2:百回死んだ猫娘。
挿絵が有ります、苦手な方はお気を付けを。
「いつもより随分早いけど、今日は何処に出かけるの?」柿江さんが靴紐を結んでいる私に声を掛けてきた。
「8丁目であっている【 反三次元同盟 】のイベントに向かおうと思ってます」
「ええっ… 危ないわよ」
「大丈夫です!この子がいるので!」先日の反省を生かして昨日買って届いた相棒だ。
「そう言う事じゃないけれど… ん~、まぁ。 それって剣道部って事で言い訳が通るかしら… ? 」
「大丈夫っすよ! 昨日の夜持って出歩いたけど大丈夫でしたから!」
「それ、不審者よ」
「おお!なら、この街に馴染みますね!」柿江さんのお墨付きをもらえた。
「何も言えないわ… 」
*
十年ほど前、ある同人作家の描いた漫画がSNS上で少し話題になった。
その物語に登場するのは大勢の悪党とその悪党たちに両親を殺された悲運な少女とその少女の友達で同い年の男の子。
ストーリーとしては少女が手先の器用な友達の男の子に協力をしてもらいつつ悪党どもに仕返しをして行くといったもので在り来たりな内容だった。
ただ絵が上手かった事、それとラッキースケベ展開が一部のユーザーにウケて話題に上がったそうだ。
因みに、何故か少女はスクール水着にニーソックス姿で鞘も鍔も柄も無い剥き身の日本刀を携えていた。
十年、十年も経てばそんな同人作家の漫画の事など読んでいた人々でさえも忘れてしまう。
十年も経てば、いや、十年も努力し続けそして才能が有れば同人作家も商業作家の仲間入りを出来てしまう。
十年は長いのだ、十八年はもっと長い。
「十年以上ずっとファンです!初期の【 リスポーンガール 】も読んでました!スク水ニーソ最高です!!!」
汗でなのか彼の熱気でなのかショート寸前の眼鏡型のモバイルPCが<パシッパシッ>と画像を点滅させて彼の言葉を詰まらせる。
「ほ、はかにも、、、あ… えっとその… んんん!!!……… 」結局いつもの喋り方になってしまい落ち込みと焦りで貴重な時間を無駄にしている彼の頬を流れるのは汗ではないだろう。
「大丈夫ですよ。 私に言う為だけに台詞まで書いていただいて、貴方の貴重なお時間をこうして私に費やしていただけてとても嬉しいです。」ファンサービスだろう。
しかしそれでも美人の笑顔には長蛇の列に並ぶだけの、緊張して喋れなくなる事を後悔しないように台詞を一週間考え込むだけの、緊張して一晩寝ずに過ごして休めなくても気にならないだけの価値と癒しがある。
だがしかし彼がその癒しの時間を堪能できたのは一瞬の事だった。
「時間でーす、次の方へお譲りくださーい」剥がされた、凄い力だ。
だが彼に痛みと悔いは無い。
「あー、疲れた。 何で34歳のおばさん漫画家のサイン会で3時間半も並べるのよ」ストローでペットボトルの水をブクブクと鳴らしブツブツと文句を垂れ椅子にもたれ掛かっているのは先程の美人だ。
「それだけ枢木先生が人気って事ですよ」
「独身の小綺麗なおばさん漫画家なら俺でも、って思われてんでしょどうせ」34歳独身漫画家、出会いの場も少なくなって同期達が結婚して行く中で、同人作家として活動していた分色々と出遅れたこともあって、卑屈になってしまっている彼女を包んで受け止める人物の登場を祈る事しかできない彼女のマネージャーが一番可哀想だ。
「そんな事ないですよー」何故ならば彼女の機嫌を損ねないような対応をとり続けなければならないから。
「声に感情がこもってないわよ… 私なんかどうせ… 」めんどくさい、こじらせた表現師の相手は本当に面倒くさい。
「大丈夫ですって、ほら!あの子を見て下さいよ!」マネージャー、担当編集者と改めておこう、編集者としての経験の長い彼女には目と判断力が有る。
