3:殺意の代償。
挿絵が有ります、苦手な方はお気を付けを。
『到達者』で既にお気づきかと思いますが、そういうことです。
遺体の無い葬式に参列する彼らは何処に手を合わせればいいのかさえも分からずに故人に哀悼す。
「信じられねぇよ… 近藤さん… 」
「俺らこれからどうすればいいんだよ」
「アンタが居たから俺らは… 」
「くよくよするな、今は近藤さんを…」涙のしょっぱさが彼の口を閉じさせる。
「近藤さんを殺した糞野郎を必ず殺して見せます」
「必ず殺して地獄へ送ってやります。だから、地獄で楽しんで下さい」
彼らは自分達が天国へ行けるなど考えてはいない、それは信頼し尊敬する『近藤』なる人物でさえも同じである。
彼らの仕事は地獄へ送られて当然の内容であり、彼らはそれを自覚している。
「…野郎ではない」涙を拭い口を開く「敵は女だ」
驚きは無い、女でも到達者なら化け物だ。
「猫娘、そう呼ばれる女だ」
驚きの声が上がる。
その驚きは短時間で敵が誰なのかつきとめていた事に、そして何よりも…
「猫娘!?」
「あの百回死んでも向かって来たという怪物ですか!?」
「ああそうだ。 当時警備を依頼された近藤さんがその目で見ているので確かだ」
「まさかそれが原因で」
「だろうな」
「先日のイベントの様子をとらえた中継映像にも猫娘が映っていた」
「コスプレの可能性は?」あのクソマンガのせいで、と言葉を曇らせる。
「無い、近藤さんの記憶を覗いた時に見た顔と同じだった」
「同じ顔?」猫娘、それは二十年ほど前の話だ。
「歳をとっていない可能性がある」
「リスポーンではないのですか?」
「分からん」
*
彼女のリスポーンには明確なセーブ機能が無い。
あるのはリスポーン地点の更新のみで、肉体と持ち物は更新地点時と死亡地点時との中間を得たものだ。
だから高価すぎる物は弾かれ、リスポーン地点の更新をすることなく短い時間で殺された場合の二回目以降は持ち物が減って行くのだ。
そしてその減少値の最低限は彼女の見つけた姿の値だ。
因みに、破壊や欠損が修復されるのと記憶の保管が利点ではあるが、失ったまま保管されていたのは皮肉なものである。
では何故少女は少女のままなのか…
話は変わるが主軸はそのまま語るを止めずに続けよう。
一昔前の物語で核廃棄物を食べた蜥蜴が怪物になったり普通の男が超人になったりそんな考えが出ていたのは、政治的な話を抜きにすると、当時核が一般作家達にとっては未知でありつつ膨大なエネルギーを得られる物質であるという認識が一因で『廃棄物なら何かしらが要因で一般人の自分達の生活にも影響するのでは?』という考え方が要因だろうか、時が流れれば核廃棄物は暗黒物質へと移り変わるのだから。
原子炉で発電された電気で生活をし宇宙空間内に有る星で暮らしているのにのんきな話ではあるが、それは置いておこう。
要は理解と認識だ。
此処で私が『第十八』であると語っても理解するのは極僅かであろう、それと似た事だ。
ジョークだがな、それも置いておこう。
私はテーゼだアンチテーゼだの言葉を使いたがるような奴が嫌いだから適当に話を続けさせていただく、『何語なのかも、スペルも分かっていないだろうからカタカナだお(^^♪』なんていう皮肉も聞き飽きているだろうから適当に話させていただく。
要するに、理解と認識は表現に影響し社会は表現により象られているという単純な話がしたいのさ。
更に要約すれば、楽しんだもの勝ちと言うわけさ。
口黙るのが表現ならそれを楽しめばいいのさ、楽しめばいいのさ。
アンディ・ウォーホルやヨーゼフ・ボイスにジャン=ミシェル・バスキア、またはオリンピック選手団にはスポーツ精神を学んでほしいと哲学者を呼んだ昔話、それらに興味が無くても別にいいのさ、他を含め意を踏まえた上でなら。
ドレスコード、知性有ると自ら語るのであるならば必要だろう。
宇宙人は侵略してくるものという野蛮な考えを持ち、星からろくに出てこれないそんな宇宙人と仲良くはしたくないね、私なら。
『利用してやろう』なんて考えは論外だ、美しくない。
『俺は分かってやっている、釣り針は呑み込まずに餌だけ喰えばいい』なんて考えは醜い、自分が無さすぎる口だけ星人の典型例だ。
自分が頭いいとでも思っているのか、人の事を常習的に見下しているのか、真相を読むことは容易いがする気も無いのは時間の無駄だからだ。
そんな輩にも一言助言をするのなら、自己中心的な考え方を捨てて価値観の違いを理解すべきだ、と投げておこう。
『何の利益もないしそんなことしないだろうから、ほんと馬鹿だなアイツ』と考えている輩にはヒント付きで一言添えよう。
井の中の蛙大海を知らず、と。
囚われているのはお頭のせいだ。
利益無くするはずが無かろうて。
君も楽しみたまえよ。
私は古き良きを好むのだ、だから大いなる世界のオマージュをしている。
それを理解するかしないかは君次第だ、それは私にはどうでもよい事だがな。
