epilogue
「なんでここまでしてくれるの?」
授業が引けた放課後。雪姫とともに帰ってる途中、雪姫が聞いてきた。
「……ほっとけなかったんだよな。他人事に思えなくて」
「?」
雪姫が不思議そうに首をかしげる。
「中等部のころにさ『美里君って何か好きなものないの』って女子に聞かれたことがあったんだ。何も考えずに萌え系のアニメタイトルを普通に答えてさ、キモいってひかれたことがあったんだよ。遊園地にクラスの友達何人かで行った時なんだけど翌日学校行ったら俺がオタクであることが広まっていて皆に引かれてた」
★
思い出したくもない。
クラス中でギラギラと光る差別と偏見の視線。
「青也ってオタクなんだってね。マジ受けるわ」
「つうかキモいよね」
昨日まで仲の良かった友人が自分がオタクだという話を聞いた瞬間掌を打って返して嘲る。
友人が聞いて呆れた。
人間なんて偽善者ばかりだ。
もうどうでもいいや、友達なんか。
いらない。
そう思った。
クラスメイトに進んで話しかけることなんてしなくなった。
代わりに俺は一人で自由に読書をできるし、皆がオタクだって知ってるから漫画やラノベも堂々と読める。
ぼっちというものは凄く心地いい。
でも物足りなさがある。
やっぱり趣味を共有できるひとが欲しい、そう思った。
★
「そんなことがあったんだ」
「ああ、だからああいうの見ちゃうと自分のこと思い出しちゃって、ほっとけないていうか……どうしてもお節介焼きたくなるんだよね。迷惑だったかな……」
心配になって俺は言った。
「ううん、嬉しい」
「それは良かった」
笑顔を浮かべて言う雪姫に俺は安堵する。
「今は趣味を共有出来る友人もいるし、俺的には大満足だな、うん」
「え!? あ、ありがとう」
雪姫が恥ずかしそうに頬を紅潮させて答えた。
ちなみにどうでもいいことだが照れた時の雪姫の顔は結構萌えた。