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オタクで二次元が大好きだけど何か文句ある?  作者: 閻魔天(ヤマ)
第2章
9/24

本は紙に限る! は? 電子書籍で違法無料ダウンロード何それ、ふざけてんの?

幾らかパロディが出てきます。濁してますので多分大丈夫。多分……。大丈夫だよね?

 千里山学園の屋上は解放され自由に使用できるようになってる。

 屋上は飛び降り防止のためかフェンスが高々と立てられている。

 そのフェンスの前に設置されて椅子に俺と雪姫は腰を降ろした。

 周りにあまり人はいない。

 カバンから弁当を出す。

 風呂敷を開くと黒い弁当箱が顔を出す。弁当箱の蓋を開け中身を確認。主食にごはん、おかずにハンバーグにウィンナー、レタスが入っていた。このレタス何で食えと……。マヨネーズもドレッシングもかかってないし。しかもハンバーグも明らかにレトルトだった。うわぁ、ありがたみにかける。

 すぐ隣に座る雪姫の方を覗き込む。

 なんか惣菜を5個ぐらい買っていた。

「どんだけ食うんだよ……」

 パン一つじゃ俺もさすがに足りないため、惣菜にするときは基本3個ぐらい買ってるが5個は買いすぎだろ……。

「ああ、残り二つは後で食べる用。授業のあいまの休み時間とか、放課後とか」

「なるほど」

 一瞬某少女漫画ヒロインなっちゃったかと思ったよ。いや某エロゲにもいたな。女装ゲーのやつ。まあ、あれはもっと暴食だけど。七つの大罪級の。


 灼けつくような日差しが屋上を照り付ける。

 温暖化の影響か真夏のように暑い。

 まだ季節は五月で梅雨にも入っていない。

「今日暑くね」

 食べ終わった弁当箱をしまい俺が呟く。

「うん」

 そっけなく雪姫が言うがその彼女の額には汗が浮かんでいた。

 ガチャと音が鳴り、ドアノブが回され誰かが屋上へ入ってきた。

 見覚えのある顔だった。

「……うん?」

 その人物神崎輪花がこちらに気付いて、俺達のいる場所へ近づいてきた。

「先輩たちもお昼?」

「うん。でももう終わっちたぞ」

「そう……であるか……」

 輪花がしょぼーんとあからさまに残念そうな顔をした。

「まあ、俺たちはもう食い終わっちゃったけど、別にまだ時間はあるし一緒に駄弁ろうよ」

「あ、はい」

 残念顔から一転、嬉しそうに輪花が言った。


「神崎はどんなの好きなんだ?」

「どんなのとは? あと我は神崎ではなく魔王サタンである」

 輪花に好きなジャンルを聞いたのだが質問がちょっと抽象的だったためか聞き返された。あと普通に彼女の中二設定はスルー。

「オタクだったら色々好きなジャンルがあるだろ。特に自分はこういうのに関しては目がないってのが」

「ああ、そういうことであるか。我は毎日 魔導書グリモワールの熟読に励んでおる」

 中二くさった言い方で輪花が言った。てか魔王が魔導書読むの? それ魔術師ウィザードの仕事じゃね?

「読書か?」

「うむ」

 あっていたらしい。

「ラノベとかか」

「うむ」

「おお、どんなの読むんだ」

 雪姫に続いて同じ趣味の友達に会えるなんて嬉しいことだ。まあ、二次元研究部なのだから何かしら趣味はあっていたんだろうが、ライトノベルは俺が最も好きなものだ。ラノベに関しては結構詳しいと自負してる。

「我は古今東西のあらゆる魔術を習得せしものなり」

「どんなのでも読むってか?」

「うむ」

「エロいのも?」

「それは無理!?」

 輪花が慌てて答えた。

「わたしはファンタジーとか日常ものとかが好きなの。基本何でも読めるけどエッチなのはちょっと……」

「ホラーは?」

「それも無理」

「ホラーが苦手で中二病で苗字が神崎とか、何それマジうけるわ」

 いやほんとどう考えてもあのキャラ連想させるんですけど。大丈夫なの。

「いやウケないし!」

 すかさず輪花がつっこんだ。

 そして、唐突に今まで黙っていた雪姫が口を開く。

「でも私もデレ◯ス好きだよ」

「言っちゃたよ、正式な略称。運営に目つけられたらどうすんのよ」

「は? なんの話?」

 うん。なんの話かな? 正直言ってみただけです。

「それよりファンに殺されそうだね」

 未だ中二病口調を忘れたままの輪花が言う。

「ラブライ◯ーとして対抗する」

「いや同盟組もうよ!」

「アイドル戦争はそんな甘くない!」

「いやそもそもなんで戦争になってんの!」

「まあ、冗談だけどね」

 ていうか同盟ってのは割と賛成だったりする。コラボしてくれんかの。どっちも好きなんよ。勿論後者の方が好きだし、親しみもあるが。

「ていうかいつの間にかに話題がアイドルアニメの話にそれているな」

「そらしたの先輩じゃん」

 俺が気付いて言うと輪花がそれに続いて答えた。

「まあ、ジャンルはさっき言った通り様々であるな。普通の一般小説とかも読むし。というか本を読むことが好きなんだよね! 紙の文庫本で紙の匂いを感じながら紙のさわり心地を確かめながら本を読む! 電子書籍やノベルゲームじゃ体験できないものだと思う!」

