終わりと始まり
「よっしゃーっ!」
「……よしっ!」
拳を突き上げ喜ぶ茶色い髪の少年とこっそりとでも、その喜びを押し殺す事が出来ないのか小さくガッツポーズをする銀色だが先端がやや水色がかっている少年がいた。
「やったな、ミュート。」
「ああ、さっきの攻撃はよかったよ、レイ。」
茶色の髪の少年は「レイ」と呼ばれているがそれは愛称であって、プレイヤーネームは「セイレイ」と名乗っている。
そして、セイレイはミュートの言葉に嬉しそうに破顔する。
「本当かっ!」
「僕は、嘘は言わないよ。」
「だよな。」
この二人が出会ったのはこのVRMMO二年ほど前でセイレイがストーリークエストを進める上でソロでは厳しく臨時のパーティを申請した所で彼、ミュートと出会った。
初めて会った時はセイレイも驚いた、彼の種族はエルフで中々でないレア種族であったのだ、しかも、風魔法が得意なエルフのはずなのに四つの種族の魔法をすべて扱える凄腕なのだった。
セイレイは何で彼が自分の要請に応じたのかとはじめは疑問に思ったのだが、すぐにクエストを進めていくうちにその理由に気づく彼は魔法を使う上で溜め時間を要するのでよっぽど自分より弱い相手じゃないと一人では戦うのが難しかったのだ。
一方、セイレイはソロでずっとやっていたのである程度の持ちこたえる力もあれば一人くらいなら守りながらも戦えるので彼との相性がよかったのだった。
クエスト終盤でこの臨時パーティも終わりなのかと一人セイレイが落ち込んでいたが、ミュートから自分と組んで欲しいと言ってくれたので、セイレイは即答で二つ返事をした、。それから、二人はコンビを組んでクエストを進めていたのだった。
「うーん、どうする?飯する?」
「そうだね……。」
ミュートはそう言うとシステム画面を出して時間や所持金などを確認する。
「これ以上話を進めるのには短いし、所持金もかなりあるから、それもいいかもしれないね。」
「やりっ!」
表情豊かな彼にミュートは溜息を零す。
「君はそろそろ落ち着きというものを覚えた方がいいよ。」
「そうか?」
「ああ。」
「大丈夫、大丈夫、現実とこっちとは全然違うしな。」
「どうだろうね。」
「信じてないな。」
「まあね。」
セイレイの姿を見てミュートは現実でも元気いっぱいな少年なのだろうと漠然と思っているので、本人は現実とは違うと言っている事が信じられなかった。
「ひでー。」
「はいはい、これ以上話してると時間が無くなるよ。」
「飯食いながら絶対話し合いだからなっ!」
「はいはい。」
適当に相槌を打ちながらミュートは歩き出そうとすると、不意にこのエリアの地面が消えた。
「えっ……。」
「ミュートっ!」
驚愕の表情を浮かべるミュートにセイレイは真剣な顔をして彼の腕を掴もうと手を伸ばす。
しかし、その手はとらえる事もなく、二人の意識は闇に落ちていった。