今度こそプールへGO!
千里山市営プールに到着。
その後、それぞれの更衣室に行き、着替えを済ませて男子更衣室前で輪花を待つ。
ほどなくして輪花が女子更衣室から姿を現した。
「お待たせなのだ」
「おう」
一度水着ショップの試着室で見てるとはいえやはりその破壊力は半端なかった。胸の大きさはそこまで巨乳というわけではない。しかし、推定Cカップぐらいのその胸は年齢の割にはかなり成長してる。さらに俺が選んどいてなんだが黒という色がまたアダルトな感じでいい。
ごほん、いかんいかん。いつまでも鼻の下伸ばしてるわけにはいかないか。
「早速入りますか~」
「うん」
俺はプールサイドを指さして言い、輪花が頷く。
「何すんの?」
輪花が聞いた。
「何か道具持ってきた?」
「ビーチボールなら」
と輪花が掲げて見せたのは空気の入ってないビーチボール。
「それ室内で使えんのかな」
「使える気がしないね」
年下の女の子と二人、プールで遊ぶというと聞こえはいいが環境がないと遊ぶ内容がないようって感じだ。えっ、寒いって。涼しくなっていいじゃんよ。暑いんだよ、今。まだ五月ですよ。
「プールの中なら使えるかな」
「人もそんなに多くないみたいだしね」
「暑いとは言えまだ五月だからな」
時季が時季だからなのか確かにプールの中は割と空いてる。
「これなら遊べそうだな」
「そうだね」
俺が言うと輪花が頷いた。
輪花は持ってきたビーチボールの空気を膨らませているが、全然入ってない。しかも強く吸いすぎてムンクの叫びみたいな顔になっていた。
「全然入らない~」
「ちょっと貸し」
若干涙目になってる輪花からビーチボールを奪い取ると俺はそれを膨らます。どんどん空気が入っていく。やがて空気がパンパンになり一つ球体となった。
「おお、凄い」
「ありがとさん」
こんな大したことでもないことで関心されても困るがな。
「それじゃあ入りますか」
ビーチボールを輪花に渡し、俺はそのままプールへ飛び込む。
じゃぼんっ!! と水しぶきが派手に上がった。
「先輩、飛び込むと怒られるよ」
「大丈夫、大丈夫。どうせなら輪花も飛び込んじゃえよ」
「え~、大丈夫なの」
「大丈夫だって」
「わかっ……うおわああ」
今まさに飛び込もうとしていたところに誰かがぶつかってきたのか輪花がバランスを崩して思わぬ形でこちらに倒れこんできた。
「へ?」
さらに俺は落ちてきた輪花に抱き着き押されながらそのまま水中へ倒れこんだ。
じゃっぼーん!!
「そこのバッカプル、飛び込むな!」
監視員のお姉さんに怒られた。少なくても今のは事故なんだが。
あとカップルじゃねよ。
「大丈夫か、輪花」
「うん」
「っておい!」
「どうしたの?」
水中から身体を出した輪花の水着のブラがなくなっていた。
「輪花水着どうした!?」
「水着? ちゃんとつけて……無い!? なんで!?」
顔を真っ赤して慌てて輪花は身体を水中に隠す。
そして、そのまま俺の身体に抱き着いた。ぷにっと柔らかい感触が直接俺の肌に伝わってくる。これはまさか輪花の胸か! 水着越しに感じるのとは違い、先端の突起物の感触がより感じられる。
「抱き着いてたら探せねえぞ」
「水に隠してるだけだと水中にいる人に見えちゃうのだ!」
まあ確かに水に隠したからといって大して意味があるとは思えない。水中で泳いでる人はゴーグルをつけてるから水着が外れてたらそれで普通に見えちゃうというわけだ。海や川と違い砂や砂利などの自然物がないため比較的綺麗に水が見れるのだ。
「でもこのままじゃ何もできないって」
「離れないから」
「ていってもな。これじゃどうしようもないぞ」
抱き着かれたまま何もすることもできず困り果てた俺はポリポリと片手で頭を掻いた。
「ねえその水着ってコレ?」
