1:The Girl is Old 16.
始めましての方もそうでない方もよろしくお願いいたします。
挿絵が有ります、苦手な方はお気を付けを。
18年間は長い、少女が大人の階段に足を掛けるよりも長い。
「キャァァァッーーーー!!!」金切り声が日陰に木霊す。
日陰と言っても此処は路地裏、人間社会の日陰だ。
「だ、誰か居ないの!?助けて!!!」人は居るだろうが、この日陰に居るのは人と名の付く獣だけだ。
「そんなに走ると俺を楽しませられなくなるぞぉ~!!!」獣だ、獲物を追い立て追い詰める事に悦を感じている獣だ。
「待てよぉ~、俺のウサギちゃぁ~ん」女性を獲物だと、物だと思っている獣だ。
「痛いっ!」長らく道路整備の入っていない路地裏の質の悪い石畳が女性の逃げ足を挫く。
絶望に染まる女性の顔に喜びを見出しているこの肥った獣は、贅肉が内から圧迫する容量の少ないポケットに前足を突っ込み入れて鉄の牙を取り出し女性に突き立てようと迫った。
< ポーーーン >
コンピューターゲームが一般に普及し始めた一世代前、いや、今からすれば逆に新しさを感じる若者が出て来る一昔前、その一昔前の家庭向けコンピューターゲームの様に八和音で奏でられたピンボールの弾むような音色が路地裏に響き渡る。
<カツン>、と、実体の有る乾いた物同しがぶつかり合った高く乾いた音が人工的な音色の直後に鳴った。
薄暗い路地裏にぼんやりと浮かび上がったのは女の影、輪郭が明瞭ではないこの路地裏ではっきり『女』だと分かるボディーラインのその影の手には先程の乾いた音を出した長物が握られていた。
木刀、土産屋で売ってあるようなチープなものではなく紫黒檀や縞黒檀といった硬度の高い木材で作られているであろう木刀、音がその事を教えてくれた。
「何だテメー!!!この俺様に歯向かおうってぇーのかぁ!!!アアンッ!!!」木刀を持った者がこれから女を襲おうという時に割って入って現れたのだ。
たとえそれが女であったとしても獣がその女を敵と認識するには十分であった。
普通は突然現れた事に驚いたりするものだが、獣は目の前の事を処理するので手一杯なようだ。
それは救いの手を求めているこの女性も同じだったようで、この女性は得体の知れない女の影に縋り寄った。
「助けてください!!!」この女性からすれば武器を持った同性というだけで味方であり、突然目の前に現れたその演出はまさにヒーローの登場であった。
しかし、
「え!?ムリムリムリ!!! 私普通の女の子だもん」
「フハハハハハ!!!つまり俺の楽しみが増えたわけだなこりゃ!!!」声色と言がこの女の影の正体を曝け出す。
少女だ、美しく潤いのある声を持った大人への階段に足を掛けているかどうかという頃合いの少女。
獣は生唾を呑む、少女の顔が見え上玉だと生唾を呑む。
「そ、そんな! 木刀を持っているじゃない!!!」少女だと分かり強気に出るこの女性は少女を時間稼ぎに使い逃げる算段を立て始める。
この女性もまた獣同様路地裏の住人なのだ。
「おお、ああー、そういやこの前も持ち出してたな~コレ~」ブンブン、と、音は鳴っていないが木刀を振り回す、本人の言っていたように本当に普通女の子のようだ。
「此処は何処だったっけぇー?」危機感の無さも路地裏の住人とは違う、普通… の…… より少し間の抜けた女の子だ。
辺りをきょろきょろと見渡すその様は隙だらけだ。
「頭わいてんのかテメー」危機感の無さから恐怖を感じていないこの少女に少しの苛立ちと冷めた視線を向ける。
しかし少女は呆けている。
「(今だ!)」女性が獣の隙を見て再び足を回して逃げ出す。
獣は嗤う、有害薬物の常習的な使用が窺い知れる不揃いの黄ばんだ前歯を外気に晒し嗤う。
「待てよぉ~!!!フハハハハハ!!!」嬉々として再び足を前に出す。
そして鉄の牙を持った前足も前に。
「うぼッ!?」のどに刺さり入り込み気道を塞がれた事で美しく潤いのある声が鮮血に淀む。
獣は適当に前に出した牙が喉に入った事を気にする様子も無く倒れ込む少女に見向きもしないで女性の後を追う。
少女が死んでいたとしても獣はそれを愉しめるから。
< ポーーーン > <カツン>
誰も居なくなった路地裏に再び二つの音が鳴り、響き渡る。
