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オタクで二次元が大好きだけど何か文句ある?  作者: 閻魔天(ヤマ)
第2章
12/24

クレーンゲーム

 完全下校時刻になった。

「この後みんな予定とかある?」

 雪姫が言った。

「ないけど」

「私もないです」

「我もないである」

 俺が答えると夕衣、輪花が続けて言った。

「じゃあ、ゲーセン行こうよ」

「いいね」

「うむ」

「俺も特に異論はないな」

 雪姫が出した提案に全員賛成した。


 ゲームは好きだ。だからと言ってゲーセンそのものの場所が好きかというと実はそうでもない。五月蠅いしヤニ臭いのは嫌いだ。ガラの悪い人間もいるし。でも自ら進んでゲーセンに入りたがるのはやはりゲームが好きだからであろう。

 ヤニの匂いが充満した息苦しさがある中で俺たちは格ゲーのアーケードをプレイしていた。

 タイトルは「ヒストリー・バトル・キャラクターズ」。歴史上の人物たちを操作して1対1で戦う格ゲーだ。ちなみにほとんどのキャラが女体化してる。それでも歴史上の人物の特徴を抑えられている。恋姫の関羽みたいなもんだな。髭の代わりにおっぱいがでかい的な。ちなみに中途半端に男が混じっていて織田信◯の野望みたいになってる。

 画面では狐耳と尻尾の生えた狩衣を着た美少女キャラと火縄銃を持った眼帯サムライ少女が戦っていた。

 狩衣少女が安倍晴明で火縄銃少女は伊達政宗だ。時代を超えたドリームバトルが繰り広げられている。ちなみに安倍晴明が俺の操るキャラだ。

 コマンドを入力して技を出す。

 オンなんとかソワカとよく聞く呪文を唱えて攻撃を放つ。

 しかし、相手の伊達政宗は銃でガードして防いだ。

 実際の戦闘だったら普通に重傷負っている。

 しかし、これはゲームだ。

 だがしかし! これはゲームであっても遊びではないのだ。

 再びコマンドを入力。今度は必殺技コマンドだ。

 ボタンを押して必殺技を出す。

 さっきと違う呪文を我が嫁安倍晴明ちゃんが叫ぶ。

 ズダダダダダダーーーーーーーーーっ!!

 画面の中で炎が燃え広がる。

 伊達政宗のHPが相当消費される。

 相手プレイヤーが必殺技を出して来た。ちなみに相手は輪花です。

 しかし、伊達政宗を選ぶとは中々中二病らしいキャラ選択だ。

「ククッ、喰らうがいい!」

 輪花がノリノリで言う。

「させるか!」

 そして、俺もノリノリだった。

 輪花が出してきた必殺技を防御……できませんでした。

 ぐふぉ! さすがに防ぎきれなんだ。

「そんな馬鹿な!」

 あっ、やべえ……死ぬ。HPがめっさ減ってる。

 

 最終的に結果は輪花が勝ち、あの後俺は苦戦し、なんと長く持ちこたえるもあっけなくHPをゼロにして死んだ。


「いい勝負だったのだ」

「ああ、しかし強いんだな、輪花は」

「わたしなんてまだまだだよ」

 再び中二病言葉を忘れて輪花が言った。きっとこっちの口調が素なんだろう。

「謙遜すんな。キャラじゃねえぞ」

「いやほんと謙遜じゃないって隣見てみなって」

 言う輪花の言葉に応じて俺は自分の左隣りを確認する。

 雪姫が相手プレイヤーと壮絶な戦いを繰り広げてた。

「ね」

 いつの間にかこっち側来ていた輪花が言った。

 画面ではほとんど全裸の半裸少女と半裸のおっさんが戦っていた。何アレ? ちなみに半裸の娘はソロモンだ。でも半裸のおっさんがわからん。マジなんなのあれ? あんなキャラいた?

