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オタクで二次元が大好きだけど何か文句ある?  作者: 閻魔天(ヤマ)
第1章
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HOUKAGO・OF・BOOKS

 放課後。

 俺はチャリで近くの本屋へ向かった。

 本は面白い。

 特にライトノベルは好きだ。

 本屋の中に入り真っ先にラノベコーナーへと行く。

 そこで見知った顔を見かけた。

 あれって……。

「井上?」

 そのラノベコーナーで本をあさっていたのはさっき昼休みに自販機で飲み物を買っていた雪姫だった。

「え!?」

 俺の声に雪姫が必要以上の反応で驚く。

「どうしたんだ? ラノベコーナーなんかで。もしかして好きなの? ラノベ」

「うん」

 雪姫が頷く。

 その表情は不安に彩られていた。

「このことあけみ達には黙っていてくれない?」

「ああ、そういえばあいつオタク嫌いだもんな。まあ、話す気は最初からないから安心して」

 雪姫には悪いが、そもそもあんな変態と話なんてしたくないです。

「ほっ」と、雪姫が安堵の息を吐いた。

 俺は雪姫が自分と趣味を同じくする人間だと知り、嬉しくなった。だからこれからも彼女と二次元を通して交遊を深めて行けたらいいなと思った。

「代わりと言っては何だが、俺もラノベとかアニメ大好きだからさ、これからも一緒に話したりできないかな?」

「いいよ。私も同じ趣味の人間に会えて嬉しい」

「良かった」

 雪姫の言葉を聞いて俺は内心安堵する。そして同時に嬉しさがもっと強くなった。


 本屋で会った日以降、俺と雪姫は昼休みや放課後に一緒に話すようになった。

 話してるうちにわかったことがある。

「井上はゲームとかやる?」

「やるよ」

「どんなの?」

「う~ん、どんなのと言われても幅が広いからね。普通の家庭用ゲーム機のやつからPCゲームまでやるよ」

「PCゲームってもしかして……」

「うん、エロゲ」

「マジか。本当にいるんだなエロゲやる女子って」

 漫画やアニメんなかだけだと思ってたわ。

「今時、アキバに行けばゴロゴロいるよ。ちなみにソレ系の漫画とか小説もたくさん持ってるよ」

「マジか。ゴロゴロいるのか。それにして本当に幅広いんだな」

「うん。Hなのも大好きだし、BL系とかも読むよ」

「腐向けはちょっと……」

「まあ、男子だしね」

「うん、一般的な女子がアダルト系苦手なのと同じ理屈だからな」

 でも女子でエロいの好きな人がいるのは対して違和感ないのに男子でBL系好きな人がいたら絶対俺ドン引きする自信があるのだがそれは俺の心が小さいからなのであろうか?

「色々幅が広いからたまに引いちゃうかもしれないけど、そしたらごめんね」

「大丈夫、問題ない。どうせなら漫画とかの貸し借りもやろうよ」

「いいね、やろ」

「じゃあ、明日持ってくるよ」

「うん、ありがと。私もオススメの持ってくるね」

「おう、サンキュ」


 翌日の昼休み、屋上で。

「持ってきたよ」

 俺は持って来た漫画を雪姫に渡した。

 ちなみに持ってきたのはHな漫画ではなく俺の一番お気に入りの作品「バラバラ五芒星ペンタグラム」だ。陰陽師ものでアニメ化もされた人気作だ。内容は5人の陰陽師の少年少女が怪異事件に巻き込まれて、皆関係がバラバラになってしまう。それを主人公が必死に元に戻そうと動く物語だ。

「あっ、バラバラ五芒星ペンタグラムだ」

「何か読んでそうと思ったんだけど、俺の一番のオススメだからこれ持ってきた」

「へえ、美里君バラペン好きなんだね。大丈夫。私アニメしか見てないから」

 バラペンと言うのはバラバラ五芒星ペンタグラムの略称だ。

 しかし、人にお気に入りの作品を貸すという行為は実は割と勇気がいる。他は違うかもしれないが、少なくても俺はそうなのだ。理由はうまく説明できないが、俺は同じ趣味を持つ人には自分の好きな作品を読んで欲しいと思ってる。

 しかし、同時にお気に入りの作品は一秒でも手放したくない、という気持ちもあるのだ。

 だけど今の俺にはそんなことは些細なことだった。

 同じ趣味の友人に出会えたことの嬉しさが勝ってしまったのだ。

 だからこうして雪姫にバラペンを貸せてる。

「人に自分の好きなもの貸すときってなんか躊躇っちゃうよね」

 雪姫が鞄の中から(恐らく俺に貸す本だろう)を取り出して言った。

 驚いた。やはり本を貸し借りする時は大抵の人が同じことを考えるのだろうか。

「まったく同じことを考えていたよ」

「ほんと? やっぱり躊躇っちゃうよね」

 しかし、雪姫ってクラスで宇田川と話してる時は全然楽しそうにしてないのに今の雪姫は凄く楽しそうだ。生き生きしてるし、笑った時の笑顔が輝いてる。

 話してみると、本来はこんなに明るいのかと気づかされた。

「でも今までオタクの友達とかいなかったから一緒に好きな作品を共有したいって気持ちが勝っちゃった」

「えっ! 美里君も! 私もそうなんだよ。本当に気が合うね、私たち」

「だな」


 この時、俺達は知る由もなかった。この本の貸し借りが原因で大事件が起きるということを。



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