「もう居ないよね? 一応警察には連絡しておこっかなぁ~っと」上着のポケット手を突っ込みバサバサと揺らし、スカートのポケットに手を突っ込みバタバタと揺らし、背負っていたリュックサックを手に取ったところで少女は気付く。
「かるッ!!!」背負っている時点で気付かなかったのだろうか、やはり少し間が抜けている。
「ウガァーーーー!!! 短時間に二回もリスポーンしたせいで荷物がほとんど無くなってる……… ぁあ、でも何入れてたか分かんないからいいや!アハハッハハハッ……… スマホと財布また買わなきゃだねぇ~……… はぁぁぁ……… 」
路地裏の独り言、女性への心配、獣から受けた牙、警察への通報も忘れた少女は独り家路を急ぐ。
「鍵無いからオジサン達が居なくなったら家に入れなくなっちゃうーーーーー!!!」
この少女の名誉の為に、いや、ついでに、一つ言っておくとこの路地裏には警察は来ない。
この路地裏はそういう場所であり、この街の警察はそういうものであり、娼婦とチンピラとのいざこざの扱いなどこんなものなのだ。
だからこの街で生きていく為に重要な事は『忘れる』を無理にでもする事だ。
しかし、この少女は忘れ過ぎている。
だからこそ、彼らはこの少女に手を貸す事を決めたのだろう。
これは一人の少女と、そして偶然にも家を共にした探偵事務所の面々との不思議で危険な日常の物語だ。
RESPAWN GIRL 18 OLD
努力して掴み取ったモノには価値が有り美しい、そういう価値観だからこそ誰しもが輝ける可能性を見出すことが出来る。
この街であってもその価値観の輝きと人格が損なわれる事は無い。が、身を護る事は出来ない。
奪われたものは取り戻せないのだ。
時間と命はなおのこと。
本来ならな。
「ふぅー」
コーヒーと古本の匂いが心地良いこの事務所には微睡の鼠が住んでいる。
元が古民家だから余計に鼠が出て来て耳を齧るのかもしれない、日常の雑音が遠のいて行き俺もこの心地良い空間の一部となって微睡の中へ溶け込む。
「ただいまーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
少女が勢い良く玄関の扉を開けて事務所に入って来るなり<ボスッ>と手に持った木刀を傘入れに突っ込み入れ、流れる様に元はリビングであった応接間のソファーに寝転がる。
猫が来た、子猫ちゃんが帰ってきた。
「 ………おかえり」だが、この子猫ちゃんは三つ前の住人だ。
俺が代表を務める俺の苗字を冠した【 西口探偵事務所 】の夜警備員として事務所への出入りを許可している。
勿論ながらこんな可愛い子猫ちゃんに戦闘能力など無く、しかもキャー二ャー五月蠅い子猫ちゃんなのに夜遅くまで起きている事もほぼ無い。
無料でどころか給料を渡したうえに寝泊まりを許している状態である。
「おかえりなさい。 キティーちゃん、それ三日前の服じゃない?」彼女は山口 柿江、書類整理や受付を任せている人当たりの良い大人の女性だ。
「いやー、そうっすよねー。 しかも、連続で二回も死んじゃったせいでスマホも財布も無くなっちゃいましたよ」物騒な話だ。
(『しかも』の使い方が微妙におかしい)口には出さないが。
この子猫ちゃんの話の振り方は唐突でおじさんにはついて行けない。
だから黙っておくのだ。
「何言ってんだ、死ぬかもしれないからってスマホも財布も置いて出ていったじゃないか。 連絡できなくて焦ったぞ」彼は原口 酉彦、潜入調査や証拠の撮影を任せている地味で味気の無い男だ。
「おお!私のスマホちゃーん!お財布ちゃーん!」
「いい加減スマホとか止めたらどうだ。 古いから修理にも御金が掛かるだろう」アンティークとは言えないカジュアルモダンとも言えない中途半端な物の管理が一番面倒くさいのだ。
家も建物も同じで打ちっ放しが一番手入れが面倒だと俺は思っている、一度ヒビが入れば総崩れだから… だったから… 。
あれは辛かった… 、だから今のこの事務所は木造の古民家なのだ。
「買うのにもお金かかりますよ。 それにエクステンド イン エンター PCとか痛そうですもん」埋め込む場所には麻酔をするのでレーシック手術と何ら変わりない。
子猫ちゃんは中身が古い、利便性を受け入れつつも微かな虞で一歩を踏み出せないおじさんの様だ。
