愛哀傘 四
第四章 北大阪秋雨事件後編
そうするうちに我々は川本邸に着いた。そこには見慣れた顔の警部もいた。
「レオン君来てくれたかい」私と警部は握手をし、
「お久しぶりです南警部。こちらの女性は私と同じく探偵の姫子で、こちらの男性は私の姉の友人で探偵事務所の仲間のゴールド君です」と挨拶をした。
「レオン君、話は聞いているかい?」
「えぇ。早速ですが現場を見せていただけませんか?」
「あぁ、もちろん。さぁこっちだ」
我々は警部と川本さんに案内されて敷地内のソメイヨシノまで来た。私と姫子は警察のみなさんが散々歩き回った後の中からようやく犯人と英理さんのものと思われる足跡を見つけて推理を始めた。
「姫子、やはり思った通り犯人は男だね」
「そうね、この大きさと歩幅からしてあなたと同じくらいの身長の男性と推理するのが普通ね」
「警部、ここに傘はありましたか?」
「いいや、無かったよ」
「警部はこの事件をどう捜査しているのですか?」
「我々はまず家族に話を聞いたが、使用人はここに泊まってはいないようだから、使用人の家の人と近所の人から夜中に人が動いた様子はないという証言を得て、彼女たちのアリバイは十分と見て使用人が犯人という線を消した。そして川本夫妻の線に移った。ご主人も奥さんも二人同じ部屋で寝ていて、お互い犯行時刻は寝てたと言ってるし、現場の足跡にも一致しないのでその線も薄いと考えている。そして被害者の彼氏だが、彼が姿を消しているのがどうも怪しいが、彼にはその日の夜から朝になるまでずっと居酒屋にいたというアリバイがあるため、彼が犯人とは断定できないでいる。彼の居場所はいまだにつかめていないといったところかな」
「ほう。居酒屋にいたと。なるほど、調べないといけない点が大体わかりましたよ。警部、英理さんの彼の家はここから遠いんですか?」
「あぁ。彼の家はもともとここの近所だったんだが、彼が高校生になると同時期にここから十キロほど離れた位置に引っ越したそうだ」
「では居酒屋はここからどのくらいの距離ですか?」
「表の通りに出たらすぐそこなので三百メートル程かな」
「なるほど。わかったね、姫子」
「えぇ。では警部さん、私たちは明日の朝一番で出かけますわ。調べたいことが分かり次第ここにもどりますから。川本さん、今晩泊めていただきたいのですがよろしいですか?」
「はい。わかりました」
その日の晩、我々は川本邸に泊まった。ゴールド君は我々の推理に全くついてこれていなかったようなので、この事件のあらましを説明し、これからの我々の計画を三人で話し合い、朝まで休むことにした。