「なあ、あの変なおっさん何?」

「ああ、あれネフィリムらしいよ。最近追加されたんだよ」

「マジか。ネフィリムって確かソロモンと同じ聖書に出てくるやつだっけ?」

「うん」

 俺の問いに輪花が頷く。気のせいか彼女の表情が一瞬だけ厳しく歪んでいたようにみえた。

 輪花はそのネフィリムって人物が嫌いなのだろうか? あまり突っ込んだ話はしないほうがよさそうだ。

「そういえば神崎はヒストリー・バトルのキャラは誰が好きなんだ?」

「もちろん伊達政宗にソロモン、アレイスター・クロウリーってところかな」

「へえ、そなのか」

 好きな人物の特徴が中々わかりやすいな。オカルト関係と中二病元祖いやむしろ本家か? の人物ばかりだしな。

「先輩は誰が好きなの?」

「俺は晴明ちゃん一択だな」

 ちなみにこのヒストリー・バトル・キャラクターズ、実はアニメ化もされている。アニメの出来はあまりよくなかったがCVはなかなか豪華だったな。

 すぐ隣ではいまだ雪姫が対戦者と壮絶なデュエルをしていた。

「対戦者って誰だ?」

 恐らく夕衣だと思うが、念のため聞いてみる。

「我の家臣第一号」

 きっと夕衣のことを言ってるんだろう。

「そんなこと言ってるとあとで石田に痛い目にあわされるぞ」

「痛い目!?」

 輪花が怯えたように驚いた。


「あの二人まだまだ長引きそうだしもう1プレイすっか?」

「うーん、我は別のものやってみたい」

「何やるんだ? 他の格ゲー?」

「音ゲーとかクレーンゲームとか」

「音ゲーはともかくクレーンゲームはちょっと」

 まあ、景品は欲しいの結構あるんだけどね。でもあれとれないんだよ。基本インチキだから。

「まあ、とりあいず行ってみよ」

 と言って輪花が俺の右手を両手でとって歩き出す。無邪気に笑う輪花は凄く可愛いかった。

 俺はその温かみのある手の感触を感じて照れくささを覚えた。

 

 俺達が今いるゲームセンターは三階建てで3階は格ゲー、2階が音ゲー、一階がクレーンゲームという感じだ。

 2階の音ゲーコーナーをそこそこ楽しんだあと一階のクレーンゲームコーナーへと向かった。

 で現在クレーンゲームをやりはじめている。

「……アームがゆるい」

 もうゲーセンのテンプレだがアームがゆるい。

 狙っているのはラブライ◯の海未ちゃん人形。一見とれそうにみえるのに全然とれない。

 人形はほんのちょびっと持ち上がっただけで全然動かない。

 もう1コイン投入。これ自滅の未来がみえるんだけど。

 

 そして、失敗。


 失敗。


 失敗。


 失敗。


 失敗。


 もう10回以上はプレイして10回以上失敗した。

 余裕で千円以上呑まれた。もったいないこと極まりない。うぐっ、俺のラノベ代が……。

「神崎チェンジだ」

「凄く投げやりな感じなのだ……」

 だらしなく俺が言うも輪花は「しょうがないなぁ」といった感じコインを投入する。


 そしてガタンゴトンと景品が落ちる音がした。


「は?」


 俺は何がおきたか理解できなかった。

 いや景品が落ちたのだ。それはわかる。しかし、どうやったのだ?