その子猫ちゃんよりも俺はおじさん… 。
「まあ、そんな難しい顔しないで気楽にいきましょう」新たに注がれたコーヒーの香が眉間のしわを浅くする。
「ありがとう」柿江さんの淹れるコーヒーは旨い。
このコーヒーを今日の仕事の締めとしよう。
「 ………で、今日は何か情報は得られたのか?」子猫ちゃんに言葉を掛けて一口含む。
「ぜんぜーん、目が合った瞬間に撃たれました」ソファーに寝そべりスマホをいじりながら返された。
画面にのめり込む、画面に噛り付く、そんな言葉がお似合いだ。
今ではなかなか使わない言葉だ。
「よくそんなヤバい所に入って行ったな、アホか… 」(お前は人の事を言えない)が、しかし原口はプロなので言う資格がある。
「アホじゃないっすよ!」自覚無しだ。
「しっかしー、私と目が合って顔を見たのに撃って来たので私の事はしらなかったってことっすよね~、はぁ、死に損ですよ」
死んだ本人が死に損と言うおかしな状況に思わず鼻を鳴らしてしまう。
この街は異質で特異、こんな少女が居ても不思議ではないのだ。
この街の中ならな。
「顔を見られたのなら、気を付けろよ」俺達三人は家に帰るので子猫ちゃん1人がこの事務所に残ることになる。
此処は他の探偵事務所と比べて警備は少し緩めだ。
「大丈夫っすよー、私此処に住んでたんですから」事実だ。
しかし、
「記憶無いのによく言うわ」原口の言う通りだ。
それに、
「住んでいたからといって大丈夫とはならんだろう」大丈夫の根拠にはならない。
「うぅッ… !!! こ!これからパジャマに着替えるんですからいったいった!!!」
「うおぁ!」凄い力で押されている。
若いって少し怖い。
「はぁ…」リビングを追い出されてコーヒーカップの置き場に困ったのでコーヒーを含む。
(こんな事が前にもあったな、懐かしい)と、成人する前に夢を追い家を出て行った娘との思い出に浸りながらコーヒーを含む。
構造上、間取り的に、リビングダイニングと玄関と一階空きスペースの壁を取り払い繋げた結果、二階階段へと延びるだけとなってしまったこの廊下は薄暗い。
なので少し怖い。
「社長、あの子大丈夫ですかね?」
「これからが心配ですよね」
「ああ、まったくだ」子猫ちゃんは危機感が無いのだ、色々と。
「こんな【 到達者 】が居るのか、って最初は驚いて今は心配していますよ」
「キティーちゃんは生まれた時から【 到達者 】って感覚なんですよね、難しいですよね」
ああ、難しい話しなんだこれが。
「あの子にとって死んで蘇るのは当たり前な事となってしまっている以上は危機感を持てと言っても意味が無いからな」
【 到達者 】と言うよりも【 逸脱者 】の方が近しい。
「死の概念も記憶も曖昧な女の子なんで危なっかしいですよね」
「それに【 到達者 】ですし」
「だから、余計に放ってはおけない」
二次元への到達者
子猫ちゃんの様に特殊な力を持った者達をこの街ではそう呼んでいる。
「もういいっすよー」パジャマに着替えた子猫ちゃんが扉を開けて手招きをしている、招き猫だな。
「もうすぐ俺達は帰るからその後に着替えてくれればよかったのによ」原口の言う通りだが、子猫ちゃんは話しを切り上げたかったから物理的行動で切りにきた訳だ。
原口もそんな事は分かっている、分かっていて聞いているのだ大人気無い。
ムッ、と頬を膨らませて黙っている。
子猫ちゃんにこんな顔で黙られるとオジサンは堪える。
「す、すまん悪かった」
「許しましょう」若さって凄い。
娘とはこんなやり取りもできなかったから新鮮だ。
だったけど、最近では見慣れてしまった。
老いがこうも怖いとは思いもしなかった。
いつの間にか、だ。
この子猫ちゃんがこんなにも俺達に懐いてくれるようになったのもいつの間にかだった。
おじさんにとってのいつの間にかなので若い子には当てにならないかもしれないがな。
子猫ちゃんがこの事務所に現れてから半年余り、最初のうちは何もかもにも怯えて家から出ようとも家に居座ろうともしなかった。
最初は本当に驚いた、いきなり < ポーーーン > と目の前に学生制服を着た少女が現れた事に驚いた。
一目でこの少女は到達者なんだと理解し警戒した。
