相容れぬ存在
「こいつが、おれたちをおどしたんだっ!」
昨日セイレイにちょっかいを出してきた子どもの一人が親を連れて、セイレイの前に現れた。
「やっぱり、人間なんかいれるんじゃなかった。」
「おやじ、こいつどっかやって。」
「そうだな。」
セイレイは隣にいるミュートが顔を青くさせるのを見て、表情を曇らせる。
「レイがおまえなんか、おどすものかっ!」
震える体で精一杯怒鳴るミュートにセイレイは思わず彼の服を引っ張った。
「レイ。」
「いいんだよ。」
「なにが、いいんだよ。」
「……おれは、だいじょうぶ、だから。」
出来るだけいつもの笑みを浮かべるセイレイにミュートは涙を浮かべる。
「なに、いっているんだよっ!」
「ふん、人間の癖にこっちの話が分かるなんてな、後で誰かに処分を言い渡すからな。」
偉そうに立ち去る大人のエルフとセイレイに勝ち誇った笑みを浮かべる子どものエルフにセイレイは全てを諦めたような笑みを浮かべた。
「セイレイっ!」
珍しくフルネームを言うミュートにセイレイは弾かれたように顔を上げた。
「ミュート?」
「なんで、なんで……。」
「おれはにんげんだ、いつか、このさとから、でていくひつようが、あるから。」
「レイのバカっ!」
走り去るミュートにセイレイは目を瞑って、そして、クレアの家に向かった。
「クレアおねえちゃん。」
「はーい、あら、セイちゃん、一人?」
「うん。」
「どうしたの?」
「ミュートのことおねがい。」
「えっ?」
「それだけ、じゃあね。」
笑っているはずなのにどこか泣きそうな顔をするセイレイを呼び止めようとするが、そんな時、風の妖精が言葉を運んできた。
クレアはこんな時にと顔を顰めるが、自分たちを呼びつけたエルフは正直苦手だがそんなんで無視すれば間違いなく不満を言われてるので、クレアはさっさと終わらせて、セイレイを探そうと考えるのだった。