不意に声が聞こえた。見ると小さな女の子が黒いブラを手に立っていた。
「そ、そう。ありがとう」
輪花は心底ほっとしたような表情を浮かべて女の子に礼を言う。どういたしまして、と笑顔で言って女の子はその場を去っていった。
「はあ~」
ブラをつけなおした輪花が安心して嘆息する。今の一幕がかなり応えたようだ。
まあ、俺個人としてはかなり美味しい目を見れてかなり満足なわけだが。
そして、ひと安心した輪花の腹部から「ぐう~」という擬音が聞えた。
輪花の頬が仄かに紅くなる。
「……今の聞いた」
「うん」
「う~」
俺の肯定に輪花が恥ずかし気に悶えた。
でも確かにそろそろ俺も腹が減ってきた。何時だろとプール内の時計を確認してみるともう12時だった。
「そろそろなんか食べるか」
「うん」
プール内には幾つかの飲食を販売してる屋台形式の店がある。
「何食いたい?」
俺は当たりの店を見まわしながら輪花に言った。
「奢ってくれんの?」
冗談まじりに輪花が悪戯ぽい笑顔を浮かべて聞く。
「うん」
「うんって……本当にいいの?」
あっさりと肯定した俺に輪花が遠慮がちに聞く。
「もともとそうしよう思ってたし」
可愛い後輩の前でぐらいいいカッコしたいんだいよ。
「え、でも……」
「大丈夫だよ、心配すんな」
自分で持ち出した話題なのに今更遠慮すんのか。
恐らく冗談づもりで言ったのがあっさりOKされて困惑しているんだろうな。
「えーと、ありがと」
「どういたしまして」
頬を微かに紅くした輪花がもじもじしながら言った。
「う~ん、でも本当にいいのかな」
「いいんだって」
「ホントにホントに?」
「だからうんだって。そんなサファリパークのCMみたいに繰り返さんでも大丈夫だから」
「わ、わかった」
「で何が食べたい?」
再び屋台に目を向けて俺は言った。
焼きそばやたこ焼きなどなど売ってる場所でも違うが中々昼飯に食うには十分に満足出来るメニューが売っている。
「わたしはソフトクリームかな」
「は? それどちらかというとデザートだよな」
「え、駄目?」
「や駄目じゃないけどさ」
「やった」
俺がOKを出すと輪花は笑顔を浮かべて喜んだ。
「とりあえず俺はそこのカレーうどん買って来るから自分の買いたいの買って来なよ」
俺は輪花にソフトクリーム代を渡す。お金を受け取ると輪花は、
「了解」
と答えてとことこ、と目的の店まで歩いて行った。
カレーうどんを手に輪花の元に戻ってくるとちょっと面倒なことになっていた。
輪花自体はすぐ見つかった。しかしそのまわりに見知らぬ金髪ピアス男がいたのだ。
「ねえねえ、君可愛いね。俺と一緒に遊ばない?」
金髪ピアス男が輪花に話しかける。
「あ、えーと、わたし連れがいるのでちょっとそういうのは」
「連れ? 女の子? だったらその子も一緒でいいからさ、遊ぼうぜ」
輪花は詰め寄ってくる金髪ピアス男に迷惑気な表情を浮かべる。
迂闊だった。輪花はかなり可愛い。しかも今はプールにいてみんな水着。当然だが輪花も水着だ。しかもとりわけ露出度の高いビキニタイプ。その辺の男どもがほっとくわけがないのだ。
見ると金髪ピアス男は輪花の腕を掴んで、
「なあ遊ぼうぜ。俺と楽しいことしようよ」
「っ!? い、いや!!」
金髪ピアス男が輪花肌に触れて何処かへ無理矢理連れて行こうとする。
あのクソやろう、ふざけんな。俺は金髪ピアス男に近づく。
金髪ピアス男もそれに気づいた。
「何あんた?」
金髪ピアス男が言った。
「それはこっちのセリフだ。俺の連れになんかようか?」
相手は見た感じ俺よりも年上だろう。だが軽薄なナンパ野郎に敬語を使ってやる義理はないので普通にタメ口だ。
「何、彼氏? 君の彼女可愛いねえ。俺に一回貸してよぉ。凄いタイプなんだわあ。凄え犯りたいわあ」
なんなのこいつ?