この街では『右手に弁護士左手に探偵』と言うくらいに探偵は生活に根付き重要な情報を握ている。
だから警戒した、転移系能力の到達者が襲いに来たのではないのかと。
そして防犯装置が作動した。
この事務所は他の所に比べて防犯が緩い、その理由はこの事が有ったからだ。
怖かったのだ。
当然現れた人型の熱源を探知した防衛システムが発砲した。
到達者に襲われた場合、発砲しても正当防衛にあたるので防衛システムは発砲した。
突然現れた少女は死んだ。
精神的に胃酸のこみ上げてくる臭いと血が部屋いっぱいに広がり溜まり、そして消えた。
< ポーーーン >
目を疑った、目の前で死んだ少女が再び現れた事に。
目を覆った、少女が再び死んだ事に。
< ポーーーン >
三度聞こえたその音に俺は目を開け防犯防衛全ての機能を一度切った。
理解できなかったが無理に呑み込んだ。
到達者だと認識できていたから現実を呑み込めた。
RESPAWN
二次元的表現を具現化した能力、まさに二次元への到達者。
次元的には上のはずの三次元で生きてきた者達の常識を逸脱した能力を見せつけられて俺達は唖然としていた。
それは何故か少女も同じだった。
意味が分からないと言いたげな瞳で見つめられて思わず駆け寄り言葉を掛けた『大丈夫か!?君は誰だ!?』と。
瞳を見て敵ではないと悟ったから。
怯えていた。
少し怖かった。
いや、怖かった。
だが、それを表に出せば少女を余計に脅えさせることになる。
俺は言葉をかけ続けた。
言葉は通じ自我も確りと有った。
が、しかし自分の名前も年齢も此処がこの街が何処なのかも分かってはいなかった。
そして、自分が三度は死んだ事も。
『分からない』身体の震えが声を震わせていた、少女の震えが死への恐怖ではないと知って妙な汗が流れたのを鮮明に憶えている。
空白への怯えと恐怖しかおぼえていない少女を警察へは連れていけない、娘の事が頭をよぎりこの少女を危険な場所へと送る事が出来なかったのだ。
何も知らない到達者の少女ほど危うい存在は無い。
俺は娘を、原西は妹を、柿江さんは姪っ子を、それぞれが身近な少女の姿を重ね、二度も殺してしまった罪悪感にかられ、この少女を護る事を決めた。
この、猫寝 琥猫を
これは、18年も前に行方不明になった女子高生の名前であり、突然目の前にリスポーンして来た少女の名前であり、この子猫ちゃんの名前。
そして、俺達が子猫ちゃんを護る為に集める事ができた数少ない情報の一つだ。
探偵事務所をやっている俺達でさえ子猫ちゃんの足跡を辿る事が出来なかった、探偵としての自信を失う程に少ない情報しか得られなかった。
得られたこの情報も彼女の着ていた学生服とリスポーン地点となっていたこの古民家の前の住人表が有ったからだ。
他に得られた情報もリスポーン地点の更新方法とリスポーンをする事で発生するリスクの詳細程度、どれも子猫ちゃんの協力により得られた情報で俺達の力によるものではない。
若さに劣る探偵として培ってきた経験だが、それでも役に立てばと手を貸す事を決めたのだ。
まあ、今は自立の為に頼まれなければ直接手を貸さないようにはしているけどな。
してはいるけど、皆自分なりに色々と裏で手を廻している様だ。
俺は別にそんな事はしていない。
この家に居る事を許可しているのも夜間警備としてだし、妻と共に近くに引っ越してきたのも通勤代を浮かせる為。
晩御飯をたまに持ってくるのも作り過ぎたからだ、多分今日も… ん、明日か、明日もまた作り過ぎる。
「じゃあまた明日な」
「気を付けろよ」
「何かあったら警報を鳴らして私達に電話をするのよ」
今の警備は俺の旧友が社長を務めている会社に任せている。
奴には全てではないが事情を話している、武力こそ劣るがこの街の警察よりも断然信頼はできる。
「りょーかいでーす!」
いつもと変わらぬ別れを済ませて俺達は家路につく、そして次の日の朝。
俺達はいつものように子猫ちゃんを起こそうとソファーを背から覗き込んだ。
18年間姿を消していた少女が再び姿を消してしまった。
*
3ヶ月前…
此処は発展の光と影が点在する街【 秋ノ照 】。
まあ、私には名前とかそういうのは関係ないけどね。
「キティーの方が響きが良いよね」