「え?何?どの子?」先ほど見かけてもしもの時の為、モチベーションアップの起爆剤として目を付けていた少女を指さす。
「あの子です! たぶん15~6歳って所だと思うんですけど、先生の初期作品、同人作家時代のリスポーンガールの主人公のコスプレをしていますよ!物凄いファンなんですよきっと!」先程の男性ファンとは違い同性で、しかもリアルタイムで投稿されていたのを読んでいたわけではない若い子がその過去作品を読み込んでコスプレをしてきているとなったら嬉しいはずだ。
「いやアレはうちの女子高の制服だし… 」駄目だった。
「ああ、確かに髪の毛も藍色のポニーテールですけど、ロングですしリボンの付いたのヘアピンも付けていますし、少し違いますね」こういう時は同調しておこう、彼女はそう決めている。
「え??? どの子?」急に椅子から立ち上がったこじらせ独身漫画家に彼女は目を丸くする。
(自分のデザインを変えられて怒ったのかな???)このこじらせ独身漫画家はそれで怒る様な人間ではない、いくらこじらせていると言ってもそこまでではない。
だが、担当編集者がそう思ってしまうほど動揺を露にし目を見開いていた。
「あ、あの子です… 運営ブース前のあの子です」
*
「ウガ―!人多い―ッ!」人が多いだけ、だが、これが全員同族同志だと思うと気持ちが高揚してくる。
【 反三次元同盟と愉快な仲間達による大型物販イベント 951年 春ノ陣 】
通称:反三快春
二次元の世界で愛するキャラクター達と共に生活出来る事を目指して発足された反三次元同盟が主催で年に二回行っているこの街の二大名物祭りの一つと言われているが、アニメやゲームマンガなどの文化に関わりの無い人々には無縁の祭りという印象が強く名前は知っていても行った事は無いという人が大半である。
ただ、この街に住んでいるのならば、一度は行ってみるべきイベントである。
これが生活の一部であり、文化であるということを実感でき共感できる場であるから。
記憶の無い彼女にとって漫画はこの街の文化を教えてくれた教科書であり、ゲームは家に居ながら友達を作れるリハビリの場であった。
勿論、頼れる大人たちが見守っている中でだったからその効果があった訳であり、薬は強めれば、いや、強めなくとも薬は毒になりうるのだ。
現に、薬なしには生活の成り立たない者は多い。
「今期のリストカット独りで鬱ルワは良作でしたなー、精神疾患の社会風刺が効いておりましたぞ」
「作画崩壊してたよ」
「あれは通常運転」
「ハハハハハ、初代こそ至高」
(うわー、個性的なのにべたっすねー)
声には出さない、それがマナーだ。
「お静かにお願いしまーす。いくら喋りかけても二次元の女の子は振り向いてはくれませーん。そのことはすでに我々が確認しておりまーす」お静かにお願いしまーす、とお兄さんは繰り返す。
並ぶときは静かにしておくのが此処でのマナー、皆疲れているから。
(よく逸れなかったっすねあの人達)
彼女はこの長蛇の列に並んでいるわけではない、そもそも相棒の購入で資金が無いので買えないからどの列にも並べない。
でも体力温存の為に黙っておくのだ、これから彼女は疲れることになるから。
「おーい!こっちこっち! 来てくれてありがとう【 猫娘 】ちゃん、助かるよ!」
室内会場の端、壁に背を向け少女を手招きするモーニングコート姿の覆面男性の声が弾む。
「マジで助かるよ!ありがとう!」駆け寄って来た少女と言葉を重ねた。
「いえいえっすよ!こちらこそありがとうございますです!」【 猫娘 】、ゲームのオンラインIDで呼ばれるのも今日で三回目だなー、とでも言いたげにむず痒そうに頬を緩めた彼女の声は緊張からか少し硬い。
「ごめんね。明日の予定だったのに今日も来てもらっちゃって」名札を渡しつつブース内へと少女を招き入れる。