「殺すぞ」
「ああん? 何喧嘩売ってんの?」
「先に喧嘩売ってきたのてめえだろうが! 人の友人を何だと思ってやがる! このクソ変態ナンパ野郎!!」
「てめえ!!」
男が殴りかかってきた。
「あ、足がすべったー(棒読み)」
俺はプールで転んだふりをして、金髪ピアス男の水着のズボンに手をかける。金髪ピアス男水着がずり落ち、金髪ピアスの露出狂変態男にレベルアップした。そして、誰も見たくもないもんが公然で露わになる。あたりがざわつき始める。女子は顔を真っ赤にし、男子は憐れむ表情を浮かべる。
ピッピ―!! と笛が鳴らされた。
「何やってんの! そこの馬鹿ども!!」
さっきの監視員のお姉さんが激怒していた。
「覚えとれー!」
と、涙目になりながらプールサイドを走って、そして、情けなくも再びドタッと床に転び金髪ピアスの変態露出狂男は立ち去っていった。
「……」
それを微妙な表情で輪花が眺めていた。
「ねえ、先輩……」
そして引き気味にこっちを睨んでくる。
「……何も言うな」
うん、我ながら若干……いや大分暴走していた気がする。
「あれわざとでしょ、先輩」
輪花が言ってるのはさっき俺が事故に見せかけてやった(全然見せかけられてない)水着脱がし事件のことだ。
「何も言うなって……」
「はあ……」
呆れたと言わんばかりに輪花は嘆息した。
「でも、ありがとう。助けてくれたんだよね」
「うん、まあな」
笑顔で礼を言ってくる輪花に俺は一言短く答えた。
ふと誰かが近づいてくる気配がしてその方向に顔を向ける。
さっきの監視員だった。
「ヤベッ」
輪花をつれてとっさに逃げようとするが、
「待ちなさい」
後ろから首根っこを掴まれた。
「暴力反対です」
「何言ってんの!? あんたたちの方が問題でしょ! 問題起こしすぎ! 飛び込み程度ならともかくさっきのは下手すると猥褻罪よ」
「誰が? さっきの男が猥褻物チン列罪ですか?」
「追い出すぞ、コラ!!」
「す、すみません」
凄い形相だった。まるで閻魔大王だ。
そこで輪花が割り込んでフォローしてくれた。
「あ、あのさっきのはわたしがしつこくナンパされてるので先輩が助けてくれたの。だから先輩を責めないで欲しいのだ」
「そういう事だったの」
監視員のお姉さんが呆れた調子で言った。
「でもやりすぎよ」
「はい、すみません」
本当にやりすぎだと思います。まったくもって同感です。自分でやったことなんですが。
「まったく、もう問題起こさないでね」
『はい』
監視員さんの言葉に何も悪くない輪花までもが返事をする。
監視員さんはそのままそそくさと自分の仕事に戻って行った。
「なんか悪かったな。助けに入ったはずが、余計迷惑かけちゃったみたいで」
「大丈夫だって、本当に」
「でも」
「それじゃあ、何か奢ってよ」
「いいけど、ソフトクリーム持ってんじゃん。というか溶けかけてる」
「うわっ、ホントだ!? 忘れてた!」
しかもアイスが溶けて輪花の胸元に垂れていた。
「あわわわわわぁ!? ど、どうすれば!? なんかどんどん垂れてきてるしいー!!」
慌てた輪花が自分の胸を持ち上げて垂れたクリームを舐める。その光景は凄く扇情的で誘惑してるようだ。まあ、本人は慌てて何も考えられなくなってるだけだろうが。ってそんなこと言ってる場合じゃない!!
「な、何やってんの!」
「え?」
「え、じゃないよ! 自分の今の体勢見てみ!!」
言われて輪花が自分の体勢を確認する。した瞬間、顔が一瞬で真っ赤に染まった。
「~っ!?」
何が何だか分からなくなって慌てた輪花が声にならない叫びを出す。
目が漫画のようにぐるぐるしていた。
「お、落ち着け!」
輪花の両肩を掴んで言った。
「は!?」
輪花が再び冷静さを取り戻す。
「危やうく闇堕ちするところだった」
今日久々に聞いたな。輪花の中二口調。中二口調な輪花は中々しっくりくる。輪花はこうでなくてはな。後はサイドテールがあればいいんだけどね。勿論ロングに垂らした彼女も可愛いが。
「大丈夫か?」
「うん、落ち着いた」
「ならよかった。少し休むか。昼食食いたいし。クリーム拭いた方がいいしな」
「……そ、その、先輩」
「うん?」
「クリーム、拭いてくれないかななんて」
輪花が言った。その頬には気のせいかほんのり赤みがさしてるように見えた。
「は!? いや自分で拭けばいいだろ!?」
手や顔ならまだしも胸はさすがにまずいだろ。
「でも紙がないから」
「じゃあ、シャワー浴びてくればいいじゃん」
「わ、わかった」
と、答えた輪花は何故か不満気に頬を膨らませてシャワーへ向かった。