絵柄が変わってもモチーフは変わらないものだよ、つまりは固定概念さ。
私が一番嫌いな者は知識と唾だけをひけちらかす者だ、次はそのとんだ唾が絵に付いた事を怒鳴り散らす者。
それらは毛を抜いて毛根の抜け具合や太さを並べ比べて満足感を得ている者よりも何も社会に貢献できていない。
醜く歪めるよりも嗤えない。
今こうして本編から離れているようにな。
しかし、あの世界に送ってしまえば私は手出しができないから今のうちに話しておきたいのさ。
それがルールでマナーだからな。
だがこれは私達にとってはゲームなのだよ、もはや多くは語るまいて。
しかしまぁ、糸切れてなお踊るピエロは実に愉快よの。
私の名は【 カク 】、第十八だ。
因みに、彼女の能力は私の名にちなんでみたのだ、お遊びだからな。
*
「猫娘… 、 遠藤だけではなく近藤さんまでも」目が『殺す』と言っている。
「俺達の最後の仕事が敵討ちとはな、俺達らしいな」因果応報である。
「近藤さんをなき者にしたあのテロのおかげで、俺達は廃業決定だからな。 赤字決定、思い切ってやりますか」
「だな」
「何言ってんだ、当たり前だろ」
この街は変革の時を迎え、膿を別の場所へと移す作業をしていた。
反省など無い。
犯罪者が出家しても犯罪者は犯罪者だ。
街人が有識者を選びその有識者が政治家を選ぶ、手間を増やしただけで変わらないどころか悪化している。
火薬をゴムで練っただけだ。
「賢者なんていやしない、地獄に落ちる雑兵魂みせてやろうじゃないか」
「しかし、鉄骨と呼ばれたあの遠藤を木刀とはいえ殴り殺すとは… 化け猫ですね」
彼らは知らないが、猫娘は木刀を体重をかけずに腕の力だけで振るって折っている。
「場所は特定している、元々住んでいた古民家だ。 今は探偵事務所が入っている」
「灯台下暗しを狙ってのつもりだったんですかね」
「それは知らんが、猫娘の父親、一級の研究者が身を護る為に設計し現在では探偵事務所ってだけでも身を隠すには十分すぎるがな」
「確かにそうですね」
「何であろうともやる事は変わらん、行くぞ」
市内夜戦仕様の重装備を着込んだ男達が到達者狩りに向かおうとしていた。
「一応、モバイル奪っといて正解だったっすね」
「 …猫娘」窓から突然の来訪者、仇の登場に意隙を突かれて黙ってしまった彼らの気持ちは分からなくもないが、悪手であった。
「あー、そんな呼び名も有ったな~。 記憶が曖昧でよく覚えてないっすけどね~」
一人死んだ。
「ブランクって空くと大変だって言うじゃないっすか」
何を言っているのか分からない、しかし考えるのは愚策だ。
また一人死んだ。
彼らが弱いのではない、少女が狂っているのだ。
「記憶が戻りだしてから気が付いたのですが、今の私はとても調子がいいのですね!」
少女は銃弾をくらい首を斬った。
< ポーーーン >
<グチャ>
再び窓から飛び入って来た黒猫よりも不吉なその猫に三度仲間の命が奪われた彼らの不幸は続く。
物理的には 1対15 だが、命を失う事の無い少女が相手、修復されるので疲労も無い… 。
そして何よりも…
「なんて力だ!!!」
「まだまだ出るんですよ!」
<ベキッ>男の鎖骨が砕ける。
「何の為に!?」
「アンタ達が私を殺そうとするのが悪いんですよ~」
「お前が近藤さんと遠藤を殺したからだろうが!!!」
「殺してないもんね~」気絶させただけ、彼女はそう認識していたからそう口を開く。
「ぜけてんじゃねぇッぞ糞女がぁッ!!!」舌は回らないのに視線は回る。
力任せの横薙ぎが首をへし折る。
狭い室内、市内戦装備でも取り回しが悪い、仲間に弾が当たってしまうから。
近接生身の木刀少女は瞬く間に間合いへと詰め寄る。
「俺ごとやれ!!!」取り押さえた仲間が叫ぶが、彼は頭が回っていない彼女に死は無い。
麻酔は加減が難しく殺してしまったら意味が無い、銃弾を関節に向け放つ。
< ドシュッ >
<カラン>、と、一度めり込んだ弾丸が押し出され軽い金属音を床で鳴らす。
記憶を読み取ることができる到達者が死に際に見たのは猫娘の曖昧な記憶。
レトロマンガ、赤本や駄菓子屋の紙芝居、ガソリンスタンドの置き去られたコミックス、それらの主人公の様なことが猫娘の身に起きているのだと知り、彼はそれを手土産に皆の待つ地獄へ落ちた。
矛盾を楽しむ妄想に矛盾が生じるのを嫌う思春期の少年心には靄を、雨終わりを俯き待つ腹の虫には歩みを促す春一番を、評価される喜びを知ったばかりの年増には若気の至りを、針を呑んだ幼魚には生け簀を与えよう。
施しとは残酷だ。
自然はそれ以上に… 。
返り血は蒸発しアラームは鳴る、それは彼女の心の高ぶりに呼応するようで彼女は息を整えた。
「帰ろう」
私は誰だろう、私は何なんだろう、そんな考えは少女に無い。
お読みいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いいたします。