愛称を付けてくれたオジサン達が私の名前を調べてくれたのだが、オジサン達の付けてくれた愛称で慣れてしまったので何ともむず痒い。
「明日、呼び名をキティーに戻してもらうようお願いしよう」一ヶ月くらい虎猫って呼ばれてどうもむず痒い。
むず痒い
最近おぼえた、むず痒い。
「取り敢えずクシャミしとこう」
今からする事は単純だ、こよりでクシャミを出すより単純だ。
「私を18年間も眠らせていたのは誰なの?」
ただ、質問をするだけだ。
「し!知らねぇ!!!本当だ!殺さないでくれ!!!」
「知らないのかぁ、残念だよですねぇ」本当に残念だよねー。
< ドコッ >
< ボコッ >
< ドスッ >
「筋力が無いよな私」鍛えようと思う。
紐のおかげで動かないから当てるのはラクだ、数をこなせばいい。
< ズサッ >
< グチャ >
< ベキッ >
「あ!折れちゃった!」何度も攻撃を防いだり杖代わりにしたせいで痛んでいたっぽい。
まあ、安いのが一番の要因だろうけどね。
「あ、ナイフ落ちてる」丁度いい。
< グサッ >
< ポーーーン >
「うっ… ば けもの… 」
「ひどいなー、死なないように木刀で殴っているのに」出血を止める技術は無いので、気絶するまでこうして殴っているのだ。
後を付けられたら面倒だから。
というか、むず痒い。
石投か何かをげつけて気絶させてから紐で縛ってたらその時にこのオッサンに蹴られたお腹の右側がむず痒い。
<ズイッ>とシャツをめくってお腹を見てみた、オッサンの前で肌を出したなんてオジサン達に知られたら怒られるだろうな。
私の頭の中の登場人物がオッサンオジサンばっかりなのに少し落ち込む。
そしてお腹を見て落ち込む。
「あ~ああ… 」
乙女の軟お肌が赤くなっている…
…まあ、べつにいっかこのくらいなら痕には残らないだろう。
たぶんね……… 。
「ああああああ!お!お前まさか!!!」
「うぉおッ!?急に叫んで何ッ!?」ビックリした。
ビックリした勢い余ってシャツを下ろしたので爪がお腹に当たって少し痛い。
「お前!!!猫か!!!お前があの猫か!!!」耳も痛くなる、オッサンの声大きすぎ。
「で、ん?え?それが何???」キティーの方が響きが良くて好きなのを口に出したばかりなのにねー、何回も叩きすぎておかしくなったのかもしれない。
このオッサンの為にも一発で終わらせてあげないといけないや。
確かオジサンによると、体重を掛けるといいって感じの話しだったけど… どうやって体重を掛けるんだろう?
「お… お前が… 百回し… しん… 」
こうかな?
< バヒュン >
「おおぉッ!」
上手くいった、そしてようやく気絶させれた。
これで帰り道も安心できる。
ポケットから取り出したスマホの画面には15:36と出ている。
ちょっと帰るのには早いけど、外で暇をするより家で暇をする方が良いから帰ろう。
それに疲れちゃったし。
「3時過ぎだしな~、ん~、小腹がすいちゃったからみんなの分も含めてケバブ買って帰ろう」
2ブロック離れた所の坂の下辺りに美味しいケバブ屋さんが在ったはずだ。
帰り道なので丁度いいね。
「チリソースとマスタード~♪ オニオン多めでシャキシャキジューシ~♪ マヨネーズはもちろん多めでよっろしっくね~♪」
みんなのにもマヨネーズを…
「あ、オジサンってマヨネーズ食べたっけ?」
素材の味をどうのこうの言っていた気がするようなしないような……
「あ!マヨネーズをお持ち帰り用で詰めてもらおう!オジサンが要らないって言ったら私がもらえばいいし最高じゃん!」
ウヘヘェ~、マヨネーズ特盛だぁ~♪
ん
「私って今日何回リスポーンしたっけ???」
嫌な予感がする。
「いや、でも、スマホは有ったし」
おそるおそるお財布ちゃんの中身を見る。
私は、電子マネーに変える事を涙を流し心に決めた。
「いや、スマホが無くなったら意味ないじゃん」
乙女の軟お肌に、この体に機械を埋め込むのは論外だ。
「やっぱりお財布ちゃんしかいないか」
買い物する時だけ持ち出す事にしよう。
「そうしよう」
この日は、ケバブマヨネーズ特盛作戦を諦め家に帰った。
「マヨマヨ…… 」
お読みいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いいたします。




