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世界の終わり、茜色の空  作者: 美汐
第九章 終わりの終わり
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終わりの終わり2

 世界は消えた。けれど、新たな世界は生まれている。

 このだだっぴろい白い空間は、ほぼなにもないけれど、地面は確かにあるようで、世界の断片というか、名残のようなものを感じた。

 ここは、以前の世界と、新しく生まれようとしている世界の、狭間のようなところなのかもしれない。

 その証拠に、ところどころ世界の欠片のようなものが行く先々に散らばっていた。


 水たまりに映った虹。

 犬の足跡。

 丸められた紙くず。

 誰かの書いた落書き。


 ぽつり、ぽつりと。

 世界を構成する小さな欠片が星のようにきらめいて。

 とてもいとおしいと感じた。


 すべて失われてしまったと思っていた世界。なにもかもが無に帰したと思っていた世界の欠片が、ここには残されていた。

 世界に残されていた大切な記憶。私はそんな欠片たちを胸に抱き締めるようにして集めていった。

 世界の欠片を集めていった先に、きっと彼らはいる。

 なにか目に見えない力に導かれるように、私は先に進んでいった。






 やがて、私は酷く懐かしいような、なにかに呼ばれているような気持ちがして、そちらへと進んでいった。すると、キィキィと金属の軋むような音が聞こえてきた。

 振り向くと、ブランコが二つ並んで揺れていた。ついさっきまで誰かが懸命に漕いでいたように、ゆらゆらと前後している。

 今度は後ろから子供の笑い声が聞こえてきた。

 胸に淡いせつなさが滲んで、いとおしい記憶に涙が零れた。

 幽霊でも涙は出るのだ。そんな馬鹿馬鹿しいことを漠然と思いながら。






 次に見つけたのは、つい最近の記憶。

 バスの車内。いつもの見慣れた朝の風景。

 私の横で立っているのは、背の高い眼鏡の男の子。

 二人で軽口を叩きながら、バスの揺れに身を任せている。






 次に見つけたのは学校の教室内の風景。

 騒がしい教室内には、見覚えのあるクラスメートたちの姿。

 私の左斜め後ろの席には、さっきも一緒だった眼鏡の男の子。

 けれど、なぜかその前の席の人物の姿が、そこだけぼんやりとしていて見えない。

 あれ? 誰だっけ?

 ここに誰かいたんだっけ?






 次に見つけたのは、学校の帰り道。

 茜色に染まる景色のなか、私は誰かと歩いている。

 一人はまた背の高いあの男の子。

 そしてもう一人……。

 違う。最初から二人だった。

 もう一人なんてそこには存在しないはず……。

 なのに。






 どうしてこんなに胸が切なく締め付けられるんだろう。

 どうしてこんなに涙が溢れるんだろう。

 ねえ、誰か教えて。


 ――――教えてよ。





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