雨の日の昼休み
ある日の昼休み。雨が降っていた。
窓越しでも聞こえるほどの雨音がザーザーと響く。
「美里君、学食いかない?」
「別にいいけど、ここで食べないのか?」
「あーと、まあ、うん」
俺の問いに雪姫が曖昧に答えた。
「まあ、いいけど」
学食についた後俺は200円のカレーうどんを選ぶ。
「なんで教室で食わなかったんだ?」
「なんかまだちょっと気まずくて」
再び俺は雪姫に教室を離れた理由を聞いた。
彼女は右手人差し指で頬を掻くしぐさをして困ったように言う。
きっと宇田川達のことが後を引いてるのかもしれない。
「ちょっと余計なことしたか」
罪悪感が沸いた。
「そんなことないよ。おかげで美里君や二次研の皆と仲良くなれたし」
「ならよかった」
「うん、だから心配しないで」
「ああ」
とは言え全然気にしないことは流石に無理だ。
「そういえば輪花は一緒じゃなくていいの?」
「なんで?」
「なんでって付き合ってんじゃないの?」
「は? 付き合ってないよ、どうしてそう思った?」
「仲いいから」
「なんかこの前も似たようなこと言われた気がするけど、違うから」
「ふ~ん、そう」
俺がそう答える。
気のせいか彼女の表情がかすかに嬉しそうに緩んでたような気がした。
「……私にもまだチャンスあるかも」
雪姫がなんか小さな声で言った。蚊の鳴くように小さなその声を俺は聴きとることができなかった。
「なんかいった?」
「ううん、何でもない」
慌てて雪姫が言う。
「そうか」と俺は短く言った。
窓の外に激しい雨が降りそそぐ。
その窓を眺めながら俺はズルズルとカレーうどんをすすった。
初めて食べる学食のカレーうどんは中々の美味だった。