 そう語る彼女は途中から中二口調を完全に忘れていた。それほどまでに熱く語っていた。

「ああ、俺もわかるな。そういうの。やっぱり紙で読むことに意味があるよな」

「だよね!」

 俺が同調すると彼女が目をキラキラ輝かせて言う。

 でも紙で買って紙の本で読むていうの実際本当にいいと思う。電子化が進んだ近年ではPCやVitaでダウンロードして読んじゃう人が多い。田舎や海外に住んでいてアニメショップが近くに無く、且つ一般の本屋すら無いなんて人は別だが、都会に住んでいてチャリや電車で直ぐに本を買いに行ける距離にあんのに電子書籍で済ませてしまう。そういうのは本当に納得いかない。

 なんて考えていると、

「私は電子書籍でいいかなー」

 なんて言ってきた。

「は?」「何言ってんですか、先輩?」

 俺と輪花が2人そろってはもる。いやマジ理解できないんですけど、電子書籍でいいとか。

「え? 勿論紙の本も買うけど、毎回毎回お金かけて本買ってたら懐が持たないし、電子で読むの普通じゃない? 言いづらいけど、ちょっと違法まがいのことして書籍無料でダウンロードしたことだってあるしね」

 全然自慢になってないし。寧ろ全ビブリオマニアへの冒涜の極みだ。

 すげえ、ムカついた。マジギレです。

『雪姫(先輩)馬鹿なの(なんですか)』

 輪花も同じ思いだったのだろう。俺と輪花は一緒に雪姫を鋭く睨みつける。

「えっと、さすがに違法まがいのことしてたのは悪いと思うけど、別に電子書籍読んでもいいと思うんだよね。無料のやつでも違法じゃないのってあるし」

 雪姫が困ったように軽く頬を掻いて苦笑する。

「ありえないわ」

「我が宝具の尊さを電子媒体で済ませようなどと愚者極まりない」

「えー」

 相変わらず雪姫が少し困ったような表情を浮かべて言った。

「でも美里君も私にエロゲのデータ頂戴ってよく言ってくるじゃん」

「ちゃんと代償は払ってる」

 確かに俺もよく雪姫にエロゲのデータ頂戴って言ってるが、その代わり俺のお気に入りの本を貸してる。

 そう言えば雪姫だって俺の「お気に入りのもの貸すの躊躇ってしまう」という気持ちに共感を示してくれていたはずなのだが。

「井上も人に自分のお気に入りの作品を貸すの躊躇しちゃうって言ってたじゃん」

「私のはゲームが主だし、読めればいいかなって思っちゃうんだよね」

 右肩にかかった前髪をくりくりいじりながら雪姫が言う。

「やはり雪姫と俺では価値観に相違があるようだ」

「そりゃ、人間皆一緒のこと考えてたら怖いでしょ。それって個性がないって意味だし」

「マジで人間って特殊な生き物だと思う」

「神が自らに似せて造りし者なのである」

 さすが専門分野ちゅうにびょう、俺と雪姫がそんな話をしていると唐突に輪花が割り込んできた。

「ちなみに魔王さまも天使だった頃は人間製作手伝ってたんだろ?」

「我は優秀過ぎたのだ。だから神に追放されてしまった」

 輪花が右手を左眼に寄せてかっこつけて言う。ノリノリですねサタンさん。

「あなたたち何言ってるの?」

 雪姫がジト目でちょっと引いていた。

「ごほん……話がそれた。だけど違法で無料ダウンロードはよくねえよマジで」

 まあ、確かに俺も雪姫にエロゲのデータもらっているからあまり強くは言えない。でもゲームの貸し借りは違法じゃないと思うし。違法じゃないよね? なんかちょっと心配だわ。ちなみにオススメのエロゲ貸してあげようかって最初に言って来たのは雪姫だったりする。本媒体では適当な態度をとってる雪姫だが、雪姫の専門はゲームらしい。ならば彼女自身も大事なものを一時的にでも手放すのは辛いはずだ。前に同人誌借りた時にした会話が思い起こされた。

 しかし、本は俺にとってはその他二次元文化のどれよりも大切なものなんだ。だからせめてこういう適当な態度は取らないでほしい。

「電子版で読むなとは言わないから違法なのはやめろよな」

「うん、わかった」

「でも正直都会に住んでる人間が電子書籍読む必要はないと思うけどね」

 そこはまげられないのでもう一度言っておく。

「でもテンプレの多いライトノベルに一々お金はたいてたら、もたないよ」

『ウザ』

 俺と輪花の声がかぶさる。

 いやほんとこういうのマジうざいです。そういう態度が気に食わんのじゃ! まったく。

「うざいって……酷くない!」

 雪姫がちょっと涙目になって言った。

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