「大丈夫っす!風邪なら仕方がないっすよ!」皆が自分と違い死んでも風邪を治せない事を知っているので、『大変なんだろうなー』と彼女は思っていた。
「本人はどうしても来たかったみたいだけど、電車の熱探知に引っかかったみたいなんだよね」だから当日の朝にいきなり呼び出しが有った訳だ。
「これだけ人が多ければ仕方がないっすよね。何かヤバいものだったときに一気に感染が広がってしまうかもっすもんね」
「とくに今年は多いからな。色々と気を張っているのかもしれないね」
「へー、そうなんすね」
「950年末の節目を記念したお祭りが大陥没で中止になってたからさ、軍資金が多かったり他のイベントが無くなってそれで行き場の無くなったらやる気をこっちに向けてきているらしい」
「ほへー」
「新垣さんサイン待ちの人が並んでいますよ!!!」
「お!いっけね! じゃあよろしくね!報酬は弾むからさ!!!」
「ハイっす!」やること自体は明日と同じ、二回目のオフ会で説明は受けているので大丈夫だ、と少女は深呼吸をする。
彼女がちゃんとした仕事をするのは今回が初めてになる。
待たされている事への文句が出なかったのは、渡された名札を見てニマニマしている少女の姿を見て列に並ぶ者達が心を癒されていたからなのかもしれない。
無垢な笑顔を浮かべる少女が受付をしているこのサークルが出しているのは今では珍しい紙の出版物だ、しかも全ページカラーの薄めの本。
古書などはアンティークとして重宝されているが、このような薄めの本は珍しく、他のサークルではコピー防止機能を付けたメモリーに作品情報を記録したものや、多機能端末のカメラの読み取り機能でストーリー情報を読み取れるフィギュアなどが販売されている。
「お、紙だ珍しい」
「サイン貰えるらしいからそのためじゃないかな」
「あのゲームのストーリーを書いた人がやってるらしい。ガイドに書いてあった」
そういう中でこういった紙の本は目立って良い。
「懐かしいなぁ」オジサン世代にとっては思い入れのある品じゃなくとも観賞に浸れる一品となっている。
しかし、古民家に住み古書に囲まれた生活をしている彼女には作家をしている友人の書いた薄めの本という印象しかない。
(面白いのかなこれ)
少女のそんな純粋な疑問はさておき、他者の恋愛状態や関係性をステータス異常として診ることのできる青年の主人公がシッチャカメッチャカハチャメチャするハーレム系ラブコメディーのマンガが描かれた薄めの本もさておき、これからここにこの街で起こったある事件についての昔話を書き記そうとおもう。
話が唐突だという意見と私が誰なのかと言う疑問も置いててほしい。
何故今話すのか、それは此処にこの会場に当時の役者たちが揃っているからだ。
事の始まりは二十年ほど前
単機で1600℃の高温にも耐えられ酸素と触れる事が無い限り爆発的な事故は起こらないHUP4.5Sと呼ばれる従来型と比べて超小型化された原子力発電システムが開発された。
その発電能力は単機で100万人都市+αを優に賄えるほどだ。
維持費用の少ない他の街や国に頼らない純街産のエネルギー資源としてそれは目を付けられた。
ただ、稼働可能年数は二十年から三十年間、更に、処理方法は決まっていなかった。
なによりも、小型だからと街中で使おうとする者達が出て来た事が問題であった。
「原子力発電を街に置く事は将来への投資である。核武装という選択肢を残し相手に見えない手札を悟らせるのは外交上重要な事である」
「切り札は別にある。これは街の暮らしをより豊かにする為に重要なことなのだよ、理解したまえ」
「理論上問題ないのであるのならば、いつまでも計算機の中に閉じ込めておかずに採用すべきであろう、それでなければその発明品が可哀想ではないか」
