prologue
「美里君って好きなものなんかあるの?」
中学二年生の二学期の夏休み中、友人たちと遊園地に行った時のこと。プールで赤いビキニ水着を着た女子中村莉々が聞いてきた。
「好きなもの?」
「うん」
「アニメとか漫画とか」
「へえ、どんなの見るの? わたしも結構好きだよ、漫画とか」
「そうなの? 魔法少女マジカル・リリカとかバラバラ五芒星とか見る?」
「何それ知らない。もしかして美里君ってオタクなの?」
「そうだけど」
「オタクとかキモいんですけど」
莉々が表情を引きつらせて言った。
「は? 中村も今アニメ好きって言ったじゃん」
「言ったけど、わたしが好きって言ったのそういうオタクぽいやつじゃないし。ジャンプとかマガジンとか一般的なやつは読むけど」
「は? ジャンプとかマガジンは読むのにお前はオタクを否定するのかよ!? 矛盾してんだろうが!」
「別に矛盾してないわよ、これが普通の反応」
俺、美里青也は中村のオタクを否定する言葉に激昂した。
何故オタク系のアニメを見てるというだけでキモいなんて言われなければならない?
「俺、帰るわ」
ムカついたので早々に帰宅することにした。
「ちょっと、何勝手に帰ろうとしてんの」
「ああん。俺がいつ帰ろうが俺の自由だろうが」
「はあ!? 勝手過ぎでしょ!?」
「知るか」
そう言い捨てて俺は遊園地を後にした。
翌日。学校に行くと俺がオタクであることが広まっていた。