「簡単じゃん」

 そして、あろうことか彼女はこんなセリフを口にした。

「どうやってとったの?」

 驚きのあまり開いた口が塞がらない。いや何の比喩でもなく塞がらない。

「アームで人形を押しただけだよ」

「そnなbkな」

「落ち着いてよ、先輩」

 輪花に言われて俺は無理やり冷静さを取り戻す。

「なんかもうほとんど落ちかかってたんじゃないかな」

「ああ、なるほど」

 さっきの角度を考えると絶対に違うと思うがもうミステリーすぎるのでそう思うことにした。決して輪花がUMR並みのゲーマーであるわけではないはずだ。ただの偶然だ、うん。

「景品は先輩がもらっていいのだ」

「いやでもそれ神崎がとったやつだろ」

「でも先輩の方がお金出してるから先輩に所有権があると思うのだ」

 何この娘、凄くいい子。

「先輩、海未ちゃん好きなの?」

「おう」

「へえ、わたしは真姫ちゃん」

「のぞみちゃんじゃないのな」

「なんで?」

 なんでってあなたが中二病だからです。サンシャインだとヨハネが好きそうなイメージ。

「サンシャインのキャラは?」

「善子ちゃん」

 こっちは案の定だった。


「この海未ちゃん人形は結局もらっちゃっていいのか?」

「うん」

「なんか悪いな」

 そして、千円以上もつかったのに結局とれなかった自分が情けないです。

「別にいいって」

「まあ、なんだ……ありがとうな」

「うん」


 時刻は既に八時を回ってた。夕衣と雪姫が対戦を終えてから俺たちはゲーセンを出て帰宅の途についていた。

「神崎ん家は門限とかはないのか?」

「あるけど、無視してる」

「おいおい、親の言うことはちゃんと聞いといた方がいいぞ」

「うるさい」

 俺がたしなめると輪花はわずらわしげに悪態をついた。

「神崎の両親ってどんな人たちなんだ」

 我ながら変な質問だと思った。というか言ってしまってから気づいたが家庭にかかわる事情はそれぞれデリケートなものだ。あまり突っ込んだ話はしないほうがいいかもしれない。輪花に偉そうなことを言った俺自身母親としばしば衝突してる。俺も人のこと言えないんだな。

「父さんは優しいけど、母さんはクズだよ」

 さすがにクズは言いすぎなのでは、と言おうと思ったがやめた。俺は彼女の母親のこと何一つとして知らないんだ。だから余計なことは言わないほうがいいと思った。

「すまん、あまり話したくない話題だったか」

「うん」

 俺が聞くと輪花は何の遠慮もなく肯定した。

「それにしても最近美里君と輪花さんは随分と仲がいいね」

 雪姫が言った。

「そうか?」

「うん、そうみえる」

「なら多分趣味があうからだろうな」

 趣味だけじゃなくて価値観も共感できる面が強い。雪姫ともかなり共感できる面はあるが、大事にする二次元ジャンルの一番が違うからか微妙にあわない。

「趣味なら私とも合うでしょ」

「価値観が微妙にあってないんだよ」

 いや考え方がそれぞ違うの当たり前だ。人間なんだから。寧ろ同じ考え、同じ趣味ばかりの人間であればきっと気味が悪い。それはクローンみたいだ。

 などと思っていたら、

「人間なんだから当たり前でしょ」

 と先ほど俺が思考していたことをそのまま雪姫は言葉にした。

 歩いていると視界の隅に自販機が見えた。そう言えばかなり喉が渇いていた。

「自販機で飲み物買いたいんだが、いいか?」

 俺は自販機の方を指差して3人に確認をとる。

「うむ、問題ない」

「りょかーい」

「問題ないです」

 輪花、雪姫、夕衣がほぼ同時に答えた。

 自販機に160円を投入する。しかし、自販機高えなあ。ドンキやSEIYUだったら100にも満たずに買えちゃうよ。

 ところでコーラかファンタどっちにしようかの? え? 喉渇いてる時に飲むものじゃないって? あはは、知りゃあしねえよ。うん、よしコーラ決定。

 ガタンゴトンとペットボトルが落下する。

「私もなんか買おっと」

 雪姫が財布をとりだして小銭を取り出す。

 夕衣も何か買おうかと自販機前で思案気な表情を浮かべる。

 ふと自販機に変わったものがあるのが目に留まった。

 おでんとおしるこがおいてある。アキバかよ。

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