prologue
キーコーンカーンコーンと今日の授業終了の鐘が鳴る。
「美里くん、一緒に帰らない?」
「おう」
帰り支度をしているところに雪姫が話しかけてきた。
さっさと帰ろうと2人で教室の扉へ向かう。
「あっ美里君と井上さんちょっと後で職員室までいいですか?」
帰ろうとしているところで社会科担任の山口先生に呼び止められた。
「なんかしたの? 美里君」
「いや知らんけど……そっちこそ、なんかやらかしたか?」
「してないよ」
びくびくしながら2人で職員室まで行く。
いや別に悪いことしてるわけじゃないからびくびくする必要はないのだけども。
「2人とも部活に入ったりする気はありませんか?」
山口先生は俺達と顔を合わせるなりそう切り出した。
「は? 部活?」
開口一番に発せられたその言葉に俺も雪姫も唖然とした。
「嫌です。他を当たって下さい。帰宅部で結構です」
「右に同じく」
俺が言うと雪姫もそれにならうように同調する。
「まずは最後まで話を聞いてくださいよお~」
山口先生が泣き顔で俺の制服のすそをつまんだ。
その様子はまるで子供のようだ。
まあ、この親しみやすさがあるから彼女が学内で人気の理由だったりするのだろう。
「はいはい、なんですかー」
「なんでそんなダルそうなんですか!?」
「いいから早く言って下さい。俺は忙しいんですよ。撮りためたアニメの消化に」
「そういうセリフは卒業して社会人なってからもう一回言ってみてください」
「嫌です、俺卒業しませんから」
「「留年する気!?」」
このセリフには雪姫と先生が驚愕の声を上げる。
まあ、冗談なんだけど。
「あれです。異世界行って輪廻転生しますから。卒業する前にいなくなります」
「下らない冗談言ってると本題に進めないのでスルーします」
うん、一々付き合ってないで普通に本題に進めばいいと思うんですけど。
「美里君ってアニメ好きですよね」
「はい、そうですけど」
唐突になんだ? 部活に入る気はない?って聞かれたあとアニメ好きだよねって聞かれるとか普通に意味不明なんだが。
「わたし二次元研究部って部活の顧問なんですけど、興味ないですか?」
「わかりました入ります」
「はやっ! いえ速決しなくてもいいんですよ」
部活名を聞いた瞬間俺は速決した。
「いえ、入ります。さあ、井上君も一緒に入ろう!」
「うん、別にいいけど……」
ノリノリで俺が言うと雪姫がちょっと引き気味に言った。
心なしか顔が引きつってるように見えたんだが、多分気のせいだろう。
「ついさっき部活に入らないって言ってたよね」
「二次元が関わってくるとなれば話が変わってくるというものさ」
二次元研究部ってことは同じ二次元を愛する同志がたくさんいるというわけだ。
オタ友がもっと増えるのは嬉しいので是非もない。