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オタクで二次元が大好きだけど何か文句ある?  作者: 閻魔天(ヤマ)
第2章
17/24

いざプールへ……の前に

 輪花は黒、赤、桜柄の三着の水着を俺に着て見せた。

 どの水着も似合っていた。

 しかし、輪花は中学生だというのに脱ぐと中々巨乳だった。隠れ巨乳だった。しかし、最初に試着室から姿を現した時は驚いた。水着に黒ニーソという姿で現れるんだもの。エロ過ぎでしょ。

「で、結局どれがいい?」

 輪花が先程着た三着の水着を俺に向けて聞く。

「う~ん、個人的にはこいつだな」

 と言って指したのは輪花が一番最初に着ていた黒のちょっと際どいビキニタイプの水着だ。際どいと言っても別にさっき巫悪戯てさしだしたTバックほどではない。あくまでちょっとだ。まあ、個人的な嗜好が出まくっているが。

「わかった。じゃあ、これ買ってくる」

「おう」

 二着の水着を元あった場所に戻し、輪花はレジへ商品を持っていった。

 あとは俺の水着だが俺の方は買うのがめんどいし家にあんのでいっか。

「先輩は水着買わないの?」

「俺は家からとってくるよ」

「え、先輩ん家にいくの?」

「嫌か」

「嫌じゃないけど、緊張するかな」

「緊張って、なんでよ」

「いや、だって……」

 何か言いよどむ輪花を俺は不思議に思ったが、とりあいず家へ行くのが嫌だとかではないようだ。

 商品を買った後、デパートを移動して俺の自宅へと向かう。

「先輩ん家ってどこにあんの?」

「すぐ着くよ」

 すぐ着くよってのは答えになってない気がするがまあ、実際にすぐ着くのだから別にいいだろう。

 俺ん家は水着ショップがあったデパートから徒歩で10分程度で着くのだ。


 ★


 特に何の変哲もない住宅街の一軒家。そこが俺ん家だ。極端に貧乏というわけでもどこぞの漫画やラノベにでてくるような大富豪のお嬢様、お坊ちゃんほど大金持ちというわけでもない。

「こ、ここが美里先輩の家」

 興味深げに輪花が辺りを見渡すが、俺にとってはいつも通りのただの自宅。何か変わったことがあるわけでもない。

 ドアノブに手をとり部屋に入る。

「……」

 そこでいつまでも部屋に入って来ない後輩に気付く。

「何してんの?」

「へ?」

「へ? じゃないよ。早く入ってきてさ」

「いいの?」

「だから、いいって。僕ちん早く水飲みたいのじゃ。こんなクソ暑い中突っ立ってたら日射病で死ぬよ、マジで」

「アハハ、わかった」

 俺はいつもとは違う巫悪戯ふざけた口調で言う。それに輪花が苦笑いを浮かべ中へと入る。


 リビングに輪花を通そうと思ったら妹がいた。

「お前なんでいんの?」

「なんでいんのとは失礼な。家族なんだし当たり前でしょ」

 妹の紅利あかりが俺のぶしつけで意味の分からない質問に頬を膨らます。

 紅利は茶髪ショートにピンクのTシャツに白と黒のチェックのスカート姿だ。なかなか可愛らしい。

「なんなの今の質問?」

「うぐ」

 このまま輪花をリビングに上げると余計な誤解を招きかねないわけだが。いや半分ぐらいはあってたりするけど。輪花にはリビングで待っていてもらおうと思ったけど自室に上げてしまうか。

「いや何でもない。悪かったな」

「……」

 と言って俺はリビングを後にする。その時の紅利の表情はあからさまに俺を怪しんでるように見えた。

 

