、LINEあるしそっちの方が」

「毎日通いつめてやるから」

「……確定事項なのか」

「この装備は呪われている!」


……なんか某RPGみたいな事言ってきやがったんですけど。呪われてるなら仕方が無いか。


「ツッコミ待ちだよ!」

「悪い、事実かと思った」


高校の時とかは重いとか言われて振られてたんだっけ。違う学校だというのに泣きの連絡がよく入ってきていた。

流石に無碍にもできず長話を聞いてやっていたわけなんだが。


「ぐぬぬ、なんだかしてやられたって気がする」


多分、気のせいだ。あと、それを自業自得って言うんだからな?


「あ、そうだ。ひやむぎは片付けておいたから」

「ん、ああ。ありがとう」


そう言えばまだ二、三把は残ってたか。兄貴にでも差し入れておくか。体のいい残飯処理になるが、いい感じに具材を載せればたまにはひやむぎでも食べてくれるだろう。


「アキちゃん、アキちゃん」

「どうしたのいいろちゃん」

「呼んでみただけですっ」


……?

何がしたいんだ?

まあ、からかっているだけだろう。まあ俺なんていいろちゃんと比べると全然身の丈に合わないもんな。

いいろちゃんもいいろちゃんでもっといい人を捕まえてほしいものだ。


「照史、照史っ」

「……何張り合ってんだ」

「ええっ、反応つまらないー」


……なんだその言い草は。

幼馴染のよしみでからかいたいのか。人が小学生に付き合ってるのをからかいおってからに。


「やっぱりダメかぁ……」


小さくため息混じりに可愛い声が聞こえた。


「……ん?」

「ああ、ううん! 何でもないよ!」


いや、何も言ってないんだが。


「というか、そんな可愛い声も出せたんだな」

「か、可愛いっ!?」


大きく仰け反られた。……いやそんなリアクションされたら傷つくんだけど。いや、いいろちゃんもそんな大好物を目の前で食べられたかのような顔で驚いてないでフォローして欲しいなあ。

辛いの……。


「衝撃的だったわ……」


そうか、それほどショックだったか。

……俺に言われるのがダメなら今度から気をつけるわ。


「むぅ……、アキちゃんっ!」


いいろちゃんが背中から飛びついてくる。いや突然なんでびっくりなんだけど。


「……どうしたの?」

「じぃーっ」


振り返った俺の顔をただ物欲しそうな目で見つめてくるいいろちゃん。

外はそこそこ涼しいが部屋の中はエアコンがまともに機能していないこともあってか微妙に暑い。


「……んー、今日も暑いしね。アイスでも買いに行こうか」

「え、ほんとっ!? わぁーいっ! って、違うけど……もういいや」


あれ、読み違えた。

えー?


「照史……」


いつの間にやら我に戻っていたのか、鳴流からは諦めの目で見られている。

あれ、俺なんかやった?


「重症だし重傷よ……お互いにね」


頭にクエスチョンマークを浮かべる俺に二人は答えることはなく、今日という日は非情にも過ぎ去っていくのであった。






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