休日デート
休日デート編は青也と輪花のそれぞれの視点で描いた二話構成になってます。二人のそれぞれの視点を楽しんでいただけると幸いです。
「先輩、今度の日曜空いてる?」
放課後、輪花が部室で顔を合わせるなりそう話しかけて来た。
「うん、特に予定はないよ。どした?」
「あっ、えーと……」
輪花が右手の人差し指と左手の人差し指をつつきあわせて口ごもる。心なしか顔も赤い。どうしたんだ?
「こ、今度の休日わ、我がお主と遊んでやってもよいぞ!」
輪花があせあせとテンパりながら言った。
「落ち着け。そしてなぜ上から目線なんだよ」
「えっ!? あっ、いや、その……」
まあ、今度の休日に一緒に遊ばないかと誘いたいらしい。
「まあ、予定ないし別にいいよ」
「本当!」
「うん」
俺がOKすると輪花が満面の笑みを浮かべて嬉しそうに聞いた。
「どこで何時に待ち合わせるんだ」
「ブックス千里山のラノベコーナーで10時待ち合わせでいい?」
ブックス千里山とは千里山市内にある大型書店だ。1~8階まである。そのうちのラノベコーナーは2階にある。
「OK」
★
日曜日。ブックス千里山の2階。
俺は輪花を待つついでにラノベコーナーで電撃文庫作品をあさっていた。
『ついたー。どこにいる?』
輪花からメールが届いた。
そのメールに「電撃文庫のとこ」と打ち込み返信。
数秒もしないうちに『わかったー』と返信がきた。
「ごめん待った?」
「いや今きたとこ」
輪花の言葉に俺はまるでデートのような返答をした。いや待てこれデートじゃね? いやしかし付き合ってなくても男女で二人何処かでかけるのはデートというのだろうか?
「ならよかった」
そう答える輪花は黒いワンピースを着ていた。しかし、童顔な彼女にはあまり似合っていない。でもそのギャップ感がなんだか萌えた。
「いつもの眼帯とか黒ローブとか包帯とかどうしたんだよ」
「た、たまには休息が必要なのだよ」
凄く苦し紛れな感じだった。
でも、服装は可愛いし、いつものサイドテールも降ろしていてなんだか雰囲気が違う。新鮮でいいな。
「で、どうかな」
輪花が頬を紅潮させながら言った。どうしたそんなに紅くなって。
「え、どうかなって?」
「だから服」
どうやら服の感想を求められていたらしい。
「ああ、可愛いよ」
などと若干きっざたらしい台詞を吐いてしまった。
「へ?」
輪花の頬がさらに紅くなる。夕焼けのように真っ赤かだった。
「あ、えーと、その、あ、ありがとう」
紅く頬を紅潮させたまま輪花が言った。
「え、お、おう」
何これ? 脈あり? 俺に春来た? 輪花が彼女だったら大歓迎だわ。
まあ、とりあいずそれはおいといて、これからどうするのか聞かねば。
「とりあいずどこ行く?」
「本見たあとブラブラしようよ」
「OK。なんか買うのか?」
「うん、その予定」
「何買うんだ?」
「ラノベ」
「それはわかる」
「えっ!? なんで?」
「なんとなく。それとも一般書籍だった?」
「ううん、合ってる。わたし小説はラノベ以外はあんまり買わないよ」
「ならなおさらだろう」
あとラノベ作家目指してるのなら一般小説も読んだ方がいいのではないかしら輪花さんや。
「なるほど! 先輩はシャーロック・ホームズなのだな!」
「違うから」
ついでにいうとあんまりホームズ好きじゃないんよ。江戸川乱歩みたいな怪奇ミステリーとかが好きなの。バスカヴィル家の犬は好きだけど。
「輪花はミステリー好きなのか?」
「あんまり詳しくないかな」
「お前ホラー苦手だもんな」
「なんでミステリーとホラー直結してるみたいなこと言うの!?」
