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世界の終わり、茜色の空  作者: 美汐
第二章 遡る世界
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遡る世界2

 タイムリープという言葉を思い出していた。時間を遡り、同じ時間を繰り返す。映画や小説のなかで よくある出来事。

 だけど、実際に自分の身に起きることがあるなんて、誰が想像するだろう。

 私はいろんな事象がすべて同じ時の流れにあることを理解し、混乱した。

 確かに今日は、10月22日。

 そしてどうやら私はその10月22日を以前も経験していることは間違いないようだ。


「じゃあ、あれは本当に夢じゃなかったってこと……?」


 だとすれば、あと二日後には、また世界の崩壊が訪れるということになる。


「そんなのって……」


 私は自分の部屋のベッドで突っ伏し、わけのわからないこの状況に戸惑っていた。

 しばらく放心したように寝転がっていたが、ふとあることを思い付いて私はパチッと目を見開いた。


「あのとき私は一人じゃなかった」


 朔と京は、あの出来事を覚えているんだろうか。そう思ったら居ても立ってもいられなくなり、すぐに二人に電話をかけた。

 先にかけた朔には繋がらなかったが、京のほうはコール三回目で繋がった。


「もしもし? 京?」


「茜?」


「あのね。今暇? すぐに会って話したいことがあるんだけど」


 私がそう言うと、一瞬京が息を飲んだような気配が電話越しに伝わってきた。


「……京?」


「ああ、悪い。……じゃあ今から近くの朝陽(あさひ公園に向かうよ。そこで落ち合うことにしよう。それでいいか?」


「うん。わかった。じゃあ私もこれからすぐ向かうね」


 通話を切ると、すぐに家を出た。そして自分の自転車を出し、サドルにまたがる。


「ふう~」


 一息深く吐き、空を見た。青く澄んだ空に、一筋の飛行機雲。前もこの日の空はこんなふうだった。

 私は不安や焦燥感とひとかけらの希望を胸に、朝陽公園へと自転車を漕ぎだした。






 朝陽公園にたどり着くと、すでにそこには背の高い男の子が木陰のベンチ前で腕を組んで立っていた。


「早かったね」


 私が声をかけると、京は眉間に皺を寄せた表情のまま口を開いた。


「話って?」


 京の催促する言葉に、早く説明をしなければと焦るが、やはりあまりにも突拍子もない内容なだけに、しばし躊躇する。


「そう、話っていうのはね。えっと……」


 口ごもる私の頭上に、低くて落ち着いた声が降ってきた。


「変な夢を見た、とか?」


 はっとして上を振り仰ぐと、真剣な色をした二つの瞳がこちらを見ていた。


「なんでそれ……」


 私が疑問を口にする前に、京が言う。


「僕も茜や朔に確認したいことがあるんだ。自分でもこんなこと、信じられないんだけど……」


 ――まさか。

 私は目を見開き、まじまじと京の顔を見る。

 もしかして、京も私と同じことを言おうとしている? タイムリープのこと、そしてあの世界の崩壊。


「京、私……」


 そのとき、突如私のスマホから着信音が流れ出した。履いてきた短パンのポケットからそれを取りだし、着信相手を確認する。


「朔からだ……!」


 私は目顔で京に合図すると、彼はすぐにうなずいた。着信音の鳴り続けるスマホの通話ボタンを押し、耳に当てると、勢いよくがなるような声が聞こえてきた。


「茜か? 確認したいことがあるんだけど、今からそっち行っていいか!?」


「朔、声が大きい……!」


 思わずスマホを耳から少し離して会話をする。


「ああ、わりぃ。とりあえず、ちょっと会って話したいことがあるんだ。そういえば、茜もさっき俺のスマホに電話かけたよな?」


「うん。それなんだけど、私も朔に訊きたいことがあるんだ。ちょうど今京とうちの近くの朝陽公園ってとこに来てるんだけど、朔来れる?」


「なに? 京もそこにいんのか。ならちょうどいいや。すぐにそっちに向かう。朝陽公園だな」


「うん。じゃあ待ってるね」


 とりあえず、京と一緒に朔が来るのを待つことにした。

 しばらく待っていると、朔が公園の入り口から姿を現した。くせっ毛がさらに寝癖ではね上がっているのが遠くからもわかる。


「よお。待たせたな」


「寝癖がまたすごいな」


「ボサボサだし」


「うるせー」


 お決まりの挨拶を交わしたところで、私たちは笑顔を奥に引っ込めて互いに真面目な表情を見つめていた。


「あの」


 口を開くと同時に、三人とも同じ言葉を発していた。


「あ、いいよ。二人からどうぞ」


 私が言うと、朔と京もなぜか遠慮して相手に促そうとする。埒があかないので、私は自分で場を引き取った。


「じゃあ私から言うね」


 急に緊張が体に走った。

 こんなことを言って笑われたりしないだろうか。いや、笑われるならまだいい。

 それよりも心配なのは、私の身に起こっている事態を少しでも信じてくれるだろうかということだ。

 自分でも信じられない。だけど、やはりこれは本当に起きていることなのだ。

 そして、私には二人に確かめたいことがあった。



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