 しかし、女子を自分の部屋に入れたことなんてないから緊張するな。

 自室の前についてから今更そんなことを思う。

「とりあいず入って」

「うん」

 先に部屋に入ってから俺は言い、輪花が答えた。

 輪花は部屋に入ると机の前のクッションに腰を下した。

「おお、さすがだ」

「うん、何が?」

「本棚。たくさん本あるよ」

「ああ、それか」

 部屋にはラノベ、一般小説、神話学や宗教学、心理学、言語学、歴史学などの学術書が棚に並べられていた。千冊近くはある。

「ここまでは流石さすがに家も無いかなあ」

 と輪花が少し悔しそうに言った。

「何冊ぐらいあるんだ?」

「わかんない」

「まあ、普通数えたりしないもんな」

 俺の千冊っていうのも大体の数字だし。

 そして輪花は本棚から視線をそらして壁に貼ってあるポスターに目を止めた。

「まさにオタク部屋って感じだね。あの絵どっかで見たことあるんだよなあ」

「あの絵師の薄い本前に石田が持って来てたな」

「ああ、あの時の……あの時は酷い目にあった」

 げんなりとした表情を浮かべながら輪花が言った。

「可愛い絵だけどラノベ媒体では活躍してないの?」

「あんまり聞かないなあ。輪花も絵師詳しいのか?」

「まあね。ラノベ好きは大体詳しいと思うよ。特にイラスト買いしてる人」

「イラ買いって大抵騙されるんだよな。文庫にもよるけどさ」

「あれやだよね。絵は凄く好みって感じだと思ったら内容はテンプレのオンパレードだよ」

「結構毒吐くよな、お前も」

「そんな褒めても何も出ないでござるよ」

 と右手を頬にあてながら微笑を浮かべて輪花が言う。なんだかその仕種が可愛いかった。

「いや褒めてないから」

 そんな輪花に俺はすかさず突っ込む。


「さて水着を探さねば」

 そう言って衣類が入っているタンスをガサガサとあさる。

 だが中々見つからない。

 数分そうしてると後方からガチャという扉を開ける音がした。

 それに気づいて後ろを向くと紅利が立っていた。

「何かあるなと思って覗きに来たけど、こういうこと……」

 輪花の方へ視線を向けて紅利が言う。

「あ、え~と」

 突然現れた妹に輪花がどう応対すればいいのか困惑する。

「どうも美里紅利みさとあかりです。青也の妹です」

「これはどうもご丁寧に神崎輪花です。中二です」

 敬語で挨拶をする紅利に輪花が律義に自己紹介する。

「中二って同学年?」

「え、そうなの?」

「うん」

「千里山?」

「うん。そっちも?」

「なるほど、だからか。ちょっと見覚えあると思ったんだよね」

 紅利はそこで言葉をいったん区切り、俺に視線を向け、

「お兄ちゃん友達とかいたんだね」

 とか言い出しやがった。

 こいつ出て言ってくんねえかな。ムカつく。つか何故来た。

「失礼だな、お前」

「で、お兄ちゃんは何してんさ?」

「あん? 水着捜してんだよ」

「水着? 誰の?」

「いや俺の」

「何すんの、まだ五月だよ」

「市営の温室プール入んだよ」

「つまりはデートか」

 紅利がちゃかす。

「違えし」

 俺はすかさず否定した。

 若干顔が熱かった気がするが、今日は暑いし熱さにやられたに違いないだろう。うん、そうに違いない。

 見ると隣りの輪花も俯き加減で顔を真っ赤にしていた。

 マジで。本当に暑さかなこれ? いや脈ありか? つか妹の建前上デートであることを否定したが、実際にこれはデートなんじゃないかとは感じてる。

「で、当の水着は見つかったの?」

「今捜してる」

「おいおい彼氏~」

「彼氏じゃねえから」

「ところでお兄ちゃんと神崎さんはどうやって知りあったの? まさかナンパ? てあるわけないかお兄ちゃんに女の子ナンパする度胸なんて」

「お前、いい加減兄に毒舌吐くのやめろよ」

「だって事実じゃん」

「事実じゃねえよ!」

「じゃあ、できんのナンパ?」

「おう、やってやろうじゃないか!」

 なんて意気込んでから気づく。

 乗せられた!? 俺が妹の口車に乗せられてしまった!?

「先輩……」

 隣りを見ると輪花が呆れて嘆息していた。

「ごほん。じょ、冗談ですよ」

「だよね」

「うん」

 これから輪花とプールへ行くというのにそっちのけで他の娘にナンパなんかできるか! つかしねえよ。

「で、どこで知り合ったの?」

「普通に部活だよ」

「へえ、お兄ちゃん部活なんて入ってたんだ」

「いやさ先生に入部してくれないかって言われてね、最初気が進まなかったんだけど聞いたら二次元研究部だというじゃないか――」

「ちょっと待ってその話長くなる?」

 俺が事の顛末を一から順に説明してやろうと思ったら紅利はそれを途中で遮りよった。

「ああ、まあ」

「じゃあ、いいや」

「おい」

 せっかく俺が説明してやろうと思ったのに!

「だって興味ないし」

「心読まれた!?」

「は? 何が」

 うん? 別に妹が読心術に目覚めたわけではなかったらしい。

「まあ、デート楽しんで来てね~」

 紅利はそいうとそそくさと俺の部屋を出ていった。

「だからデートじゃねえって……」

 建前上は。

 紅利が去った後室内に沈黙が訪れた。

 もう先ほどから何度か見た光景である気がするが輪花はまた頬を紅潮させて顔を俯かせていた。

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