「2~30年もあればいずれ新たな技術が発明され処理できるようになる。その研究費用を生み出す為にも今すぐにでも作るべきだ」
「街に置けば警備負担が減り監視の目も厚くできる。様々な面で見ても街中に在った方がコストパフォーマンス良いのは明白、そもそも街中に置かなければ小型化した意味が無いのではないのかね」
開発所の責任者は断固として首を縦には振らなかった。
「残念だよ。 我々は横でも斜めでもない、君の首が縦に動く姿が見たかったものだ。 ましてや落ちる首など見たくは無かったぞ私はな」
心落とさず首落とす。
哀れなのはこの責任者の家族にまでその毒牙が及んだことだ。
更に哀れなのは、十五にも満たない一人娘だけが生き残ってしまった事だ。
いや、生き返ったと言うべきかな。
彼女の場合は…
「や、やめように猫三ちゃん… 無茶だよぉ… 」
猫寝 琥猫、『ねこ』が三つで猫三ちゃん。
そんな呼ばれ方をする少女は可憐な容姿をしていた、が。
「此処まで付き合ってくれてありがとう。 私行くよ」その可憐な容姿は憎しみと恨みで歪み、少女の親友でさえも目の前に居るのが本当に自分の知る少女なのかと胸を痛める程であった。
「 」少女の親友【 枢木 凛 】は何も言えなかった、死んで蘇る度に少女が別人になり遠のいて行っているような気がして、引き留める声をかけるには遅すぎたと後悔した。
百回死んだ猫娘、殺しても殺しても湧き出て来るその少女は少なくとも百回は死んだはずなのにまだ向かって来る。
剥き身の日本刀を突き立てて向かって来る。
「クソがぁぁ!!!」
「何か欠点は無いのか!!!」
彼女のリスポーンには大きな二つの欠点がある。
一つは短い時間で多く死にリスポーンすると所持品と装備品を失うということ、だが、所持品や装備品があまりにも少なければその対象から外される。
高価な物から無くなるが、基本はランダムだ。
次に、あまりにも高価過ぎる物はたとえ一回目でも死んだら失ってしまう事だな、まあそもそも蘇れるだけで十分だが。
そして高価な物かどうかの判断基準は細工の細かさだ。
だからお金や機械が先に無くなる、それと手間を掛けて描かれた絵画や彫刻品も。
故に少女は単純な造りであり一枚布繋ぎの学校指定水着を着て足の裏を護りつつ露出を抑える為に厚手のニーソックスに足を通し剥き身の日本刀を携えた。
銃やレーザーウィップは失った。
だから彼女は家の蔵に眠っていた日本刀の高価そうな鞘と柄と鍔をぶっ壊し手に取った。
「猫娘のリスポーン地点はどうやって更新されてやがる!!!」
「早く調べろ!!!」
しかし、復讐の歩みを半ばに少女の意識は失われる。
「殺さず眠らせればよいのですよ」
「ウへへへ、この娘を眠らせたのは俺だから俺が貰っていいんだよな」
「この猫娘をそこらへんの女子供と一緒にしないでいただけますか、貴方よりも利用価値の高い到達者なのですよ」
「あ"あ"あ"ッ!?んだとテメェ!!!俺は男を犯す趣味はねえがテメエは眠らせてお< ドンッ >
<カランカラン>
「汚い口を閉じなさい、貴方の口には貴方の汚いホットドッグと鉛弾がお似合いですよ」
「ハハハハハ、顎を失った者に口を閉じろとは、なかなかですな」
「顎どころか全部失ってますがね。 いやしかし、こ奴が死んだ事でこの猫娘が扱い易くなりましたな」
生命維持装置に繋がれた少女はその箱の中で歳を重ねた、生きてきたよりも長い年数意識を失っていた事で記憶を失い少女は白紙へ。
彼女が18年間眠ていた箱に電力を送っていたのは彼女の隣に置かれた超小型の原子力発電機、18年もの時の流れにより原子力発電機は彼女の物だと認識された。
彼女の親が開発し彼女はそれを取り戻そうとしたその気持ちが追い風となったのもあるだろうがな。