「いや怪奇ミステリーが好きだから俺の中ではミステリー=怪奇ミステリーみたいなイメージなのです」
嘘ですけど。別にそんなこと思ってないよん。
「じゃあ先輩はホラー好きなの?」
「うん」
「わたしに怖い話しないでね」
びくびくしながら表情を怯えさせて輪花が言った。そんな輪花を見てるのが面白くてちょっと弄りたくなってきた。
「えー、どーしようかなぁ」
「ちょ、ほんとやめてよ」
「えっでも後ろになんか透けた人がいるよ」
「え、嘘でしょ」
「いやほんと」
俺のことばに輪花が顔を真っ青にした。
「まあ、嘘なんだど」
「だ、だよね! もう先輩酷いよ」
俺が嘘だと言うと、あからさまに輪花が安心したそぶりをみせた。
「はは、ごめん」
本を買った後俺達はブックス千里山を出た。
「でどこ行くんだ?」
「プールとか?」
「まだ五月だぞ」
そろそろ六月とはいえプールに行くにはまだちょっと早いのでは……。
「でも凄い暑いよ」
確かにめっさ暑い。温暖化のせいか五月だというのにも関わらず真夏のように暑い。
「まあ、確かに。でも入れる場所あんの?」
「もうほとんどが外のプールも開放してると思うけど」
「マジで」
「多分」
「多分って……」
まあ、確かに暑いし、個人的な話輪花の水着姿も見てみたい。
「でも、水着あんのか?」
「ないよ、だから買いに行く」
「おいおい、それ男の俺が一緒にいていいのか?」
「え、うん。いて」
頬を赤らめながら輪花が言った。
大きなデパートの2階に水着ショップはあった。女性用水着コーナーなので若干居心地が悪い。
「ねえねえ、先輩はどんな水着がいいと思う?」
「神崎の好きなの選べばいいだろ」
「……」
輪花に聞かれて答えると何故か輪花はふくれっ面で不満そうな表情を浮かべた。
「先輩の意見を求めてるんだけど」
そういわれてもなあ。まさかマイクロビキニがいいですなんていえんし。
「どんなのでもいいから選んでみてよ」
ああ、これはあれだな。間違って際どい水着を手にとっても間違ってしまったのだから仕方がないていうことにしてしまえばいいのでは。うわ俺最低。
まあ、実際にプールで着てくれなくてもどういう反応するかはちょっと見てみたいな。
「じゃあ、ちょっと探してみるよ」
「うん」
俺が言い、輪花は答えた。
俺は水着が引っかかってる場所をあさり始める。なんだかこれ変態際まりないな。
あった。黒のマイクロビキニ。大事な部分だけを隠した機能性なんて考えちゃいない滅茶苦茶際どい水着を輪花に手渡す。
「これなんかどうだ?」
「どれどれ?」
輪花が水着に視線を向ける。
「え」
それを見た瞬間輪花の顔が急速に夕焼け色になった。
「むむ無理に決まってんでしょ!」
面白いぐらいにテンパりながら輪花が拒否した。まあ、そうなるよね。
「はは、冗談だって。ちょっとふざけて見ただけだから」
「あ、そ、そうなの」
「うん」
「なんだ」
安心したような、少し残念そうな表情を浮かべた輪花が言った。
「いやなんで少し残念そうなの? 着たいの? これ」
「え? そそそそそんなことないよ」
え、その反応マジなの? マジで着たいの?
「着る?」
「着ないって」
紅い顔のまま輪花が拒否る。
仕方ないもう一度選びなおしだ。いや流石に冗談のつもりだったので最初から別の水着を選ぶことに決めていたが。
「先輩はああいうエッチな水着な方が好きなの?」
恥ずかしそうに輪花が聞いた。
「え、まあ男ですから」
「そ、うなんだ」
「うん」
「……やっぱりわたしが選ぶから先輩ちょっと待ってて」
「お、おう」
急にどうした?