生という名の病
目が覚めたとき、私には沢山の管が繋がっていた。
そのまま、棺桶の運ぶ手際と良く似た手付きで、ある部屋に運ばれた。葬式と似ていると思ったのは真っ白な天井の中に一人置かされたから。
義妹から、ここが集中治療室と聞いたとき、実際にこんな施設があったのだなと感心した。そして、――生きられるのか? という余念。そんな安易な思考。
夜、麻酔が切れてきた。
看護師が異変に気づき、「痛かったら痛み止使いますか?」と悠長なことを聞く。
目線を合わせることもできず、何度も頭を縦に降った。鎮痛剤が打たれるまで、この痛みが永遠に続くのかさえ思われた。
入院何日目、遠い未来のことを考えていた。
人は必ず死ぬ。なのになぜ生きているのだろうか。
長生きできないうえ、もしできたとしても、そこには母父も義妹は、もう傍にいない。
もしかしたら、顔の知らない親族が何人かいるかもしれない。
地獄のような痛み。
身体を炎で炙るような、何十本と身体に鋲を刺すような痛みに耐えながらも死んでいくのなら……どうしてこの世に生まれなければいけなかったのだろうか。
生まれたからの過ち――命は、病気
病気であるがゆえ、苦しみ、下手したら、あの地獄をもう一度みることになる。
その中で、なにもない世界へ消えていく。瞬間、生きていくことの関心が頭の中で急落下する音がした。
しかし、なぜだろうか……。
置いていく義妹を考えると涙が出た。
こんな絶望の中、痛くても彼女を見捨てるワケにはいかなかった。
そのとき、部屋のドアのひらく音がした。彼女は、涙を見た瞬間、手の荷物が離れて、その両手が私を包んだ。