「結局、リスポーン地点の更新方法は分らずじまいでしたな」
「まあよい。証拠ごと消えてもらうのだからな」
「愚かな家族だ。 私の言った通り新たな技術が開発され電力にも処理方法にも困らなかったぞ」
「処理方法は彼女の死ですがね」
「生き返るのだからよいではないか」
「ですね。 しかし彼女を消すついでに大陥没を起こし開拓をしやすくする考えも素晴らしいですね」
「朝5時がいい塩梅でしょうな、出勤せずに寝ておるでしょう」
「朝食の準備で油を使っていた家庭が有りそこが火元で火災が発生し陥没した地形が釜となり焼死、という感じでしょうな」
「いいですな、ゴミは焼却処分に限りますぞ」
「これでスッキリしますな」
私はこいつらのような奴が嫌いだ。
「あの女漫画家とあの団体は一緒に消してしまいましょう」
「生活の出来る二次元世界の構築とキャラクターの著作権の購入、それと維持費用の確保とか言って我々が得るはずの金を… よくもまあ蠅ごときが」
「超極小のブラックホールを己の自殺を対価に発生させる到達者が居たはずだな」
「ええ」
「ハハハハハ」
頭ごなし腹ごなし、急展開を呑み込んでもたれたお腹を癒しつつ話はまだまだ続く。
「ウガ~、、、人多すぎでしょ」
『コスプレでも護身用でも木刀などの持ち込みは禁止されています』そんな当たり前な事を言われ没収された相棒を迎えに行く少女の足取りは重い。
「疲れた」初仕事を終え疲労困憊の少女に近づく足音が一つ、人込みをかき分け迫っていた。
「 猫三ちゃん!!! 」
少女は気付かない、そんな愛称を憶えていないから。
「え?」
なぜ振り向いたのかは少女にも分からなかった。
「猫三ちゃん… 」
泣きつき膝から崩れるオバサンに何と声をかければよいのか分からないまま手を貸し支える少女の頬を何かがつたう。
「クルルちゃん… ? 」
< ドヒゥッ >
< ポーーーン > <カツン>
「うおっ!ビックリした!!! ああぁ… 」ソファーに座っていたら急に隣に少女が現れたのだ、コーヒー牛乳を溢しても無理はない。
「何故リスポーンしてきたんだ?何があった???」コーヒーを机に置き駆け寄るオジサンの顔には心配の色が浮かんでいた。
「イベントに行ってたんじゃないの???」イベントで何かがあったんじゃないのかと心配して少女に駆け寄るは大人の女性だ。
「 」
「ど、どうした?」
『 …えー、ただいま衝撃的は情報が飛び込んでまいりました』夕暮れになり営業時間終了間際で来客者も見込めないから、そして帰ってくる少女の為に、ソファーから見やすいように定位置から動かされた三次元映像情報受信投影機に映し出されたニュースキャスターが驚き戸惑いつつも落ち着いて話を続ける。
『【 反三次元同盟と愉快な仲間達による大型物販イベント 951年 春ノ陣 】通称、反三快春と呼ばれるイベントで今日、つい先ほど大規模な消失が起きました。繰り返します…』
「これってキティーちゃんが行っていたやつよね…」
「 …951年 」
『人気漫画家の枢木 凛さんら多くの著名人を含め十数万人規模の死傷者が出ているとの情報もありますが、詳しい情報が入り次第随時お知らせしたいと思います』
「キティー、大丈夫か… ? 」
「951年」
「どうした… ? 」
「18年間、私を眠らせていたのは誰だ?」
取り戻し始めた彼女の記憶が恨みを熟れさせ実を落とす。
曖昧に、曖昧なら曖昧なままで、無いままで始まった生活なら無いままでありたい。
I Want to Die.
やり直しはきかない、恨みと新たに得られた平穏が彼女を焦がす。
お読みいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いいたします。




